ケイト・ロータス

2020年、女子格闘技イベントDEEP JEWELSでデビューし、飛び抜けたビジュアルで当初から話題を呼んでいたケイト・ロータス。その後、兵庫県出身のケイトは、本格的にMMA(総合格闘技)に挑むために上京。プロ戦績10戦4勝6敗と一進一退の状況が続いていたが、3月24日DEEP JEWELS桐生祐子戦では人生初のKO勝利を果たした。

空手、柔道、ボディビルと多彩な経歴を持つケイトだが、そんな彼女がMMAにのめり込み、強さを求める理由とは? また、格闘家としての次なる目標や、子どもの頃からの特技などを語ってもらった。

2024年3月24日の『DEEP JEWELS44』では、ONE Warriorでも活躍し、レスリングの全日本で優勝経験もある桐生祐子と対戦。左ヒザからパンチの連打で、見事にプロ初のKO勝利を果たした。(c)DEEP JEWELS 2024年3月24日の『DEEP JEWELS44』では、ONE Warriorでも活躍し、レスリングの全日本で優勝経験もある桐生祐子と対戦。左ヒザからパンチの連打で、見事にプロ初のKO勝利を果たした。(c)DEEP JEWELS

――3月24日DEEP JEWELSでは、人生初のKO勝利おめでとうございます!

ケイト ありがとうございます! あの試合はめっちゃうれしかったですねえ。勝った瞬間、アドレナリンが出まくって本当に夢みたいでした。

――KOでの勝利は想定内だったんですか?

ケイト 作戦どおりというよりは、練習どおりでしたね。ミット打ちでやってきた動きが試合でバシッとハマったので。でも、自分の打撃があんなに効くとは思いませんでした。

――ケイト選手の試合の中でも一番インパクトのある試合でした。

ケイト まあ、デビュー戦以降はいい勝ち方ができてたわけでもないし、勝ちが続いてたわけでもなかったから、ずっと苦しかったですよね。だから、KO勝ちが決まったときはうれし泣きみたいな感じになりました。

――苦労が報われた瞬間だったんですね。現在、ケイト選手はデビューして丸5年、そもそも空手と柔道の経験があると言いながらも、バックボーンと言えるほどの経験はなかったそうですね。

ケイト そうなんですよ。空手も柔道も大好きな兄の影響で始めたんですけど、空手は5歳から小6までで、組み手じゃなく型のほうやったんで。柔道も中学の部活で入ったんですけど、ケガで8ヵ月ぐらい休んでるんで、いま何かMMAに活かせてるかと言われたら......粘り強さだけかもしれないですね。

――そこからMMAファイターに至るまでの話もうかがいたいんですが、その後、高校では柔道は続けなかったんですか?

ケイト 私の高校は女子校やったし柔道部もなくて。なので、高校はスポーツクラブの会員として筋トレしてたぐらいです。それも母に言われて「あんた暇やろ? 筋トレしたら?」みたいな。それが、仕事にもつながっていった感じですね。

――高校卒業後は、上京してパーソナルトレーナーとして働いていたんですよね。

ケイト そうです。そこからボディビルの大会に出たりもするんですけど、それは当時のジムの先輩から「やってみたら?」と誘われて。

――大会ではいい成績だったんですか?

ケイト 全然ですよ。結局、1回しか出てないし、参加者十数名の中の8位とかやったんで。今でこそボディビルの競技人口は増えてますけど、自分が出たときはまだ今ほど女性が鍛えるという世の中ではなかったですから。

ケイト・ロータス
――そこからMMAをやりはじめたのは?

ケイト ボディビルの2回目の大会に向けて鍛えていたときに、コーチから「有酸素運動をしないといけないよ」と言われて、キングジム神戸というジムに通い出したのがきっかけです。「ミット打ちとかで体重を落とせたらな」という感じやったんですけど、結局はコロナでボディビルの大会が中止になってしまって......。

――それが、ちょうど2020年ですか。

ケイト そこで「どうしようか」となったときに、キングジム神戸の代表から「MMAやってみたら?」と。だから、MMAに関しては選手になりたいとかじゃなかったんですけど、せっかく声をかけていただいたので「アマチュアの試合なら」ということで出場しました。

――その試合が同年10月の藤田翔子戦ですよね。結果、負けはしましたけど、血まみれで向かっていく姿にかなりの根性を感じました!

ケイト いやあ、何もわからないからいけたんでしょうねえ。今考えたらホンマ恐ろしいわと思いますけど、だからこそ前に出られた試合やし、藤田選手が乗せてくれた試合やと思ってます。血が流れながらもアドレナリンドバドバで「楽しー!」みたいな。でも、負けたのはやっぱり悔しくて「このままでは終わりたくない」というタイプやったから、そこでちゃんと続けたいなと思いました。

――そもそも、MMAに対しては何か知識や興味はあったんですか?

ケイト いや、まったく。唯一、当時付き合ってた彼氏が格闘技好きやったからK-1は軽く観てましたけど、MMAは全然知らなくて。でも、そのとき朝倉未来選手とかがRIZINに出はじめていた頃で、RENA選手や浅倉カンナちゃんが女子格トップで盛り上がってたんですよね。といっても、それぐらいしか知りませんでした。

――となると、そういう選手たちと同じ競技をやっているんだと気づいたのは?

ケイト プロデビュー戦の熊谷麻理奈戦(2020年12月)のあとからですね。熊谷戦は一本勝ちだったので「楽しい、楽しい」という感じでしたけど、そこから楽しさプラス技術の奥深さというか「こういう世界があるんだな」と知りはじめた感じです。

2020年12月19日に行われた『DEEP JEWELS31』で、熊谷麻理奈相手にプロデビューを果たす。熊谷は全日本ボクシング選手権2012準優勝の実績を持ちキックボクサーとしても活躍するベテラン。打撃から腕十字で一本勝ちを見せ、強烈なインパクトを残した。(c)DEEP JEWELS 2020年12月19日に行われた『DEEP JEWELS31』で、熊谷麻理奈相手にプロデビューを果たす。熊谷は全日本ボクシング選手権2012準優勝の実績を持ちキックボクサーとしても活躍するベテラン。打撃から腕十字で一本勝ちを見せ、強烈なインパクトを残した。(c)DEEP JEWELS

――現在は、上京して元DEEP王者の横田一則さんが主宰するK-Clannで練習しているそうですが、横田さんは練習がめちゃくちゃ厳しいことで有名ですよね。

ケイト ホンマに、頭おかしいんちゃうかなと思うくらいキツいですよ(笑)。

――それで、よく続けられますね。

ケイト というか、自分には「やらない」という選択肢が頭の中にないので。そもそも、昔から何か人から教わるのが好きで、それで自分が成長していくのが楽しいタイプの人間なんですけど、MMAは本当に教わることだらけなので。まあ、根が真面目なのもあるんでしょうけど、自分にとっては最高の環境なんですよ。

――そこは、やっぱり強くなりたいという思いもあるからですか?

ケイト 強くなりたいし、チャンピオンになりたい。それに、こうやって毎日練習できるのもスポンサーさんがおったり、練習に付き合ってくれる人がおったりするから、その人たちのために強くなって恩返しがしたいという思いも強いですね。

――最初は自分が楽しくてやってただけだったけど、気づけば応援してくれる人が増えて自分一人のプロジェクトじゃなくなってきたというか。

ケイト それに格闘技がなかったら、私なんか何も注目もされていないただの一般人で、ダラダラ生活してただけの人生やと思うんで。それを変えてくれたのが総合格闘技やし周りの人たちやから、その人たちのために強くなりたいです。

――ちなみに、DEEP JEWELSのトップ選手は、さらなる大舞台であるRIZINに参戦する選手が多いですが、RIZINという舞台はどう思ってますか?

ケイト 自分がMMAをはじめた当初よりかは出場しやすくはなってる舞台かなと思うんですけど、憧れの舞台には変わりないですね。自分もそこに上がりたいですし、RIZINという大きな舞台に自分が出ることで「こんな不器用な人でもMMAできるんやぞ」というのが伝わって、さらに競技人口が増えてくれたらいいなって。

――確かに、ケイト選手のようにそこまで強烈なバックボーンがない人がRIZINに参戦するのは夢がありますよね。

ケイト それを示したいし、実現させたいです。

――ちなみに、RIZINで戦ってみたい相手とは?

ケイト やっぱり自分が憧れていたRENA選手とは闘いたいし、いつかはパク・シウ選手とも闘いたいですね。自分が憧れてた人たちに勝たないと、逆に自分が誰かに「かっこいい」と思ってもらえることはないと思うので。二人とも強い選手ですけど、リスペクトしているからこそやってみたいです。

ケイト・ロータス

――強くなりたいという思いがある一方で、有名になりたいという気持ちもあります?

ケイト うーん、前までは「有名になりたい」なんて考えてなかったんですけど、最近は引退後のこともぼんやり考えるようになって。なんかこう、格闘技以外に自分に自信が持てるものがほしいと思って、じつは芸能事務所に入ったんですよね。

――おお~、そうなんですね。

ケイト そういう芸能のお仕事も何かできればなあと思うから「有名になりたい」という気持ちは今はあります。ただ、完全に格闘技という土台があってこそなんですけどね。まあ、SNSのフォロワー数を増やしてて損することはないやろうと思うし。だから、はじめから「芸能人になりたい」とかではないです。

――デビュー当初のインタビューを読むと「ビジュアルだけで注目されるのに抵抗がある」とおっしゃってたもんね。

ケイト だって「美人ファイター」なんて言ってもらってますけど、普通に格闘技を抜いたらどこにでもおるような顔やし。格闘技があるからそうやって注目されてますけど、格闘技がなかったら普通の人なんでね。だからこそ、この前のKOはうれしかったんですよ。少しは「ケイトやるやん」と思ってもらえるようになったかなって。

――ところで、ケイト選手ってインスタでよく料理している写真をアップしていますよね。料理はお好きなんですか?

ケイト もう、物心ついたときからお母さんに包丁を握らされてたんです。お母さんも、おばあちゃんも、もともと料理屋さんしてたんで。私もお店で生ビールついだりして手伝ってたんですよ。

――ちなみに、それは何屋さん?

ケイト おばあちゃんは焼肉屋で、お母さんは和食料理のお店です。私はお母さんのお店をよく手伝っていたんですけど、ビール注いでたら「かわいいな」みたいな感じでお客さんによくお駄賃もらってました。仕込みも手伝わされてたんで、だいたいの料理はもう感覚でできますね。

――では、ズバリ得意料理は?

ケイト めっちゃ王道ですけどハンバーグです。けっこう面倒くさい料理やけど、自分のハンバーグはおいしいから作っちゃいますね。

――それにしても「ケイト・ロータス」というリングネームはめっちゃいい名前ですよね。

ケイト ありがとうございます! 私、蓮の花がめっちゃ好きなんで「ロータス」と付けたんですけど「ケイト」は本名で。漢字で「恵音」と書くんですよ。お母さんに由来を聞いたら「あなただけの音だよ」と。「あなたに恵まれた音を拾って生きなさい」と言われました。

――それは素敵な由来ですね。

ケイト だから、自分だけの音というと......今はミット打ちの音と料理してるときの音かな?(笑)。そんな、いい音をもっともっと響かせていきたいですね。

ケイト・ロータス

●ケイト・ロータス
1998年生まれ、兵庫県出身。164cm、49kg。
2020年10月、DEEP JEWELS藤田翔子戦(アマチュアルール)で初めてMMAの試合に出場し、同年12月熊谷麻理奈戦でプロデビュー。その後、キングジム神戸所属からフリーとなり、現在は横田一則主宰のK-Clannで練習を重ねている。プロ戦績11戦5勝6敗で、2024年3月桐生祐子戦では自身初のKO勝ちを収めた。打撃も寝技もできるトータルファイターとしてRIZIN参戦を目指す。
公式インスタグラム【@keito.ohy】