開幕から13試合目で今季初本塁打を放ったヤクルト・村上も、公式球への違和感を吐露 開幕から13試合目で今季初本塁打を放ったヤクルト・村上も、公式球への違和感を吐露

143試合で争われるプロ野球ペナントレースは、早くも4分の1程度が終了。競馬でたとえるなら、第1コーナーを回ったばかりではあるが、開幕後に話題になったトピックや、各球団の現状を徹底分析する!【プロ野球ペナントレース"第1コーナー"ワイド①】

■開幕ダッシュに成功した中日の戦略

セ・パ共に防御率1点台投手がずらりと並ぶなど、明らかに"投高打低"だが、その要因として注目されているのが"飛ばないボール"問題だ。

今年のボールに関して、反発係数が規定内であることは、選手の立場を守るプロ野球選手会も確認済みだという。

しかし、時事通信社によれば、開幕1ヵ月後の4月29日時点で12球団の総本塁打数は昨年より3割弱減少しており、データ面でボールが飛んでいないのは明らか。本誌で数年前から「ボールが飛ばなくなっている」と警鐘を鳴らしてきた野球評論家、お股ニキ氏は次のように語る。

「私の感覚では、2021年から飛ばなくなりました。以前ならスタンドに入っていた角度の打球が外野フライになったり、打球音が鈍かったりと異変は明らか。今季の開幕直後は、それに輪をかけて飛ばなくなりました」

NPBの飛ばないボールに関して、実はアメリカでもすでに話題になっているという。

「アメリカの記事では『NPBは"デッドボール"時代』と表現されています。打者への死球ではなく、"死んだボール"という意味です。山本由伸のドジャース移籍に関しても、『すごい投手だが、デッドボール時代であることを割り引いて考える必要がある』という論調でした」

実際、選手や監督も、ボールに言及し始めている。

「中日の立浪和義監督はオープン戦時点で『ボールの飛びが重い』と発言し、守備的な戦い方を選択。一時首位に立てたのも、その戦略が正しかったといえます。

また、4月18日には、一昨年の三冠王、村上宗隆(ヤクルト)が『打球速度と飛距離が比例していない』とコメント。公式球を提供するミズノとも契約しているだけに、相当な覚悟を持って発したはず。その直後から、セ・パ共に本塁打が増え始めたことも注目すべきです」

開幕直後の最低水準を脱したとはいえ、"投高打低"が続く状況に変わりはないが、打者はどのような対応が求められるのか。

「丸佳浩(巨人)のように反対方向へ本塁打を打っていた選手が一番損をします。対応策としては、体重を増やして『反対方向でも絶対入れてやる』とバットの振りをさらに強くするか、ヒット狙いに徹するか。後者を選択する選手が多くなるでしょうね」

ヒット狙いの打者が増えることで、日本野球のスケールがどんどん小さくなってしまう、とお股ニキ氏は危惧する。

「バントも多く、外野守備も以前より前進しています。そして、『狙っても打てない』と長打を諦める打者が増えると、投手はストライクゾーンへアバウトに投げればなんとかなってしまう。そんな野球は面白いのか、と問いたいです」

また、大量得点が望めず、接戦が増えることで、中継ぎ投手の負担が増大するという。

「2、3点差は日常茶飯事。延長戦も増えるのは当たり前で、中継ぎ投手は自然と登板過多になる。中継ぎの枚数を増やすのはもちろん、管理・運用がより重要になります」

こうした個々の変化やメリット、デメリット以上にお股ニキ氏が気にかけるのは、野球の面白さを担保するためのバランス感覚だ。

「実は最近、ストライクゾーンも広い。飛ばないボール同様、よほど試合時間を短縮したいのかなと推察しますが、競技として、エンタメとして、果たして面白いものになっているのか。選手の能力が最も発揮されるバランスが重要なので、中央銀行の金融政策のように"ちょうどいいライン"を模索してほしいです」

*成績は5月8日時点

オグマナオト

オグマナオトおぐま・なおと

1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

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