U-23代表候補選手をフカボリ! U-23代表候補選手をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第95回のテーマは、パリ五輪までにJリーグで見ておきたいU-23代表候補選手5選。パリ五輪本番まであと2ヶ月と少し。五輪が終われば海外へと羽ばたいてしまうかもしれない、将来有望なJのU-23代表候補選手が多い中で、いまのうちにチェックしておきたい5人を福西崇史に選出してもらった。

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先日行われた「AFC U23アジアカップ カタール2024」で優勝したことで、U-23日本代表は7月26日(金)から開幕する「パリ2024オリンピック」への出場権を獲得しました。サッカーは開幕よりも一足早く競技がスタートするため、日本は初戦のパラグアイ戦を7月25日に迎えます。

五輪本番まで2ヶ月と少し。U-23日本代表がどのようなメンバーで臨むのか、サポーターは今から楽しみにしていると思います。候補の中にはJリーグで活躍する選手も多数いますが、この大会が終われば海外へ移籍してしまうという選手も多いでしょう。

そこで今回はパリ五輪本番までに見ておきたい、Jリーグで活躍する候補選手5名を紹介したいと思います。

まず1人目はFC東京のMF松木玖生。彼の強みは攻守のどの局面においても発揮するフィジカルの強さです。一昨年のデビューからJリーグで通用するどころか、当たりの強さは際立ち、ルーキーとしては別格でした。

アジアカップでも守備で体を張る場面ではもちろん、相手にプレッシャーをかけられてキツいときに、彼がフィジカルを活かして強引にドリブルで持ち上がってチームを助けた場面もあり、主力の一人として五輪出場に大きく貢献しました。

シーズンを重ねるごとに攻守において存在感は増していて、今季はプロ3年目にしてキャプテンを任されていますが、彼の勝気な性格、キャプテンシーというのも大きな魅力だと思います。立ち振る舞いはもちろん、彼のピッチで戦う姿勢というのは周りの選手やサポーターを奮い立たせるものだと思います。

今後の伸びしろとしては、A代表などさらにレベルの高いところへ行って、どれだけ周りを活かせる選手になれるか。良い選手には味方から勝手にボールが集まってくるものですが、今の松木はそこまでではありません。ボールが集まり、彼を中心にゲームが回るようになると、よりスケールの大きな選手になると思います。

2人目は同じくFC東京のFW荒木遼太郎です。彼の魅力はなんといってもテクニックでしょう。彼にボールが渡ると「なにをしてくれるのか」というワクワク感があり、状況判断にも優れていて、見ていて非常に楽しい選手です。

アジアカップでもカタール戦の細谷真大へのアシストやイラク戦でのゴール、決勝の山田楓喜へのアシストなど、得点に関与するアイデアや冷静さは際立っていました。

鹿島アントラーズでは2021年にはベストヤングプレーヤー賞を受賞するなど活躍しましたが、怪我をして以降、思うように出場機会に恵まれずにいました。五輪イヤーの今季はU-23代表復帰のために相当な覚悟を持ってFC東京に期限付き移籍で加入し、開幕から6試合で5得点と見事な復活を遂げています。

輝きを取り戻した大きな要因は、セレッソ大阪との開幕戦で2ゴールを挙げるなど、早々に得点という結果を残して自信を得たことが大きいと思います。もともとボールタッチやドリブル、パスなどボールを持った時のクオリティはJリーグのなかでは非常に高いものがありました。アジアカップでさらに自信を深めた荒木のプレーにはぜひ注目してほしいと思います。

3人目はFC町田ゼルビアのFW藤尾翔太です。彼は長身の体をうまく使ってボールを収めるのが巧みで、突破力もあって得点のセンスもあるなど、なんでもできるFWな上に献身的な守備もできる"闘える"選手というのも非常に魅力的なところだと思います。

アジアカップではトップをやったり、右サイドをやったりと、求められた役割を堅実にこなしてチームへの貢献度の非常に高い選手でした。

セレッソ大阪のアカデミーからトップに昇格して、そこから水戸ホーリーホックや徳島ヴォルティスで出場機会を得て自信を深め、昨季町田へ移籍したことで飛躍しました。

町田の強度の高いサッカーのなかでさらにフィジカルは鍛えられ、粘り強い守備や攻撃時のキープや突破、ポストプレーなど、状況に応じたプレーの判断も非常に優れています。今季のJ1で台風の目となっている町田で躍動する攻守に幅の広い彼のプレーにぜひ注目してください。

4人目はセレッソ大阪のDF西尾隆矢です。彼はこれからの成長に非常に期待しているセンターバックで、2022年にはA代表に初招集されただけあり、ポテンシャルは非常に高い選手です。

競り合いに強いし、セットプレーで点を取ることもできる。足元の技術が高くて、ビルドアップの繋ぎも得意で、ボールを持ち運ぶ技術と判断にも優れています。非常に総合力の高い現代的なDFだと思います。

アジアカップの中国戦では残念な一発退場がありましたが、今回の経験を経て精神的により大人な選手へと成長してほしいと思っています。日本代表には冨安健洋や板倉滉など、欧州のトップリーグで活躍するDFがいますが、西尾はそこへ割って入るくらいの選手になっていかなければいけない選手の一人だと思っています。

最後は川崎フロンターレのDF高井幸大です。彼はU-23の一つ下の世代でありながら今回のアジアカップでは主力のセンターバックとして活躍してくれました。西尾同様に総合的に能力の高いDFですが、その中でも魅力は192cmというサイズです。

フィジカルはまだまだ向上の余地がありますが、日本人でこのサイズはとても貴重です。A代表のアジアカップで露呈したように、ロングボールにはまだまだ弱い日本にとって、彼の成長は重要なものになると思います。

その高さに加え、川崎のアカデミーから育ったこともあり、足元の技術も非常に高いものがあります。ビルドアップでボールを持つことを苦にせず、フィード能力や縦パスを差し込む技術とセンス、ボールを持ち運ぶ判断力も抜群で、今季の川崎のなかでも高いパフォーマンスを見せていると思います。

プロデビューとなった昨季は18歳で経験不足ゆえに不安定なところもありましたが、その経験を経て今季は落ち着きを身につけました。主力の多くが抜け、新たなサイクルに入った川崎のなかで、欠かせない戦力となろうとしている高井もぜひパリで見てみたい選手です。

パリに行けるのはたったの18人。オーバーエイジの3人を含めるとこの世代は15人しか選ばれないのは非常にもったいないと感じてしまいます。ぜひパリ五輪本番までにJリーグで彼らのプレーをチェックしてみてください。

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福西崇史

福西崇史ふくにし・たかし

1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm。1995年にジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年~2007年はFC東京、2007年~2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している

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