「外野は黙ってろ」という言葉があります。「外野=蚊帳の外」という意味合いで使われるようですが、野球において外野はとても大事なポジションです。

プロ野球は、投手を除くと8つのポジションがあり(DHを入れると9ですね)、特定のポジションに確固たるレギュラーがいるチームもありますが、たいていはそのポジションを巡る争いが繰り広げられています。中でも、最も競争が激しいのは外野なんじゃないかと思っています。

レフト、センター、ライトのうち、レフトは助っ人外国人選手が守ることが多いですね。セ・リーグだと中日のオルランド・カリステ選手、阪神のシェルドン・ノイジー選手、我らがヤクルトではドミンゴ・サンタナ選手がレフトの守備につくことが多く、打線では中軸を担っています。比較的に負担が少ないレフトを守ることで、打撃に集中してほしいという首脳陣の考えによるものかもしれません。

「外野手」と聞くと、誰が頭に浮かびますか? 個人的に我がヤクルトでは、MLB挑戦前から長く活躍を見てきた青木宣親選手のイメージが強いです。現在、42歳の青木選手がレギュラー争いをしているのを見ると、時代の流れを感じます。ほかの日本人選手だと、丸佳浩選手、柳田悠岐選手、鈴木誠也選手、引退された選手だとイチロー選手、松井秀喜選手など名選手の名前が次々と挙がりますね。

守備と打撃のどちらを優先するのか、安定のベテランと育成したい若手のどちらを起用するのか......といったように、外野は首脳陣の采配が色濃く反映される印象もあります。勢いのある若手が起用された試合でいうと、5月12日の巨人vsヤクルト戦が記憶に新しいです。

ヤクルトの1点リードで迎えた8回表、レフトのサンタナ選手を下げ、日本人選手で外野を固めました。そこでセンターに入ったのが、ルーキーの岩田選手。前回の連載で、牽制アウトになったあとの悔し涙について紹介した岩田選手ですが、この日は魅せてくれました。

2アウト1、2塁で岸田行倫選手が放ったセンター前ヒットを捕球し、ホームへ見事な好返球。瞬足の2塁ランナー、吉川尚輝選手を刺したのです。采配が功を奏したいい例ですね。

外野は若手を"お試し"で起用しやすい側面もありますが、一方でチームの調子がよくなると、外野は固定されていく傾向があります。なかなか下位から抜け出せないヤクルトが浮上するためにも、外野のメンバーが固定されることが大事じゃないかなと考えています。

塩見泰隆選手が負傷で離脱し、センターのスタメン争いは熾烈になっています。3年目の丸山和郁選手が一歩リードしている印象もありますが、濱田太貴選手をはじめとするほかの若手の奮起も待たれます。

我が家の愛猫の名も、ヤクルトの偉大なる外野手から拝借しております。 我が家の愛猫の名も、ヤクルトの偉大なる外野手から拝借しております。

それにしても、今季からヤクルトでプレーする西川遥輝選手には頭が下がりますね。日本ハム時代の2021年には、推定年俸が2億4000万円まで上がった西川選手ですが、昨オフに楽天を戦力外に。そこでヤクルトが獲得し、ここまで(5月16日時点)で31試合に出場しています。手薄になった外野の布陣を考える首脳陣はどれだけ助けられたことでしょう。

今年の推定年俸は1600万円とのことですが、間違いなくそれ以上の活躍を見せてくれています。若手に対する面倒見のよさも随所に見られますね。岩田選手をはじめとする若手の台頭の裏には、経験豊富な青木選手や西川選手の存在があることを忘れてはいけません。

野球では「ライトで8番打者」を指す"ライパチ"という言葉もあります。野球が苦手な人を指す言葉でもありますが、プロ野球の外野手は何かの才能に秀でていて、とても魅力的です。

そして、強いチームは外野が強い、とも思います。ヤクルトも、強い時期はすばらしい外野手がシーズンを通して活躍しています。記憶に新しいところでは、リーグ連覇を果たした時もそう。2021年は5月くらいから「サンタナ・塩見・青木」でほぼ固定され、2022年はそこに山崎選手も加わって4人で回していました。

現在の外野のメンバーを覚えておくと、のちのち面白いかもしれません。シーズンが終わった後に振り返ると、外野の選手起用がターニングポイントになっていることも少なくないですから。

チーム事情、葛藤などが反映されやすいのが外野、というお話でした。それではまた来週。

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週金曜日朝更新!