"女子プロレスの仕掛け人"ロッシー小川が、4月に設立を発表した新しい女子プロレス団体「マリーゴールド」が話題だ。
小川氏は人気女子プロレス団体「スターダム」の創始者で、2019年にブシロードに経営譲渡後はエグゼクティブ・プロデューサーに就任していた。しかし今年2月に電撃退団。しばらくの沈黙の後、新団体設立を発表すると、WWE移籍が噂されるジュリア、デビュー史上最短王者で新時代の旗手とされる林下詩美、"女子プロレス界の人間国宝"高橋奈七永まで、女子プロレス界の年表が作れそうな新旧トップ選手が一堂に会する急拡大を見せている。
5月20日の旗揚げ戦のチケットは当然ながら既に完売。ABEMAの「レッスルユニバース」での配信も決定し、業界で最注目の存在だ。いったい何が起こっているのか、その内情を探るべく、都内の合同練習に潜入した!
ーー驚きました。突然のスターダム退団から新団体設立の噂はありましたが、まさか現実のものになるとは。一体何があったんでしょう?
小川 やっぱり組織の中だとそこの体制もあるし、なかなか自分の意見も反映されない。でも、まだまだできる自分がいたので、結果としてこういう形になりました。
ーースターダムは小川さんが2011年に作り、大きくしてきた団体。現体制では創始者としては物足りなさがあったということですか?
小川 ブシロードの4年間は何も変わってないし、自分自身も退化してただけ。でも新たに動き出すと、昔からの縁があった人たちが関わって手伝ってくれたり、偶発的にいい方に向かっていて、自分も活力が出て来てますよ。
――1978年に全日本女子プロレス(全女)に入ってから、その企画力で昭和、平成、令和の女子プロレスを盛り上げてきたロッシー小川は、まだまだ新しいことができると!
小川 もう67になるんですけど、今が一番いいんじゃないかな。名前も業界で知られているし、実際、旗揚げ戦もファンイベントもありがたいことに秒殺で売れていて、ファンの人もワクワク感があるんじゃないかな。ロッシー小川が動けばそうなると。だてに半世紀やってないですよ(笑)。
――選手も続々と集まっていますよね。スターダム勢はもちろん、プロレスを取り入れた舞台を手掛ける団体・アクトレスガールズからは女優と兼業する選手も加入し、華やかさが増してます!
小川 うれしい悲鳴ですよ。「来るもの拒まず」でやってきたけど、思っていた以上に増えちゃったし、まだ入りたいって人もいるし、「もう前言撤回してください」という選手もいるぐらいで(笑)。
――まずスターダムからはジュリア、林下詩美など若いトップ選手が合流しています。
小川 ジュリアは将来的にプレミアムレスラーになっていくんじゃないかな。詩美もデビューしてすぐ一時代を築いたけど、まだ若いしもう一時代築けると期待してますよ。
――時代を築いたといえば、かつて全女、スターダムで頂点に君臨した高橋奈七永も加入。経験の少ない選手に指導もされていました。
小川 奈七永はもう引退を見据えて来てるからね。あとは指導もしてもらえれば。
――今回、練習を拝見させていただきましたけど、ジュリアがリーダーシップをとって「スクワット200回!」「腹踏み100回!」と厳しいメニューを課しつつも、みんなが積極的。選手たち全員が新たな挑戦を楽しんでいる様子が伝わってきました! 現時点で期待の若手選手はいますか?
小川 みんなに期待してるけど、スターダムからの移籍組のMIRAI、弓月とか本格派の選手もいれば、旧アクトレス勢の青野未来、天麗皇希とか、誰が見てもパッと輝いてる人もいる。まずはそういう人をもっと際立たせたい。
新たな旅立ちに際しては、不安と恍惚があるものです(笑)。ただ、やっぱり自分がどんなに頑張っても選手ありき。魅力ある選手がいるか、ファンが見たい選手がいるかが大事で、キャリアは関係ない。
――今後は海外からの参戦もあるでしょうし、イヨ・スカイ(紫雷イオ)を始め、カイリ・セイン(宝城カイリ)やトニー・ストームなど、スターダムを経由して世界で活躍する彼女たちが参戦したりも......。
小川 ふふふ。そういう人が試合をやれる環境があればいいかな。
――おーっ! 意味深な発言(笑)。
小川 マリーゴールドは「黄金の花園」なので、参戦するみんなが輝いてほしいんですよね。大輪の花が咲く人もいれば、一輪の小さな光を放つ人もいるかもしれないし、花の色も大きさも人それぞれだけど、大きな花も小さな花もひとつです。
これからみんなが色をつける団体だから、ここだったら面白いこと、新しいことができると来るんだろうし、自由にやってもらいたい。
今の時代って、みんないろんなことやりたいわけでしょ。二刀流じゃないけど、女優と兼業の人がいてもいいし、プロレスに専念する人はすればいい。そこは柔軟に、あれはダメ、これはダメって、決めつけないこと。
――決めつけないからこそ、プロレスは面白くなると。
小川 そう。「リングで何を見せられるか」なので、リングに上がれば団体の大きい小さいは関係ない。ただ、やってる方が楽しくないと、見てる方も感じられない。だからみんなが楽しく充実してやっていけて、それなりの給料がもらえて、こちらも支払えるように、今は起きてから寝るまでめいっぱいやってますよ(笑)。
――ちなみに小川さん自身は97年に「アルシオン」、2011年に「スターダム」を設立し、3度目の団体設立になります。
小川 でも別に、新しいことを始めるのが好きというわけでもなくて。強いて言えば、歴史を作っていくのが好きなんですよ。スターダムを作ったときも、歴史を作る過程だと思ってやっていた。
――まさしくビューティ・ペア、クラッシュ・ギャルズなど昭和のスター選手をマネジメントし、平成にはグラドルレスラー愛川ゆず季を輝かせ、女子プロレスの歴史を作ってきたとも言えますよね。あと今後のスターダムとの関係も気になります。
小川 敵対してはいないけど、意識はしてますよ。自分が作った団体なので、スターダムはスターダムで頑張ってもらいたい。だけど我々は下部団体ではないので、それとは別にやっていきます。
何年か前から、スターダムのライバルは自分で作るしかないなと思っていたんです。それが今、実現して、高橋奈七永とか風香とかスターダムの最初のメンバーも集まって、これからどう一歩を踏み出すかというところ。大きなものには飲み込まれないようにやりたい。
――スターダムとそのライバルとしての「マリーゴールド」の違いとは?
小川 フロンティアスピリットですね。スターダムは良くも悪くも、サラリーマン化している部分がある。どうしても組織が大きくなると、スタッフにもレスラーにも制約が出るから。我々はそうではなく、開拓者なんです。
――確かに組織が大きくなると、「何が起こるか分からない」という未知なるスリルや、我を忘れるような熱さは減るかも...。マリーゴールドは何の規制もなく、選手の熱いアイデアや願いを実現できるフロンティアだと!
小川 そう、その精神が大事なので。みんなが自発的にやってくれればいい。報告は受けるけど、却下することはない。我々はフロンティアスピリットで、できあがっている仕組みに乗っかるんじゃなく、これから作っていくんです。
我々は長い経験があるだけじゃなくて、時代に合わせて常に進化してるんですよ。かつての昭和プロレスのいいところを、令和の新しい団体がミックスしていけば、もっと面白いことが起こるんじゃないかな。コンプライアンスはありませんから!
まずは旗揚げ戦で、何が起こるかを見に来てください。
●ロッシー小川
78年に全日本女子プロレスに入社し、80年代から90年代にかけて女子プロレスブームの立役者に。2011年に設立した「スターダム」を19年にブシロードに譲渡してからはエグゼクティブプロデューサーを務めていたが、24年2月に電撃退団し、新団体「マリーゴールド」の旗揚げを発表した。
■大会スケジュールは「マリーゴールド」公式HP