英プレミアリーグの名門リバプールで、シーズン途中にレギュラーに定着した遠藤。持ち前のボール奪取能力に磨きがかかった 英プレミアリーグの名門リバプールで、シーズン途中にレギュラーに定着した遠藤。持ち前のボール奪取能力に磨きがかかった

昨夏に幕を開けたヨーロッパサッカーの2023-2024シーズンも、ほとんどの各国リーグで全日程が終了。今シーズンは、ドイツのレバークーゼンがブンデスリーガ史上初となる無敗優勝の快挙を成し遂げたほか、イングランドのプレミアリーグでも王者マンチェスター・シティが史上初の4連覇を達成するなど、数々の話題をファンに届けてくれた。

そんな中、日本のサッカーファンが気になるのは、ヨーロッパでプレーする日本人選手の活躍ぶりだろう。期待どおりのパフォーマンスを見せたのは誰なのか。逆に、物足りない結果に終わった日本人選手は誰か。

ここでは、ヨーロッパの主要リーグでプレーする日本人選手の中で、特に目立った活躍を見せた選手と、残念な結果に終わった選手を5人ずつ選出。彼らの今シーズンをチェックする。

まず、期待に応えて評価を上げた選手の筆頭が、今シーズンから世界的ビッグクラブのリバプール(イングランド)に移籍した日本代表キャプテンの遠藤 航だ。

過去5シーズンにわたってドイツのシュトゥットガルトの主軸として活躍した遠藤だが、「さすがに、世界最高峰のプレミアリーグで毎年優勝争いを演じるリバプールでは出番も限られ、苦戦するだろう」というのが、移籍当初の大方の見方だった。

実際、プレミアリーグの速さと強度に順応し、名将ユルゲン・クロップ監督の戦術を理解するまでにはそれなりの時間を要した。しかし、シーズン半ばの12月に中盤の主力選手が負傷離脱すると、あっという間にレギュラーに定着。現地評価も急上昇した。

際立ったのが、速い判断力で相手の攻撃の芽を摘み、素早くボールを味方につなげるプレーだった。

そもそも、名門リバプールの中心選手として活躍すること自体が日本人選手としては画期的なこと。その意味で、リーグカップ優勝に貢献するなど、ベテランの域に入った遠藤が見せた成長と進化は、日本人選手の希望の光にもなったといえる。

フランスの名門モナコで2年目を迎えた南野拓実も、期待以上のパフォーマンスを見せて現地の評価を高めた日本人選手の代表格だ。

プレシーズンから好調を維持して臨んだ今シーズンは、ザルツブルク時代の恩師アドルフ・ヒュッターが新監督に就任。それもプラスに作用すると、開幕からレギュラーに定着して得点とアシストを量産し、リーグが選ぶ8月の月間MVPに輝くなど最高の滑り出しを見せた。

さらに、チーム事情によって10月からMFを任されると、1列下がったエリアから攻撃のタクトを振り、以前とは異なるプレースタイルも披露。

こうして万能型アタッカーとなった南野は、複数ポジションで輝ける選手へと変貌を遂げ、最終的にリーグ戦30試合に出場し、9ゴール6アシストをマーク。チームも2位の座を確保し、来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を獲得した。

振り返れば、昨シーズンの南野は鳴かず飛ばずで、「1800万ユーロ(当時約25億円)という高額な移籍金に見合わない選手」と現地で酷評された。しかし現在は現地メディアも称賛一色で、その評価が一変している。

レアル・ソシエダの久保は開幕からゴールを量産。シーズン後半は過密日程で疲れが見えたが、チームの主力として活躍した レアル・ソシエダの久保は開幕からゴールを量産。シーズン後半は過密日程で疲れが見えたが、チームの主力として活躍した

昨シーズンの好調を維持して躍動したのが、久保建英堂安 律

レアル・ソシエダ(スペイン)で2年目を迎えた久保は、昨シーズンに続いて右ウイングを主戦場とし、開幕戦から約2ヵ月間で5ゴールを量産。華々しいスタートを切った。

同時に、久保自身が初めて出場したチャンピオンズリーグの舞台でも、ゴールこそ奪えなかったが、1アシストを含めた数々のチャンスメイクで攻撃陣を牽引すると、チームもグループステージ首位通過を果たした。残念ながらラウンド16で敗退したが、久保の活躍ぶりはチームの中で傑出していた。

確かに、日本代表として参戦したアジアカップからチャンピオンズリーグ敗退までの〝強行軍〟により、シーズン終盤は疲労が蓄積してパフォーマンスが低下したことは否めない。

ただ、逆に言えばそれは休養を与えられないほど不可欠な戦力だったことを意味する。昨シーズンを下回るシーズン7ゴールに終わったことも、悲観する必要はない。

その久保とは日本代表でライバル関係にある堂安も、昨シーズン同様の活躍を披露して評価を高めている。

フライブルク(ドイツ)で30試合に出場し、リーグ戦で7ゴール2アシスト、ヨーロッパリーグでも2ゴール2アシストをマーク。アジアカップ時の不在期間を除けば、今シーズンもチームの中心選手としてフル稼働した。数字的にも昨シーズンのリーグ戦5ゴールを上回るなど申し分のない個人成績を残している。

任された主なポジションは久保と同じ右ウイング。ただし、今シーズンの堂安は3バック時に右ウイングバックでプレーする試合もあり、以前よりもプレーの幅を広げた点も見逃せない。

ゴール数で際立っていたのが、今年3月の北朝鮮戦で日本代表に復帰を果たしたNECナイメヘン(オランダ)の小川航基だった。

今シーズンに記録したリーグ戦のゴール数は2桁達成の11。小川にとってヨーロッパ初挑戦のシーズンだったことを考えると、ルーキーイヤーにブレイクスルーを果たしたといっていい活躍ぶりだ。

とりわけシーズン後半戦のパフォーマンスは圧巻だった。開幕から2試合連続ゴールを決めた小川は、その後に負傷したことも含め、シーズン前半戦は華々しい活躍を見せていたわけではない。

ただ、オランダになじみ始めた後半戦に入ると、6ゴールを量産してワントップに君臨。同じポジションのライバルを大きく突き放し、最終的にチーム得点王に輝いている。

その活躍ぶりを評価され、6月の日本代表メンバーにも選出された小川は、今最もホットな日本人ストライカーといえるだろう。

一方、新天地移籍が凶と出て、予想以上の苦戦を強いられたのが、ラツィオ(イタリア)の鎌田大地だった。

問題の端緒は昨夏の移籍マーケットにあり、フランクフルト(ドイツ)でのヨーロッパリーグ優勝を手土産に「加入濃厚」と報じられていた、名門ミランへの移籍交渉が破談に終わったことが不運の始まり。

代わりの移籍先となったラツィオでは、初めてのセリエAの水になじめなかった上、マウリツィオ・サッリ監督のお眼鏡にかなわず出場機会が激減。戦力外に近い扱いを受けるようになると、昨シーズンにあれだけ深めていた自分のプレーに対する自信も失うこととなった。

ただ、鎌田にとって救いとなったのは、今年3月にサッリ監督が成績不振により辞任したことだった。

さらに、後任となったイゴール・トゥドール監督が鎌田の能力を評価してスタメンに抜擢したことで、すべてが好転。シーズン終盤は本来の調子を取り戻し、日本代表メンバーにも復帰を果たすなど、来シーズンに向けた明るい話題も報じられるようになっている。

同じく、新天地で苦戦したのが1000万ユーロ(当時約15億円)の移籍金でオランダの名門フェイエノールトに活躍の場を移した日本代表FW上田綺世だ。

ヨーロッパ初挑戦となった昨シーズンは、ベルギーのサークル・ブルッヘで22ゴールを量産。その実績を買われて移籍した上田だったが、チームのエースストライカーとして君臨するメキシコ代表のサンティアゴ・ヒメネスの牙城を崩せず、開幕からベンチを温める試合が続いた。

途中出場に限られる中、シーズン前半戦で記録したゴールはわずか1。2ゴール目を決めた今年3月のヘーレンフェーン戦まで、約半年にわたってノーゴールの状態が続いた。

希望の光となったのは、シーズンの終盤。チームのチャンピオンズリーグ出場権獲得が確定したこともあり、先発のチャンスを与えられた上田は、その期待に応えて3試合連続ゴールをマーク。

監督のアルネ・スロットは来シーズンからリバプールの監督に就任することが決まっており、来シーズンは上田にとって名誉挽回のチャンスが到来する。それだけに、終盤の活躍ぶりは大きな意味を持つ。

セルティック(スコットランド)で3年目を迎えた日本代表MF旗手怜央も、期待に応えられなかった日本人選手のひとりに挙げられる。

今シーズンはリーグ戦16試合に出場し、そのうちスタメン出場は12試合。昨シーズンは32試合でスタメン出場は29試合だったので、出場機会は半減したことになる。

また、ゴール数も昨シーズンの6から今シーズンは3ゴールと、こちらも半減。元横浜F・マリノス監督のアンジェ・ポステコグルーがトッテナム(イングランド)の監督として引き抜かれ、今シーズンからブレンダン・ロジャーズ新監督が采配を振ったことも少なからず影響した。

ただ、トップフォームを取り戻せなかった最大の要因は、昨年10月に負った筋肉系のケガが尾を引いてしまったことにあった。ロジャーズ監督からも実力は評価されているだけに、来シーズンはトップフォームをキープすることが期待される。

ケガが重なって2月途中から出番がなかったブライトンの三笘。今月行なわれる日本代表戦のメンバー招集も見送られた ケガが重なって2月途中から出番がなかったブライトンの三笘。今月行なわれる日本代表戦のメンバー招集も見送られた

負傷によって力を発揮できなかったという点では、ブライトン(イングランド)の三笘 薫も同じだった。

昨シーズンは不動の左ウイングとしてリーグ戦33試合に出場し、リーグ戦で7ゴール5アシストを記録した三笘だったが、今シーズンは19試合で3ゴール4アシスト。個人成績を大きく下げてしまう結果となった。

もっとも、トップフォームだったシーズン前半戦の三笘は、申し分のないパフォーマンスを見せていたのも事実。自慢のドリブル突破から数々のチャンスを生み出してゴールとアシストを量産。プレミアリーグ屈指のドリブラーとして昨シーズン以上の評価を集めていた矢先、状況が暗転。原因は、度重なる負傷だ。

昨年11月と12月に2ヵ月連続で負傷を負った三笘は、リハビリを継続しながら日本代表としてアジアカップに参戦すると、なんとか決勝トーナメントの2試合に途中出場。

ところが、日本代表が準々決勝で敗退したことでブライトンに戻ると、その直後にまたしても負傷。結局、その負傷から復帰できないまま、シーズンの約半分を棒に振ることとなってしまった。

もちろん、三笘がどれだけの実力の持ち主なのかは誰もが知るところなので、評価が下がったわけではない。コンディションさえ戻れば、来シーズンはリベンジを果たしてくれるはずだ。

最も厳しい状況に陥ったのは、ドイツに渡って10シーズン目を迎えた33歳の原口元気だろう。

昨シーズンの冬に現在所属するシュトゥットガルトに加入した原口は、即レギュラーに定着して新天地でも順風満帆かと思われた。

ところが、去年4月にセバスティアン・ヘーネス現監督が就任してから序列が低下。加入2年目の今シーズンもリーグ戦の出場はわずか2試合と、ほぼ戦力外という厳しい状況から脱出できないまま、シーズンを終えることとなった。

日本代表としては2018年ロシアW杯に出場し、通算74キャップを誇る原口が、過去9年でこれだけ長い時間をベンチで過ごした経験はなかった。それだけに、今シーズンの状況は屈辱だったに違いない。すでに契約満了によりシュトゥットガルト退団が発表されており、今夏は新天地探しに奔走することになる。

果たして、厳しい状況に立たされている日本人選手たちは、来シーズンにどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。復活に期待したい。