オグマナオトおぐま・なおと
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。
良くも悪くも流れが変わり、今年もさまざまなドラマが生まれたプロ野球交流戦。3週間の激闘で生じた数々の"異変"を野球評論家のお股ニキ氏と共に振り返る! 【プロ野球 交流戦"異変"ワイド・第2回】はソフトバンクと日本ハム。*成績は6月11日時点
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パ・リーグを独走中のソフトバンクに衝撃が走ったのは交流戦序盤の5月31日だった。主軸打者の柳田悠岐が走塁中に右太もも裏を痛めて途中交代。全治約4ヵ月と診断され、今季レギュラーシーズン中の復帰は絶望的と報じられている。
離脱時点で打率.293、打点35は共にリーグ2位につける好調ぶりを見せていただけに、独走中のチームへの影響も大きいのかと思いきや、お股ニキ氏は「柳田のいる打線が100とすれば、離脱後の今の打線は97くらい。精神的な影響は小さくないが、致命的なものではない」と語る。
確かに、柳田離脱後もチームは2勝1敗ペースを維持しているが、なぜ影響が出ないのか。
「柳田は2019年にも走塁中に肉離れを起こして長期離脱していますが、あの頃のほうがチームに与えるマイナスの影響は大きかった。35歳になった現在も、柳田はリーグ屈指の存在で数字もしっかり残せていましたが、2019年に比べれば今はそこまで依存度が高くない。このまま2勝1敗ペースを維持できれば、シーズン勝率6割8分は十分狙える。申し分ない強さです」
柳田不在でも強さが変わらないのは、もちろん12球団随一の層の厚さがあるからだ。
「代わりにライトを守る柳町達(たつる)が打率4割と活躍。そもそも、投高打低の今季は得点が入りにくいので打撃面のマイナスが小さく、防御率1点台にも迫る盤石すぎるソフトバンク投手陣なら、3点取れば勝機は見えます。むしろ、牧原大成と三森大貴(まさき)が相次いで離脱したセカンドの穴のほうがそれなりに痛手です」
オールスターファン投票でも"異変"が起きている。最終結果発表は7月2日とまだ先だが、5月21日以降、土曜日・日曜日を除いて毎日更新される中間発表において、日本ハム勢がDH以外の9部門で1位を占めているのだ。
「新庄剛志監督も『(第1戦の)開催地が(本拠地の)エスコンフィールドHOKKAIDOだから』と謙遜していましたが、今季いい状態なのは間違いなく、3年目でこの戦力を整えた点は評価されるべきです」
そう語るお股ニキ氏に注目選手を聞くと、まず名前が挙がったのは捕手の田宮裕涼(ゆあ)。打率.340でリーグ2位につける、今季ブレイク中の24歳だ。
「『この打撃の急成長ぶりはなぜ?』と本人に聞きたいほど、素晴らしいバッティングを披露しています。スイング軌道が横振りになってストレートに対応しやすくなったのだと思いますが、他球団の選手も田宮本人に話を聞きたいはずです」
続いて「もっと評価されていい存在」とお股ニキ氏が太鼓判を押すのは、田宮と同学年のショート、水野達稀だ。
「守備は以前から評価していましたが、今季は打撃面でも力強さが出てきて、プロ初アーチも記録。殊勲打も多いです」
その水野と共に三遊間を守るサード部門では、本来捕手登録の郡司裕也が1位に輝いている。
「もともと良かったバッティングを生かすためのサード挑戦。キャッチャーは速い球を捕るのがうまく、スローイングも正確なので、サードとファーストは向いています」
そして、得票数で両リーグ1位を独走中なのが万波中正だ。
「インパクトは昨季ほどではないですが、逆に言えばそれだけの安定感とネームバリューがあるということ。今や球界を代表する選手のひとりになりました」
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。