山本萩子やまもと・しゅうこ
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。
みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。ペナントレースもだんだんと順位が固定されつつありますが......いやいや、ここからです。
先日の6月23日のヤクルトvs巨人戦で、試合の勝敗を左右する大きなプレーがありました。5回表のヤクルトの攻撃。一死一・二塁、二塁ランナーが村上宗隆選手、一塁ランナーがサンタナ選手という場面で、打席に立った山田哲人選手が2球目をフルスイングしました。
打球は大きなアーチを描いてセンターの左方向へ。フェンスに当たるかと思われましたが、巨人のセンター、ヘルナンデス選手がジャンピングキャッチしました。
その時、二塁ランナーの村上選手が飛び出してしまっていてアウトになり、併殺となってしまいました。1アウトでしたから、基本はいつでも塁に戻れるハーフウェー(塁間の中間地点)で状況を見極めるのが定石ですが、打球の行方を見誤ってしまったんですね。ヤクルトの追い上げムードが一変したこのシーンで強く印象に残ったのは、エルナンデス選手の守備範囲の広さ。足が速くて、大きい!
センターは、さまざまな能力を必要とされるポジションです。守備のうまさはもちろん、足の速さ、判断能力、肩の強さ、そしてリーダーシップも。
センターの守備範囲は、いわゆる外野を3分割したものとは違って、ライトやレフトのフォローも必要になります。特に、打撃に特化した外国人選手などを両翼に起用する場合は、広く動き回らないといけません。
外野には序列があるんだそうです。ボールを追って交錯しそうな時は、基本は声をかけ合いながらですが、最終的にどちらが取るかはほぼ決まっているとのこと。最終的にセンターがフライをキャッチすることが多いイメージもありますね。ほぼライトの位置まで走ってキャッチして、記録上はセンターフライになる。そんなことも日常茶飯事です。
センターで大事な必要な能力のひとつは「打球の判断」です。これは、記録だけではわかりづらいのですが、俗に言う「1歩目」というもので、どんな打球かを早く判断すればするほど、いち早く捕球体勢に入れます。どれだけ足が速い選手でも、その判断が遅いと能力を存分に生かすことができません。
センターがどれだけ難しいポジションなのかは、開幕スタメンを勝ち取るルーキーがほとんどいないことからもわかります。今季は巨人のドラフト3位・佐々木俊輔選手はセンターで開幕スタメンだったのですが、なんと86年ぶりだったそうです。そんな佐々木選手も、現在はエルナンデス選手にポジションを譲る形で、レフトで出場することが増えています。
センターは、もちろん肩が弱くてはいけませんが、必ずしもチームで一番の強肩ではない場合もあります。強肩の選手はライトに配置されることが多いのですが、一塁にランナーがいる場面でライト前ヒットを打たれた際、ランナーが三塁に進むのを防ぎやすい、といった狙いもあります。
最近、特に注目されているライトは、日本ハムの万波中正選手。その強肩で何度もピンチを救い、「送球だけでお金が取れる選手」とも評価されていますね。
一方でセンターに求められるのは、打撃も含めた総合力だと思います。
セ・リーグでは多くの球団が、打線の一番にセンターの選手を起用しています。巨人のエルナンデス選手は中軸を担っていますが、走って、打って、守って、まさに走攻守すべてにおいて高いレベルにある選手がセンターを任されることが多いですね。
個人的には、ヤクルトの塩見泰隆選手がセンターの理想系なのですが、現在は怪我で離脱しており、思ったような活躍できていないことが残念でなりません(もちろん、一番悔しいのはご本人だと思います)。
野球を観戦している時に、私たちがセンターを目で追うのは、投手がボールを投げ、打者がそれを打ち、打球の行方を追うとそれをセンターがキャッチする、という場面が多いと思います。ただ、センターの守備は左右とのバランスを取ったり、プレーごとに他の外野手に指示を出したり、打球の行方を予測して細かくステップを踏んだりと、実は常に動き続けているんです。
別のポジションの選手もワンプレーごとにさまざまな動きをしていますが、試合を観る際に、センターの動きだけに注目するのも面白いと思います。特にランナーが二塁にいる時、センターをじっと見るのが個人的にオススメです。センター前ヒットが出たらそれを拾い上げて、迷うことなく腕を振り、本塁に突っ込むランナーを捕殺。これほど刺激的なシーンはないと思います。
ぜひ、一度お試しください。それではまた来週。
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。