なでしこジャパンの主軸・長谷川唯選手(左)に中川絵美里が聞いた なでしこジャパンの主軸・長谷川唯選手(左)に中川絵美里が聞いた

この選手をおいて、現在のなでしこジャパンは語れない。英国の名門マンチェスター・シティWFCでは、チームの主軸を務め、身長157㎝と小柄ながら抜群の読みの鋭さとテクニックで世界中から注目を集める長谷川唯(サッカー日本女子代表MF/マンチェスター・シティWFC所属)である。

東京五輪2020、そして昨年のW杯は悔しさしか残っていないと語る彼女が、「すべてを出し切りたい」というパリへの思いとは――。ニュースキャスター・中川絵美里が聞いた。

■五輪直前遠征で果敢にトライ&エラー

中川 いよいよパリ五輪が目前に迫りました。5月31日と6月3日にはスペイン遠征でニュージーランドと親善試合を2度行ない、連勝。手応えはいかがですか?

長谷川 正直、ちょっと難しい試合になってしまいました。

第1戦は、相手がやや下だと感じながらも、なかなか点を決められないところが本大会でありえるシチュエーションだな、と。第2戦は、先発7人を入れ替えるというチャレンジをした中で守備面での修正に追われることになってしまい、前半に失点もありました。

中川 しかし、後半5分には浜野まいか選手(FW/チェルシー・英)の同点弾、2点目は長谷川選手の電光石火のアシストで、結果としては4-1の逆転勝利となりました。

長谷川 前半で先制されるという展開は本来ならば絶対に避けないといけないですが、パリへ行く前にそうした難しい状況をひっくり返す試合ができたという点で、ポジティブにとらえたいです。

中川 今のなでしこジャパンは確実に決められるストライカーやウインガー、トップ下などさまざまなタイプのフィニッシャーがいるのが強みだと感じます。

長谷川 はい、個人技に秀でた選手がたくさんいますので、試合ごとに誰が得点を決めるかわからないぐらいです。そういう点では心強いですね。

それに、選手間でいい意味での競争心が働いていると感じます。浜野選手や千葉玲海菜選手(FW/フランクフルト・独)ら、普段出場機会の少ない選手たちがしっかりゴールを決められたのは、チームにとって刺激になったと思います。

長谷川 唯

中川 チーム全体での熟練度というのはどのくらい感じられましたか?

長谷川 今までやったことのない守備の形などもチャレンジしたので、従来の戦術にプラスアルファというよりも、まったく新しい型を取り入れた状況だったんです。

だから当然エラーも多かったし、見ている方たちからすれば、物足りなさやフラストレーションを感じたかもしれないです。でも、本大会の前にエラーを積み重ねたことで修正ができましたし、クリアできたという実感があります。

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高橋史門

高橋史門たかはし・しもん

エディター&ライター。1972年、福島県生まれ。日本大学在学中に、『思想の科学』にてコラムを書きはじめる。卒業後、『Boon』(祥伝社)や『relax』、『POPEYE』(マガジンハウス)などでエディター兼スタイリストとして活動。1990年代のヴィンテージブームを手掛ける。2003年より、『週刊プレイボーイ』や『週刊ヤングジャンプ』のグラビア編集、サッカー専門誌のライターに。現在は、編集記者のかたわら、タレントの育成や俳優の仕事も展開中。主な著作に『松井大輔 D-VISIONS』(集英社)、『井関かおりSTYLE BOOK~5年先まで役立つ着まわし~』(エムオンエンタテインメント※企画・プロデュース)などがある。

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