3月に始まったペナントレースも間もなく折り返し。チームによって成績は悲喜こもごもです。

パ・リーグでは、首位のソフトバンクと最下位の西武は27ゲーム差。セ・リーグでは、我がヤクルトも首位と8.5ゲーム差(7月11日現在)がついており、来シーズンに思いを馳せたくなってしまう日もありますが、こんなとき、下位に沈むチームのファンを慰めてくれるのが過去の大逆転劇です。

過去最大のゲーム差から優勝したのは、1963年の西鉄。その差は最大14.5ゲーム。最多勝のエース稲尾和久さんをはじめ、中西太さんも監督兼任として活躍するなど、歴史に残る大逆転劇を完結させます。ちなみに、当時セカンドを守っていたのは、元オリックスの仰木彬さんでした。

1996年の巨人は、首位の広島との11.5ゲーム差をひっくり返しました。長嶋茂雄監督の掲げた「メークドラマ」というスローガンは流行語にもなりましたね。この年のシェーン・マックさん、松井秀喜さん、落合博満さんのクリーンナップは驚異的でした。

最近だと、2022年のオリックスが最大11ゲーム差を逆転して優勝を勝ち取りましたね。こうして過去の事例を調べていると、我がヤクルトに希望の光が灯ったような気がしますが、西武のみなさんにも明るい材料があることをお伝えさせてください。

逆転優勝の最大ゲーム差は14.5ですが、これは7月12日時点での数字でした。7月後半から8、9月と連勝を重ねて優勝をもぎとった西鉄はもちろん素晴らしいのですが、私が注目したのは2011年の中日です。

この年の中日は、最大で首位ヤクルトと10ゲーム差をつけられました。それがなんと8月3日時点の数字で、そこから優勝したんです。

最大ゲーム差からの逆転優勝というテーマではあまり話題になりませんが、記録に残らない偉業を達成したチームを率いたのは、名将・落合監督でした。落合さんは1996年メークドラマの立役者でもあります。ちなみに、チームの逆転劇にどう影響したかはわかりませんが、落合監督はシーズン途中で契約満了による退任が発表されています。

今週もお疲れさまでした。乾杯! 今週もお疲れさまでした。乾杯!

もうひとつ、明るい話題を。

その昔、クライマックスシリーズ導入前夜、どこかの選手か監督が「3位にすべりこんで優勝するのが効率がいい」というニュアンスの発言をしていたと記憶しています(覚えている方いらっしゃれば教えてください)。確かに3位に入れば、優勝の可能性は残ります。

となると、3位までのゲーム差が大事。西武と3位オリックスの現在のゲーム差は14.5。まさに最大の逆転劇と同じ数字ではありませんか。それに、まだ7月。あれ、まだまだ行けそう!? 8、9月の快進撃に期待が高まるばかりです。

では、どうしたらチーム成績が改善するのでしょう。

もちろん簡単なことではありませんが、MLBを例にとると、昨年にワイルドカードから、22年ぶりにナショナルリーグ優勝を果たしたダイヤモンドバックスが快進撃を見せたのは、スモールベースボールを貫いたことによるもの、という意見が多くあります。ヤンキースのように大打者を揃えたチームはやらない野球に徹したことで、並みいる強豪チームを翻弄。ワールドシリーズでは強打のレンジャーズを相手に、敗れはしたものの健闘しました。

これも、ある意味で開き直りですよね。できないことはやらない。背伸びをしない。できることを精一杯やる。その結果、優勝という最高の結果を手に入れたダイヤモンドバックスから学ぶことは多いと思います。

この先、ヤクルトも西武も、打線の奮起はもちろん、投手陣の踏ん張りが肝心です。夏場は苦しい試合が続くと思いますが、7月の時点でも夢があると思えば、観戦にも力が入るというもの。

ゲーム差なんて気にせず、これからも応援を楽しんでいきましょう。目指せ優勝。それではまた来週。

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山本萩子

山本萩子やまもと・しゅうこ

1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。

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