パリ五輪のサッカーU-23日本代表をフカボリ! パリ五輪のサッカーU-23日本代表をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第103回のテーマは、パリ五輪のサッカーU-23日本代表について。パラグアイ戦、マリ戦を2連勝で飾り、早々とグループリーグ突破。首位通過もほぼ確実となった日本代表の2試合の戦いぶりを福西崇史が解説する。

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パリ五輪が開幕し、日本代表は初戦のパラグアイ戦を5-0、第2戦のマリ戦を1-0で2連勝を飾り、グループリーグ突破を決めました。五輪本番という大きなプレッシャーのなかで、求められた結果を最初の2戦でしっかりと出せたことは賞賛に値すると思います。

グループリーグ突破を早々と決めたことで、イスラエル戦はある程度余裕を持って戦うことができると思います。先発組のローテーションで体力温存ができることもそうですが、イスラエル戦までの2日間はここまで大きかったプレッシャーや緊張感から少し解放され、また新たな緊張感や集中力を高めるためのいい時間にできると思います。

初戦のパラグアイ戦は、前半24分にパラグアイのウィデル・ビエラが一発退場となったことが試合を大きく決定づけました。ただ、その退場の前に、前半19分に日本は非常に良い形でMF三戸舜介が先制点を挙げました。それによって自分たちのペースで試合を運ぶことができ、相手が一人少なくなったことで余計に良い流れを作ることができたと思います。

南米予選1位のパラグアイ相手にこれだけ自分たちのペースで試合ができたのは、やはり直前にフランスと強化試合ができたことが大きく影響していたと感じました。

フランス戦ではプレッシャーが早くて、相手のことを考えることなくパスを出していたのが、パラグアイ戦ではしっかりと相手を見てタイミングよくパスを出せていました。アフター気味のチャージなど、南米独特の激しいプレーはフランスとは違いましたが、プレーの精度やスピードに関してはフランス戦を経験したことで、戸惑うことなく冷静に入ることができたと思います。

第2戦のマリ戦では三戸、MF平河悠に代わって、MF荒木遼太郎とMF山田楓喜が先発しました。メンバーが代わってもキープ力のある選手が揃っていて、その良さを生かして前で起点が作れたことが良かったと思います。

それは決勝点の場面でもよく表れていました。基本的に細谷真大は前線でのキープを求められていて、あの場面でも体を張ってよくキープしたことで全体を押し上げることができました。その後の力強いドリブルが効いていたことは言うまでもありません。

細谷が突破して運んだことで、後ろの三戸、佐藤恵允が中へ侵入し、最後に山本理仁が詰めることができました。山本はあの時間帯、疲労でかなりキツそうでしたが、あの場面で詰め切った判断力と気力は本当に素晴らしかったと思います。

そしてチームを救ったGK小久保玲央ブライアンの活躍。後半18分、DF西尾隆矢の引いた守備で相手にシュートを打たれてしまいましたが、足でいくか、手でいくか判断の難しいシュートを見事に弾いてくれました。あれが決まっていれば流れは大きくマリに傾いていたと思います。

それからアディショナルタイムのPKでの小久保の堂々たる立ち振る舞い。あれはU-23アジアカップ決勝、ウズベキスタン戦でのPKストップの経験が大きく影響していたと思います。自信満々に立つ小久保の雰囲気に相手のシェイクナ・ドゥンビアは飲まれていたと思います。もしシュートが枠に飛んでいたとしても小久保は完璧にコースを読んでいたので止めていたはずです。あの自信と集中力は見事でした。

小久保は守備だけではなく、攻撃面でも非常に効いていました。マリがマンツーマンで来ていたのでビルドアップで高井幸大と西尾がボールを持ったときに、なかなかパスコースがない場面がありました。

そういったときに相手の2トップに対して、小久保を入れた3人で数的優位を作ってある程度余裕を持ってパスを回し、その間にサイドバックが高い位置を取ったり、中盤がローリングしてスペースを作ったりと、ビルドアップのパスコースを探すことができました。

2試合通じて良かったのは、攻守の切り替えの早さ。ボールを失ったときに素早く周囲の選手がボールを奪いに寄せ、危ないエリアにカバーに入り、良い位置でボールを奪えば鋭くカウンターを狙うことができました。

とくにキャプテンのMF藤田譲瑠チマの攻守に渡るパフォーマンスは圧巻でした。危機察知能力が高く、遅れそうな場面でも判断・予測が早いのでギリギリで間に合うし、イエローカードをもらっていても積極的な守備で相手のチャンスを潰してくれました。彼のプレーでチームを大きく引っ張ってくれたと思います。

攻撃でも鋭い縦パスが非常に効いていたし、格の違いを見せつけるほどのクオリティで、藤田がアンカーにいることで山本も非常にやりやすかったと思います。

気になった点を挙げるとすれば守備ラインの守りの部分。ここまで失点をゼロで抑えられていることはチームにとって非常に大きな自信になっていると思います。ただ、1戦目、2戦目を通じて守備での間合いの寄せ方、下がり方のメリハリはもう少し早く判断しなければいけないと感じました。

裏を取られるのが怖いというのはわかりますが、チャレンジ&カバーで一人は球際に激しくいかなければいけない場面があります。2戦ともにそこで行けずに遅れてしまう場面がありました。パラグアイ戦では相手が一人少なかったことで遅れても対応できましたが、マリ戦ではチャンスを作られました。細かい部分ですが、メダルを狙うのであればここから修正する必要があると思います。

まもなくイスラエル戦を迎えますが、得失点差的に1位通過がほぼ確実という状況で、日本がどんなメンバーで臨むか。タイトなスケジュールの大会なので、決勝トーナメントを見据えてある程度のターンオーバーは大事なことです。

日本はこの2戦で誰が先発し、誰が途中から出てもチームのクオリティが落ちない厚い選手層を見せてくれています。2連勝してできたアドバンテージをうまく活用してイスラエル戦に臨んでもらいたいと思います。

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福西崇史

福西崇史ふくにし・たかし

1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm。1995年にジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年~2007年はFC東京、2007年~2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している

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