サトテルこと佐藤輝明。アレンパの行方はこの男にかかっている サトテルこと佐藤輝明。アレンパの行方はこの男にかかっている

セ・リーグの首位争いで広島、巨人に差をつけられた阪神。阪神が2連覇=アレンパするために克服すべき問題や明るい兆候など、さまざまな要素を分析した。

■昨年と違い、突き抜けられない理由

セ・リーグで広島、巨人に遅れをとっている阪神。

振り返れば、後半戦開始直後に阪神ファンは"アレンパ"(2連覇)を確信したに違いない。前半戦に苦しんだ貧打が嘘のように確変状態に入り、7月21日からの10試合で9勝と勝率9割をマークした。

しかし、その後、投手陣や守備にほころびが見え始め、チームは崩れて7戦を2勝5敗と大失速。その後も負けが込んでいる。はたしてアレンパの可能性はあるのか? 全国紙の阪神担当記者に分析してもらった。

まずは、昨年のようにペナントレースを突き抜けられない理由について。

「エラーの多さですね。特に佐藤輝明。8月12日までの直近6試合中4試合で5失策。エラーした4試合は1勝3敗と見事に勝敗に直結するエラーをしている。このエラーとともに、後半戦開始直後はあんなに好調だった打撃も急降下。

本人も、今年の前半戦を振り返るインタビューで守備を安定させることがバッティングの調子を上げていくことにつながるという趣旨のことを語っていました。

ただ、エラーをしたときはコーチと改善策を話し合って、特守(守備の特別練習)を受けるなどしています。周りの意見を聞くようになって、以前みたいにエラーをしても『われ関せず』のような態度は消えました。

直近の試合でも『チームが負けたのは、自分のエラーが原因』と責任をすべて負うかのように、しんみりと反省を口にしていました。チームを自分が引っ張っていかねばという意識が出てきているのは、以前と違う明るい兆しです」

投手陣の脆弱さも不安要素のひとつと語る。

「昨年優勝したときの投手陣は、先発投手が早い回で崩れても、ビハインドで出てくる投手がしっかりゼロで抑えていました。それに打撃陣が呼応して逆転勝ちする試合がけっこうあったんです。

昨年は島本浩也や岩貞祐太らがこの部分を担っていたんですが、今季は故障したり、調子を落としていたりで、うまく機能していない。今季ここを任されている漆原大晟(うるしはら・たいせい)、富田(とみだ)蓮らがピリッとせずに追加点を献上してしまうケースが目につきます。

この解決策は、とにかく先制することですね。先制して、最初からリードすると勝ちパターンの強力投手リレー(桐敷[きりしき]拓馬、石井大智[だいち]、ゲラ、岩崎優[いわざき・すぐる])が待ち構えていますから。こういう状況をより多くつくることでしょう」

打線面での不安要素についても続ける。

「昨年の阪神打線の特長は7番キャッチャーの後、8番・木浪聖也のバッティングが脅威だったこと。塁に残ったクリーンナップのランナーをかえして得点。また、自らも出塁して1、2番の近本光司、中野拓夢(たくむ)のヒットでさらにベースを踏む。つまり、7、8番の好調な打撃が切れ目のない打線となって、どのバッターからも得点できていました。

しかし今季は、木浪は骨折リタイアがあるなど万全ではない。もうひとりのショート小幡(おばた)竜平もケガで離脱しています。小幡はバッティングの調子が上がっていたときのケガなのが残念です。なんとか木浪とキャッチャーの梅野隆太郎に踏ん張ってもらうしかないのが現状です」

■アレンパへの明るい材料

一方で、明るい兆しもあるという。

「今季はクリーンナップの佐藤、大山悠輔、森下翔太の3人とも2軍落ちを経験しています。これは力がないからもう使わないという意味ではなく、このままだとダメだ。ここを変えるともっとやれる。という期待の裏返しの2軍落ちです。その期待どおり3人とも2軍から戻ってきたときは別人のように好調になっていました。

そして今、その2軍落ちを経験しているのがキャッチャーの坂本誠志郎。確かに、監督が指摘していた配球ミスを繰り返したという面はありましたが、力がないからという理由の2軍落ちではないです。

ちょっと休んで、頭を冷やしてこい。みたいな感じでしょう。そもそも、坂本は阪神の選手の中でも野球の考え方や取り組みがしっかりしている。いろんなところに気配りもできる男で人望も厚いです。

監督はあえて、勝負の9月に合わせて坂本をリフレッシュかつ精神的な刺激として2軍落ちさせたのではないでしょうか。そして、勝負のときに力を存分に発揮してくれる姿が目に浮かびます」

現在2軍で調整中の坂本誠志郎。リフレッシュ、再覚醒して終盤戦に戻ってきてくれるはずだ 現在2軍で調整中の坂本誠志郎。リフレッシュ、再覚醒して終盤戦に戻ってきてくれるはずだ

投手陣にも光明が。

「髙橋遥人の復活は大きいです。トミー・ジョン手術ほか複数の手術から1009日ぶりに1軍マウンドに帰ってきました。

阪神の左は大竹耕太郎や伊藤将司(まさし)ら軟投派が多い中、本格派の左が戻ってきてくれたことは明るい材料。復帰戦でも首位の広島打線を5回0点に抑えてくれました。広島キラーとして終盤に活躍してくれるかもしれません。

また、8月中旬の9連戦で巨人は先発が無理をして中5日で回さないといけなかったところを阪神はこれまでどおり、中6日のローテでいけたのも、髙橋が中に入って投げてくれたおかげです。勝負どころは8月末から9月と考えて、まだムチは入れず、投手陣に余力があるのも好材料です」

ズバリ、アレンパのキーマンは?

「佐藤輝明以外ないです。監督が彼を4番に置いているということは佐藤で戦うと宣言しているようなものです。岡田彰布監督は阪神の監督をやってきた過去7年間で4番は金本知憲、大山と佐藤の3人しか起用していません。途中、近本や森下を緊急事態的に据えたことはありましたが、監督が4番に指名した選手には重みがあるんです。

監督は今季途中の7月中旬から4番を大山から佐藤に代えました。これは佐藤に対して、おまえが責任を持ってチームを引っ張れというメッセージであり、かつ、ほかの選手に対して、今季の阪神は佐藤中心で行くぞという気持ちを発信したんだと思います。

実際、佐藤の最近の野球に取り組む姿勢は変わってきていますし、後半戦のスタートに7連勝したのも佐藤のバッティングが立ち直ったおかげ。直近で負けが込んでいるのも佐藤のエラーが原因。

良くも悪くもチームを左右するのは佐藤なんです。佐藤が打ちまくれば優勝ですし、守りから崩れて打てないときは、アレンパはないでしょう」

混戦が予想される終盤戦から目が離せない。