パリ五輪の男子決勝は地元フランスとスペインの対戦となり、激しい打ち合いの末、スペインが5-3で勝った。
スペインはEURO(欧州選手権)に続いて五輪でも優勝。再びの黄金時代到来といった感じだ。対するフランスも若い選手らしくない体つきで、攻撃の迫力がスゴかったね。金メダルのかかった決勝にふさわしい両チームだった。
とはいえ、両チームとも五輪世代のベストメンバーを招集できたわけではない。オーバーエイジ枠(OA)もスペインは五輪世代に近い年齢の選手を招集し、フランスもワントップを務めたマテタはA代表でプレーした経験がない。それでもあれだけのパフォーマンスを見せた。
各国とも制限のある中でメンバーをやりくりしていたわけで、準々決勝でスペインに敗れた日本は出場16チーム中、唯一OAなしだったといっても、なんの慰めにもならないよね。相手が悪かったといえばそれまでだけど、日本サッカーの盛り上がりという意味で、もうひとつ勝ってほしかった。
今大会の日本の戦いぶりを見て一番気になったのは、ボールを回せて、キープもできるけど、いざ攻めるとなると一本調子だったこと。同じようなサイドからの仕掛けを繰り返していた。
誰が出ても同じサッカーができると言われていて、実際、その通りに同じタイプの選手が多かったけど、相手が日本対策をしてきたときに臨機応変に対応できる個や組織の力はなかった。
フランスなら劣勢になっても個の力で流れを変えることができるし、スペインは相手の出方を見ながら、それに対応して速いパス回しで崩してしまう。日本には個性があって途中出場で流れを変えるようなスーパーサブ的な選手がいなかった。そこは選手層が薄かったと認めるしかない。
いずれにしても、五輪はもう終わったこと。彼らの次の目標はA代表。9月から北中米W杯のアジア最終予選が始まる。
個人的にA代表に推薦したいのは、まずGK小久保。アジア最終予選(U-23アジア杯)から五輪本番までの活躍は素晴らしいのひと言。一番名前を覚えられた選手だよね。今のA代表には絶対的なGKがいないし、チャンスを与えていいと思う。
ふたり目はボランチの藤田。コンスタントにいいプレーを見せていた。守備よりもチャンスメイクに優れ、ゴールにつながるラストパスを出せる。遠藤とダブルボランチを組ませたら、攻撃力がより生きるんじゃないかな。
3人目は右サイドバックの関根。菅原、毎熊、橋岡とライバルの多いポジションだけど、彼らと競争させたい。サイズ(187㎝)があって、大柄な外国人相手にも当たり負けしない。経験を積めば伸びる可能性を持っている。
大会全体を振り返ると、前述したようにどこの国もメンバー招集に苦労していた。また、昔は五輪でアピールしてビッグクラブへの移籍を狙う流れもあったけど、今は選手が出場を断ることもある時代。サッカーにおける五輪のステータスは確実に下がった。寂しい気持ちもあるけど、認めざるを得ない。この状況は4年後のロス五輪でも変わらないだろう。
日本は今後、五輪をどう位置づけるのか。現実的ではないのに「目標は金メダル」と言い続けるのか。それとも割り切って育成の場とするのか。今から考え、準備すべきだ。