オグマナオトおぐま・なおと
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。
ペナントレースはすでに4分の3を消化し、"最終コーナー"を回って佳境に入ったプロ野球。果たして、セ・パで繰り広げられる白熱の上位争いを制するのはどの球団なのか? 野球評論家・お股ニキ氏が徹底展望する!【プロ野球セ・パ上位争いワイド②】
7月30日に優勝マジックを点灯させたソフトバンク。投打共に隙がなく、得失点差178という圧倒的強さでマジックを着実に減らしている。この調子であれば、2017年にソフトバンクが記録したパ・リーグ最速優勝(9月16日)を更新する可能性もある。
この状況を野球評論家のお股ニキ氏は「毎年70億円もの人件費をかけて優秀な選手が在籍し、あれだけの設備投資をして、データもスタッフも整備しているのだから、やるべきことをやれば結果はついてくるもの」と語る。
では、小久保裕紀監督1年目で象徴的なことは何か。お股ニキ氏は「右の強打者不在の補強ポイントに即した山川穂高獲得」「ドラフト正常化で次々と戦力化」「倉野信次投手コーチの3年ぶり復帰」を挙げる。
本塁打、打点の2部門で1位を独走する山川の影響力の大きさは言わずもがな。山川に牽引されるように打線は好調で、柳田悠岐の故障不在を感じさせない。
「1番、2番が出塁しなくてもなんとかなってしまうのが今のソフトバンク。近藤健介の後を打つ6番が課題でしたが、3年目の正木智也が打率3割超で定着しつつあります」
打線を語る上では甲斐拓也の"覚醒"も見逃せない。
「8月は打率4割に迫る勢い。代打起用でも158キロのストレートを痛打してみせました。そして、捕球技術のフレーミングも配球も良化。もともとブロッキングには定評があるし、肩は若干衰えが見えるものの、まだまだ刺せる技術がある。海野隆司との併用バランスも良く、負担が減った効果かもしれません」
さらに、「ドラフト正常化」で戦力がますます充実した。
「一時期、ドラフトで素材型を狙いすぎた反省から、選手の力量をしっかりと見るようになった印象です。武内夏暉(西武)は重複指名で外しましたがやはりいい投手でしたし、代わって1位指名した前田悠伍は将来性抜群。2位の岩井俊介、5位の澤柳亮太郎、6位の大山凌が即戦力として今季早速活躍しています」
澤柳は肘の故障で離脱してしまったが、大山はポストシーズンに向けても貴重な戦力になりそうだという。
「先発陣は有原航平とリバン・モイネロ、スチュワート・ジュニアの3枚が盤石。そのほかにも大関友久や大津亮介、石川柊太らがそろう状況で、大山が第2先発の役目を果たせば、さまざまな展開に対応できます」
その投手陣を語る上で外せないのが倉野コーチの存在だ。
「投手の主だった顔ぶれは昨季とほぼ一緒。変わったのは配置と配球、各投手の球質です。倉野コーチがほかのコーチとも連携し、捕手や野手陣との意思疎通が向上。配球も改善し、盗塁阻止や牽制アウトも増えています」
こうした改善点によって、柳田不在後も2勝1敗ペースを維持できているわけだ。
「大型連勝がない代わりに、各カードはほぼ2勝1敗。序盤リードすればそのまま勝ち切るし、負けていても最後に何か起こるんじゃないか、と期待感もある。選手たちを酷使しない運用なので故障のリスクも少なく、今後失速する要素もほぼありません」
4年ぶりの王座奪還へ、いよいよカウントダウンだ。
*成績は8月18日終了時点
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。