里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール! 日本を代表するレジェンドプレイヤーの2人が、野球からの学びをライフハックに翻訳、「生き抜く知恵」を惜しげもなく大公開。連載の第19回では、「人間の生きる理由」に関する考え方に迫ります!

「人間の生きる理由」について語った里崎智也氏(右)と五十嵐亮太氏(左) 「人間の生きる理由」について語った里崎智也氏(右)と五十嵐亮太氏(左)

■夢を追い続けてもいい条件は?

――今回も「夢」について伺います。「プロミュージシャンになりたい」「演劇で食べていきたい」など、若い頃からの夢を追い続けた結果、辞めどきを失ったしまう人、いつまでも夢をあきらめきれずにズルズルときてしまった人もいると思います。そういう人たちについて、おふたりはどう思いますか?

五十嵐 その人が独身かどうか、によって変わってくるんじゃないですか? もし奥さんや子どもがいて、家族に迷惑をかけてしまうことがあれば「いつまでも夢を見ていないで、きちんと現実を見据えて、家族を泣かせるようなことはするな!」って言いたい。でも、もし誰にも迷惑をかけていないのなら「そのまま続ければいいんじゃない?」ってアドバイスしますね。

里崎 僕ならば、「死ぬまで好きなことを続ければいいんじゃない?」ってアドバイスしますね。たとえ独身であろうと、結婚していようと、本人がやりたいのならやればいい。続けたいのならとことん続ければいい。そう思いますね。

五十嵐 でも最低限、家族に迷惑をかけずにやってほしいな。きちんと働いて家族を養いながら、その上で夢を追いかけるならば僕も賛成だけど、もしもそうじゃないならば正直、賛成できないですね。

里崎 でも、若いときからの夢だとしたら、奥さんもそれを知った上で結婚しているわけだし、子どもを作っているわけなんだから、家族として応援するしかない。そんな考え方もあると思うけどな。だから問題なのは、いきなり新たな夢を見つけて、後先考えずに突っ走ったりしたら家族としては大迷惑だし、「もっと冷静になったほうがいい」と思いますね。

五十嵐 確かに、「昔からの夢」なのか、「最近思いついた夢」なのかで、家族としての接し方も変わってきますよね。ただ、夢を追い求め続けるにしても、あきらめるにしても、それによって本人も周りもつらい思いをしてしまうことになるのは心配ですけど。

里崎 そういうときには、「人間の生きる理由」をあらためて見つめ直せばいいと思うな。

五十嵐 「人間の生きる理由」って、例えば?

■人間が生きるための理由は4つある

里崎 すごくシンプルなことだけど、人間が生きる理由は大まかに分けて「1.お金、2.家族、3.趣味、4.仕事」の4つだと思う。もちろんこれは順不同で、人によって優先順位は変わるけど、何か迷ったときにはこの4つの中で何が大事なのかを見つめ直すことで進むべき道が見えてくるし、生きるのがラクになると思う。

五十嵐 なるほど。確かに、だいたいこの4つが働く意味だし、生きる意味だとも言えますよね。人によって、「オレは趣味に生きる」という人もいるかもしれないし、「とにかく金だ」という人もいるかもしれない。それはその人の価値観だから、他人がとやかく言うことでもない。わかりやすい指標ですね。

里崎 人によっては、「とにかく金はいらないから、とことん趣味に生きたい」というように、この4つの中からひとつを徹底的に極める人もいるだろうし、ある人はこの4つに優先順位をつけてバランスよく生きていく人もいるかもしれない。亮太の言うように、それはその人の価値観だから他人がどうこう言うことじゃないし、それがその人にとって最高の生き方なんだろうから。

五十嵐 じゃあ、いくつになっても夢をあきらめられない人っていうのは、たとえプロデビューできなくても、あるいはデビューできたけど売れなかったとしても、とことんそれを突き詰めればいい。そうなりますね。僕としては、あくまでも「家族に迷惑をかけないでほしい」と思うけど、それは僕自身が「家族」に対する優先順位が高いからでしょうね。サトさんの場合は、どういう順番になりますか?

里崎 僕はお金ですね(キッパリ)。

五十嵐 答え、早っ(笑)。

里崎 お金があれば大抵のことはできるんで。そして、不幸も回避できるから。だから、どんな仕事でも引き受ける。

五十嵐 そこはやっぱりプレないですね。残りの家族、趣味、仕事については?

里崎 もちろん家族のことも考えているけど、家族を幸せにするためにもまずはお金。その上で、ゴールデンウイーク、夏休み、年末年始は最初から家族サービスの予定を空けておく。それ以外は仕事を優先する。そんなバランスになっていますね。亮太の場合は?

■「自分は何を大切にしているのか?」を知る

五十嵐 僕もやっぱりお金ですかね。でも、「1.お金」と「4.仕事」はほぼイコールと考えてもいいんじゃないですか?

里崎 いやいや、世の中には稼げない仕事もあるでしょ。いつまでも夢を追いかけ続けて、お金にならない仕事を続けている人はたくさんいるから。

五十嵐 確かに、そうか。でも、僕の場合は恵まれているからかもしれないけど、「ギャラが安いからこの仕事は受けない」とか、「ギャラがいいから、イヤな仕事でも受けよう」ということもないかな? そう考えたら、僕の場合はケースバイケースでバランスを取りながら生きているということになるのかもしれない。

里崎 さっきも言ったように、ひとつに絞るのもその人の生き方だし、4つを満遍なくバランスを取りながら生きていくのもその人の生き方。大切なのは、この4つ項目の中で「自分はどれを大切にしているのか?」「今は何を大切にすべきか?」と意識することで、それだけで極端に間違った選択はしなくなると思うけどね。

五十嵐 そうすれば、最初のケースにあったように夢を追い続ける夫のことも許せるかもしれないし、むしろ応援してくれるようになるかもしれない。友だち同士、恋人同士、家族同士でも、それぞれが何を大事にしているのか、優先順位はどれが高いのか、そういうことを理解していれば人間関係もスムーズに進むようになるかもしれないですね。

里崎 さっき言った4つの指針を持っていれば、他人からどうこう言われても、「これがオレの生き方なんだ」と堂々と自信を持つことができるようになるし、他人と比べて浮かれたり、落ち込んだりしたりすることもなくなる。とっても便利な考え方だと思いますよ。

――「人間が生きる4つの理由」、すなわち「人生に必要な4つの要素」、とても参考になりました。それがあれば、むやみに他人と比べて優越感を抱いたり、劣等感を抱くこともなくなりそうです。次回はその辺りについて伺います。改めて、次回もよろしくお願いします。

里崎五十嵐 了解です。次回もよろしくお願いします!
(連載第20回に続く)

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里崎智也

里崎智也さとざき・ともや

1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工(現鳴門渦潮)、帝京大を経て1998年のドラフト2位でロッテに入団。正捕手として2005年のリーグ優勝と日本一、2010年の日本一に導いた。日本代表としても、2006年WBCの優勝に貢献し、2008年の北京五輪に出場。2014年に現役を引退したあとは解説者のほか、YouTubeチャンネルなど幅広く活躍している。
公式YouTubeチャンネル『Satozaki Channel』 

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五十嵐亮太

五十嵐亮太いがらし・りょうた

1979年5月28日生まれ、北海道出身。1997年ドラフト2位でヤクルトに入団し、2004年には当時の日本人最速タイ記録となる158キロもマークするなど、リリーフとして活躍。その後、ニューヨーク・メッツなどMLBでもプレーし、帰国後はソフトバンクに入団。最後は古巣・ヤクルトで日米通算900試合登板を達成し、2020年シーズンをもって引退した。現在はスポーツコメンテーターや解説として活躍している。

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長谷川晶一

長谷川晶一はせがわ・しょういち

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターとなり、主に野球を中心に活動を続ける。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。主な著書に、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間 完全版』(双葉文庫)、『基本は、真っ直ぐ──石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)、『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『中野ブロードウェイ物語』(亜紀書房)、『名将前夜 生涯一監督・野村克也の原点』(KADOKAWA)ほか多数。近刊は『大阪偕星学園キムチ部 素人高校生が漬物で全国制覇した成長の記録』(KADOKAWA)。日本文藝家協会会員。

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