4月に4勝を挙げ、その後も活躍を続けるカブスの今永。メジャー1年目で2桁勝利を達成し、新人王候補に名が挙がっている 4月に4勝を挙げ、その後も活躍を続けるカブスの今永。メジャー1年目で2桁勝利を達成し、新人王候補に名が挙がっている

今季もMLBでは大谷翔平の圧倒的な活躍が際立つ。名門ロサンゼルス・ドジャースに移籍1年目で、8月下旬には史上6人目の「40-40(40本塁打・40盗塁)」をクリア。前人未到の「50-50」にも手が届きそうで、9月以降も大谷に注目が集まる日々が続きそうだ。

ただ、今季のMLBで活躍している日本人選手は大谷だけではない。「日本人プレーヤーの当たり年」と言っても過言ではない活躍を複数の選手が続けている(成績は現地時間9月1日現在。以下同)。

まずは、大谷と共にオールスターに選ばれた今永昇太。4年5300万ドル(約77億4000万円)の契約でシカゴ・カブスに入団した左腕は、4月に4勝0敗、防御率0.98という最高のスタートを切った。

『USAトゥデイ』のボブ・ナイチンゲール記者も「球界最大のサプライズ」と称賛する投球で、前半戦だけで8勝。日本人新人投手としては野茂英雄以来となるオールスター登板を果たした。

「本当に夢のような時間を今過ごしています。シーズンは長いですが、メンタル面においてその道のりをどう乗り越えるか、これまでの長いキャリアが役に立っています」

テキサスで行なわれたオールスターでそんな初々しい言葉を残した31歳は、後半戦も好投を継続している。8月24日(現地時間。以下同)に10勝に到達すると、球団新記録となる新人での148奪三振も達成。今永が先発した試合で、カブスは19勝6敗と内容は上々だ。今永は2024年最大級の〝お買い得選手〟として記憶されることになるだろう。

カブスの鈴木は2年連続で長打力を発揮。出塁率も高く、盗塁はメジャー初の2桁を記録するなど、足でもチームに貢献する カブスの鈴木は2年連続で長打力を発揮。出塁率も高く、盗塁はメジャー初の2桁を記録するなど、足でもチームに貢献する

今永のチームメイト、鈴木誠也もいいシーズンを過ごしている。メジャー2年目の昨季に打率.285、20本塁打という成績を残した鈴木は、今季も8月27日に19本目の本塁打を放った。シーズン20本塁打以上を記録した日本人選手は大谷、松井秀喜、鈴木の3人しかおらず、それを2年連続で達成する価値は大きい。

特に、日本人の右打者の20本塁打超えは初めてなだけに、もっと評価されてもいいはずだ。近年は強打者の指標として重宝されるOPS(出塁率+長打率)も2年連続で.800超えが期待できそうなこと、盗塁も自己最多の12をマークしていることなどからも、鈴木は3年目にして、メジャー有数のオールラウンダーという地位を確立したといっていい。

前半戦は苦しんだが、7、8月の打率は3割超えと復調したレッドソックスの吉田。得点圏打率も高く、勝負強さを発揮している 前半戦は苦しんだが、7、8月の打率は3割超えと復調したレッドソックスの吉田。得点圏打率も高く、勝負強さを発揮している

ボストン・レッドソックスの吉田正尚も、後半戦は絶好調で打ちまくっている。6月下旬までは打率.240以下で苦しんでいたが、オールスター以降は.339と爆発。

一時は.300に乗せ、打率で大谷を抜いて日本人トップに躍り出るなど、再びレッドソックス打線に不可欠な存在となった印象がある。復調の要因を吉田に問うと、シンプルに「より積極的に打つこと」だったという。

「全部を振り返ったときに、メジャーに来てからずっとファーストストライクが一番甘い。『(ボールを)見て、見て』だと、最終的にコースを散らされてしまう。それよりも最初のストライクをしっかりスイングできる準備をして、その中で見逃すのか、打ちにいくのかを決めていきたい」

そんな言葉どおり、最近の吉田はアグレッシブかつ豪快なスイングが目立つ。走者を置いた場面では打率.338、特に2アウトでの得点圏打率が.457と、今季は勝負強さも目立つ。5年9000万ドル(約135憶円)という大型契約を交わしたため、厳しい視線にさらされることも多いが、今年は吉田の評価回復のシーズンになっている。

シーズン中、ブルージェイズからアストロズにトレードで移籍した菊池。新天地では負けなしの3勝と、地区1位のチームを支える シーズン中、ブルージェイズからアストロズにトレードで移籍した菊池。新天地では負けなしの3勝と、地区1位のチームを支える

MLBではシーズン中、優勝を狙えるチームにトレードで獲得されることは大きな名誉とされる。トロント・ブルージェイズでの投球が認められ、今年のトレード期限にア・リーグ西地区1位のヒューストン・アストロズに移籍した菊池雄星もそのひとりだ。

ブルージェイズでは4勝9敗、防御率4.75と、一見するといまひとつの成績だったが、潜在能力を評価されてアストロズに獲得された。

移籍後には期待どおり、いや、期待以上の投球を続けている。8月31日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦では、7回1失点12奪三振の好投で今季7勝目。新天地で6試合に先発して3勝0敗、防御率2.57と好成績を残している。その6戦をアストロズは全勝しており、ラストスパートをもくろむチームの〝切り札〟的な存在になった。

2位に大きく差をつけたアストロズの地区優勝は濃厚で、このままいけば菊池にはプレーオフでの先発機会が訪れる可能性も高い。33歳になった左腕は今秋、メジャーキャリアのハイライトを迎えることになるかもしれない。

さらに投手では、中継ぎという脚光を浴びることが少ない立場ながら、サンディエゴ・パドレスでのメジャー1年目で59戦に登板してきた松井裕樹の貢献も見逃せない。ワイルドカード圏内にいるチームのブルペンの一角を担っており、こちらもポストシーズンでの登板機会は十分にありえそう。

また、松井と同じパドレスに所属するダルビッシュ有は、個人的理由で一時離脱していたものの、プレーオフの時期には復帰できるかもしれない。

故障の連続で今季は1試合の登板にとどまっているニューヨーク・メッツの千賀滉大も、ポストシーズンでの復帰を目指している。あくまでチーム次第だが、今年はポストシーズンでも多くの日本人選手のプレーが見られるかもしれない。

「日本人プレーヤーの当たり年」はどんな結末を迎えるのか。大谷はもちろんだが、それ以外の選手たちからも最後まで目が離せない。