里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール! 日本を代表するレジェンドプレイヤーの2人が、野球からの学びをライフハックに翻訳、「生き抜く知恵」を惜しげもなく大公開。連載の第22回では、「友人関係」に関する考え方に迫ります!

「友人関係」について語った里崎氏(左)と五十嵐氏(右) 「友人関係」について語った里崎氏(左)と五十嵐氏(右)

■「別に友だちがいなくても構わない」

――前回から「人間関係」についてお尋ねしています。今回は「友人関係」をメインテーマとしたいと思いますが、里崎さんはそもそも「ひとりでいるほうが気楽だ」と話していましたよね? 極論すれば「友だちなんかいらない」というお考えですか?

里崎 逆に聞きたいです、「友だちって、いりますか?」って。

五十嵐 わっ、出た。質問に対して質問で返す「里崎話法」(笑)。どうして、「友だちは別にいなくてもいい」という考えなんですか?

里崎 そもそも「友だちってなんだろう?」というところがあるよね。小学生の頃のようにクラスメイトや近所の同年代の仲間はまだイメージしやすいけど、大人になってまで「オレとアイツは親友だ」とか、気持ち悪くないですか(笑)。

五十嵐 確かに、子どもの頃のほうが「友だち」というのをイメージしやすいけど、大人になってからは、あんまり「友だちかどうか?」って意識することはほぼないですね。

里崎 でしょ。わざわざ「友だちかどうか?」を意識する必要はないし、いわゆる「遊び仲間」がいれば、それでいいんじゃないのかな? たとえばフットサルが趣味だったら、それはひとりではできないから、チームメートが必要になるし、もちろん対戦相手も必要になる。囲碁や将棋が好きな人だったら、碁会所や将棋教室に行けば対戦相手を見つけることができる。そういう仲間がいれば、わざわざ「友だちかどうか?」はあまり意識しないだろうし。

五十嵐 オンラインゲーム好きの人たちは、実際には一度も会ったことがないのに、ネット上で親密な関係を築いている人もたくさんいるみたいですしね。

里崎 僕はよく「ひとりゴルフ」に行くんだけど、ひとりでも全然寂しくない。スケジュール帳を見て、「おっ、明日の午前中は空いてるぞ」となったらすぐに連絡して、ゴルフ場を押さえちゃう。自分ひとりで完結することだから、わざわざみんなと日程調整する必要もないし、連絡する必要もない。こんなに気楽で楽しいのなら、「どうしても友だちが欲しい」とも思わないし、「友だちがいなければダメだ」とも思わないね。

■大人になってからは、むやみに交友関係を広げる必要はない

五十嵐 僕も「ひとりゴルフ」は気楽でいいと思うし、自分でもすることもあるけど、やっぱり誰かと一緒にラウンドしたりするのも楽しいじゃないですか? 誰かと競ったり、戦ったりすることでプレーにも熱が入るし。

里崎 僕だって戦ってるよ、自分自身と(笑)。

五十嵐 おーっ、カッコいい(笑)。でも、ひとりでできる趣味ならば、「ひとりのほうが気楽でいいな」というのは、僕も同感。何も考えずにバイクに乗ってツーリングするのは本当に楽しいし、リフレッシュできるから。

里崎 そういう趣味を持っている人ならば、「絶対に友だちは必要なんだ」という呪縛に縛られることなく、人生を楽しく過ごすことができると思うけどね。

五十嵐 あと、こういう仕事をしているからなのかもしれないけど、大人になってから近づいてくる人に対しては、多少の警戒心も必要になってきますよね。何か下心があったり、「カネを貸してほしい」と言われたりといったケースはよく見聞きするし。そういう意味では、子どもの頃ならともかく、大人になってからは「友だちを増やそう」とか「友だちがほしい」と思うこともないですね。ある程度の年齢に達したのなら、むやみに交友関係を広げる必要はないのかも。

里崎 亮太が言ったように、下心や魂胆を持って近づいてくるケースもあるみたいだけど、僕の場合はまったくそういうことはないよね。そもそも、僕自身が必要最低限しか出かけないし、やりたいことはだいたいひとりでできる。むやみに人と会ったりもしないし、仕事以外で僕と時間を共有する人はほぼいないから。

五十嵐 高校や大学時代の友だちとの関係はどうなんですか? まったく連絡を取り合わないんですか?

里崎 大学時代の友だちは、ほとんど東京に住んでいないから会うことはほぼない。いや、そもそも連絡先を知っている人も、ほとんどいないかな。高校時代の友だちは、年末に徳島に帰省したときに忘年会で会うぐらい。あとは、個人的に仲が良かった4、5人が集まって、一緒にご飯を食べるぐらいね。それが、家族や仕事上のつき合いを除いた、僕の個人的な人間関係のすべてです。

五十嵐 あっ、そう考えたら、僕の場合はそれすらないな。高校時代の友だちには誰からも誘われないし、誘わない。そもそも、連絡先も知らないや(苦笑)。

■地元の友だちとのつき合い方

里崎 でも、今の時代ではそれが普通なのかもしれないよね。学生時代は、みんなが同じような環境の中で生活して、同じ程度の学力や価値観を持った集団で過ごしていたけど、社会人になったら、それぞれがまったく別の価値観の中で生きていくことになる。そうなれば、物事の価値観とか考え方に違いが出てくるのは当然のことだし。

五十嵐 こういう言い方をすると、高校時代の友だちや地元の人に失礼だからあんまり言いたくないけど......確かによくも悪くも、価値観は大きく変わりますよね。そう考えたら、社会人になってから知り合った人と一緒に過ごすほうが精神的にもかなりラク。お互いの考え方や価値観を理解していることが多いから。

里崎 でも、一方では「やっぱり、地元の友だちはいいな」とか、「利害関係なくつき合えるからラクだ」って考える人もいるよね。

五十嵐 それを聞いて思い出した。たとえば、ソフトバンク時代に一緒だった斉藤和巳さんは「地元の友だちといると安心できるし、昔の思い出話を延々と話しているのが楽しい」って言っていましたね。サトさんも、高校時代の友だちとの忘年会はやっぱり楽しいでしょ?

里崎 確かに、延々バカ話ばかりしてるからね(笑)。やっぱり東京の人と比べたら、田舎の人は擦れていないよ。昔からずっと同じコミュニティーで完結しているから、人と人との距離感が近いし。

五十嵐 そうなると、ちょっと窮屈にもなりそうですけど......。

里崎 でも、彼らにとってはそれが普通だし、これからもそうやって生活していくわけだから、疑問を感じたり不満を抱いたりすることもないでしょ。「車を買うなら、この人から」とか、「保険に入るなら、あの人から」って決まっているような生活の中で得られる安心感もあるはず。お互いに小さい頃から知っていて、そのまま年をとっていくわけだからね。

五十嵐 そうなると、地方で暮らしている人と、都会暮らしの人とでは「友人関係」に対する考え方とか、捉え方も異なるかもしれないですね。地方の人のほうが人間関係が密になるし、それぞれが支え合うことで社会が成り立つ部分が大きそうだけど、都会の人の場合はそこまで他者を必要としないというのか、人間関係が希薄でもなんとなく生きていけるし、むしろそのほうが心地いいというのか......。

――期せずして、地方で暮らす人と都会で暮らす人とでは人間関係、友人関係に対する捉え方が違うのかもしれないという話題となりました。次回はさらにその辺りを掘り下げていきたいと思います。

里崎五十嵐 わかりました。また次回も、よろしくお願いします!

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里崎智也

里崎智也さとざき・ともや

1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工(現鳴門渦潮)、帝京大を経て1998年のドラフト2位でロッテに入団。正捕手として2005年のリーグ優勝と日本一、2010年の日本一に導いた。日本代表としても、2006年WBCの優勝に貢献し、2008年の北京五輪に出場。2014年に現役を引退したあとは解説者のほか、YouTubeチャンネルなど幅広く活躍している。
公式YouTubeチャンネル『Satozaki Channel』 

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五十嵐亮太

五十嵐亮太いがらし・りょうた

1979年5月28日生まれ、北海道出身。1997年ドラフト2位でヤクルトに入団し、2004年には当時の日本人最速タイ記録となる158キロもマークするなど、リリーフとして活躍。その後、ニューヨーク・メッツなどMLBでもプレーし、帰国後はソフトバンクに入団。最後は古巣・ヤクルトで日米通算900試合登板を達成し、2020年シーズンをもって引退した。現在はスポーツコメンテーターや解説として活躍している。

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長谷川晶一

長谷川晶一はせがわ・しょういち

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターとなり、主に野球を中心に活動を続ける。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。主な著書に、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間 完全版』(双葉文庫)、『基本は、真っ直ぐ──石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)、『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『中野ブロードウェイ物語』(亜紀書房)、『名将前夜 生涯一監督・野村克也の原点』(KADOKAWA)ほか多数。近刊は『大阪偕星学園キムチ部 素人高校生が漬物で全国制覇した成長の記録』(KADOKAWA)。日本文藝家協会会員。

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