オグマナオトおぐま・なおと
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。
MLBに続き、NPBもいよいよ2024年シーズン最終決戦へ――。伝説が生まれそうな好カードの注目ポイントを総ざらい!
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2017年の再現となった今年の日本シリーズ。当時もDeNAはレギュラーシーズン3位からCSを勝ち上がり、下克上で日本シリーズへ進出。迎え撃ったのがパ・リーグを独走で制したソフトバンクであり、4勝2敗で日本一の栄冠を勝ち獲っている。
「普通に考えれば、2017年の再現でソフトバンクが圧倒して勝つでしょう。とはいえ、ソフトバンクとしては巨人を想定していたでしょうが、DeNAも嫌な相手だと思います」
こう語るのは野球評論家のお股ニキ氏。具体的にはどこが嫌なのか?
「まずは打線の怖さ。ソフトバンク目線で見れば、牧秀悟、タイラー・オースティン、佐野恵太、宮﨑敏郎といった打撃タイトル経験者が並ぶ打線のほうが巨人打線よりも怖いと感じるでしょう」
確かに、チーム打率だけ見れば、ソフトバンクの.259に対し、DeNAは.256と引けを取らない。また、その打線の組み方をはじめ、三浦大輔監督の采配もシーズン終盤で格段に良くなったという。
「9月以降、牧を5番から2番に配置転換し、続けて佐野、オースティン、宮﨑と並ぶ打順に切り替えました。この並びのほうが滑らかで相手は嫌です。また、以前のような多すぎるバント策も最近は減っており、三浦監督の采配がグッと良くなりました」
といっても、懸念点はある。ひとつは、チーム失策数12球団ワーストの守備力だ。
「内野陣はエラーが多いだけでなく、守備範囲も狭いのが問題です。ショートを守る森敬斗はCSでも送球エラーがありましたが、ここにきてレベルを上げ、軽快な動きを見せているのは好材料です」
また、エース東克樹がCSファーストステージで肉離れを起こし、CSファイナルステージを回避。その回復具合が気になるところだ。
「本来、左でチェンジアップが得意な東はソフトバンクが苦手とするタイプ。2017年の日本シリーズでも、当時新人だった濵口遥大がチェンジアップを武器に8回1死までノーヒットノーランの快投を見せました。
東が100%の状態でない場合、濵口が2017年のような好投を見せられるか。そして、CSで好投した吉野光樹や大貫晋一、登板間隔が短くても対応できそうなアンソニー・ケイとアンドレ・ジャクソンの外国人投手がどれだけ踏ん張れるか。弱かったリリーフも少しずつ立て直してきました」
DeNAの好材料と課題を挙げてみたが、結局、ソフトバンクがどれだけ本来の力を発揮できるか次第のシリーズになりそうだ。その意味でも、負傷離脱していた近藤健介と柳田悠岐がCSから復帰できたのは大きい。
「9月に若干足踏みした印象もありますが、柳田に加えて近藤まで離脱し、飛車角落ちの状況だったから。彼らが戻ってきたことで、まず打線の並びが良くなりました。今宮健太の6番もハマっており、周東佑京が9番にいるのも怖い。ここにきて、抑えのロベルト・オスナの状態も上がってきているのは好材料です」
この充実戦力が戻ってきたからこそ、CSファイナルステージでも日本ハムを圧倒。レギュラーシーズン終盤に7連敗を喫するなど苦手としていた相手を寄せつけなかった。
「やはり、本来の戦力が戻ると地力が違います。また、9月に調子を上げた日本ハムに対して、ソフトバンクは日本シリーズまで見据えてピークを後ろに持ってきた。そこでも差がついたと思います」
今季のソフトバンクは攻撃・守備・走塁・投球すべてが高水準で隙がない状態だ。
「シーズン91勝は歴代7位タイ。さらに、球団2度目の得失点差200点超を記録。超投高打低だった今季は1点の価値が例年よりも高く、チーム力の傑出度はプロ野球史上最高クラスといえます」
また、これだけの巨大戦力にもかかわらず、ソフトバンクにはスキがない。リーグ優勝しながら日本シリーズ進出を逃した巨人と比較すると、CSに対する準備に違いがあったという。
「CSは全試合ナイターにもかかわらず、ファーストステージ期間中、巨人は主力選手の多くが、東京ドームで午前中に調整練習を行なっていたようです。
対して、ソフトバンクは4番の山川穂高が率先してフェニックス・リーグに参戦し、実戦経験を重ねていました。一時期、ペナントを制してもCSで勝てなかった歴史があるから、球団としての危機意識とノウハウがあるのでしょう」
こうした戦力面、意識面での充実ぶりに加え、お股ニキ氏は「ペナントレースの価値を守るためにも、ソフトバンクは負けられない」と続ける。
「リーグは違えど、レギュラーシーズンで貯金42のソフトバンクに対して、DeNAは貯金2。その差が40もあるのは考えものです」
2010年にレギュラーシーズン3位から日本一を達成したロッテは貯金8だった。〝史上最大の下克上〟に立ちはだかる壁は分厚いが、果たして―。
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。