「結婚」について語った五十嵐氏(左)と里崎氏(右) 「結婚」について語った五十嵐氏(左)と里崎氏(右)

里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール! 日本を代表するレジェンドプレイヤーの2人が、野球からの学びをライフハックに翻訳、「生き抜く知恵」を惜しげもなく大公開。連載の第31回では、「結婚」に関する考え方に迫ります!

■36歳で結婚した里崎、23歳で結婚した五十嵐

----これまで、「仕事とは何か?」「夢や希望とは何か?」など、人生にまつわるさまざまなことをテーマにしてきましたが、今回からは「愛とは何か?」という大命題に真正面から向き合っていただきたいと思います。まずは、「結婚」について伺います。おふたりが結婚を決めたきっかけからお願いします。

里崎 僕の場合、結婚はけっこう遅かったですね。僕が36歳、妻が38歳のときでした。現役引退の2年前(2012年)に結婚して、引退の年に双子が生まれ、引退時に発表しました。

五十嵐 僕は、結婚は早かったです。22歳で婚約して、23歳で結婚。結婚した翌年に子どもが生まれたので、かなり早いほうですよね。サトさんが現役引退間際に結婚したのは、野球に集中したかったからですか?

里崎 いや、たまたまそのタイミングになっただけ。でも、結婚して、子どもが生まれてから思ったけど、現役バリバリのときに子どもが生まれていたら、野球だけに集中するのはたぶん無理でしたね。それができるほど器用じゃないから。

五十嵐 サトさんが言うように、選手として脂がのっているときだと、どうしても子どもの面倒を見る時間が限られますよね。僕も、こどもの世話や教育について妻に任せっきりになってしまったし。だから、今でも妻に「あの頃は本当に大変だった」と言われることもあります。実際、その通りなんですけどね(苦笑)。

結婚の時期は「もうちょっと後でもよかったかな?」と考えることもあったけど、お互いに「結婚したい」と思うタイミングがそこでしたから。子どもの面倒という点では苦労をかけましたが、自分がプレーしている姿を子どもたちにも見てもらうことができた。アメリカや福岡で一緒に暮らすこともできたというのは、早めに結婚してよかったところですね。

里崎 僕の場合、引退のときに子どもはまだ0歳だったから、そもそも「自分のプレーを見てもらいたい」という思いはなかったけど、引退して時間ができたおかげで、保育園や小学校でも、入園式、卒園式、入学式、卒業式、授業参観、保護者会、運動会などなど、学校関連のイベントには全部出ることができた。それは幸せなことだよ。

五十嵐 確かに現役中だったら、オフシーズンじゃないと子どもの行事に参加することはほぼできないですからね。あくまで選手としての視点かもしれないけど、早く結婚して子どもがいると「自分の現役時代を見てもらえる」、引退して落ち着いてから子育てをすると「子どもと一緒にいられる時間が長くなる」という、それぞれのよさがありますね。

■「お金がないから結婚できない」現実

里崎 最近では「結婚しなくてもいい」という人も増えているし、結婚していても「子どもはいなくていい」という人も増えているよね。考え方はいろいろあるわけだから、その点は自由でいいと思うけど。

五十嵐 「結婚したい」「子どもがほしい」と思っていても、なんらかの事情があって悩んでいる人もいるわけだし、一概に「こうすべきだ」とは言えない。サトさんの言うように、人それぞれ考え方があるから、昔のように「結婚すべき」「家庭とは親と子どもで成立するもの」という考え方は、今では通用しないですよね。

里崎 これは結婚や育児に限ったことじゃないけど、強がったり、ひがんだりして現実から目を背けている人もいるかもしれない。そんなふうに生きるよりは、「目の前の現実を受け入れて、その上でどうすれば幸せになれるか?」を前向きに考えたほうが絶対にいいよね。

五十嵐 若い人が結婚しない一因として、経済的な理由も挙げられていますよね。確かに、これだけ景気が悪くて、先行き不透明な時代だと、「本当に家族を養うことができるのか?」と不安を抱く人も多いはず。ただ、誰だって若い頃は先行きの不安はあるものですけどね。僕らが若かった頃よりも、さらに状況は深刻なんですかね。

里崎 だけど、「年収の高い人の婚姻率、出産率は下がっていない」というデータもあると聞いたことがあるよ。あとは都市部と地方との違いも大きいよね。家賃の高い都市部で結婚生活を営むとなると、ある程度の年収は絶対に必要になる。でも、地方で暮らすなら都市部に比べると家賃も物価も安いし、地域コミュニティで子どもの面倒を見てもらえるケースも多い。出産、育児の負担が減る要素が多い気がするよね。僕の地元の徳島では、知っている範囲だけど待機児童の話もあんまり聞いたことがないし。

五十嵐 非認可の保育園に預けたら、毎月かなりのお金が必要になりますよね。地方で、近くに実家があって両親も健在だったら、いろいろ手伝ってもらえるかもしれない。それと同じようにというのは難しいけど、やっぱり都市部でも環境が整っていないと結婚、育児は難しくなるから、「このまま独身でいいや」と考えてしまってもおかしくないと思いますよ。

里崎 あとは、ある程度収入が高い家庭で育った人は、さらに難しく考えちゃう可能性もあるかもね。

五十嵐 それはありますね。

里崎 自分が大人になって家庭を持つときに、自分が育ってきた環境がベースになるんじゃないかと。そうなると、小さい頃からの環境を維持するためには、自分自身が同じように稼ぐか、配偶者に稼いでもらうか、2人で頑張るしかない。

家探しにしても、2人で暮らすとなると都心では手狭になる可能性もある。そうなると郊外に引っ越ししないといけなくなって、通勤時間もさらに長くなる......といったように環境が大きく変えなくちゃいけないとなったら、それを受け入れるのも難しい人もいるだろうと思って。

五十嵐 必ずしもお金だけの問題じゃないとは思うけど、やっぱり結婚とお金は切り離しては考えられませんね。

----さて、議論も白熱してきましたが、今回はここまで。話すべき問題は山積みなので、次回もよろしくお願いいたします。

里崎五十嵐 次回もよろしくお願いします!

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里崎智也

里崎智也さとざき・ともや

1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工(現鳴門渦潮)、帝京大を経て1998年のドラフト2位でロッテに入団。正捕手として2005年のリーグ優勝と日本一、2010年の日本一に導いた。日本代表としても、2006年WBCの優勝に貢献し、2008年の北京五輪に出場。2014年に現役を引退したあとは解説者のほか、YouTubeチャンネルなど幅広く活躍している。
公式YouTubeチャンネル『Satozaki Channel』 

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五十嵐亮太

五十嵐亮太いがらし・りょうた

1979年5月28日生まれ、北海道出身。1997年ドラフト2位でヤクルトに入団し、2004年には当時の日本人最速タイ記録となる158キロもマークするなど、リリーフとして活躍。その後、ニューヨーク・メッツなどMLBでもプレーし、帰国後はソフトバンクに入団。最後は古巣・ヤクルトで日米通算900試合登板を達成し、2020年シーズンをもって引退した。現在はスポーツコメンテーターや解説として活躍している。

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長谷川晶一

長谷川晶一はせがわ・しょういち

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターとなり、主に野球を中心に活動を続ける。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。主な著書に、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間 完全版』(双葉文庫)、『基本は、真っ直ぐ──石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)、『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『中野ブロードウェイ物語』(亜紀書房)、『名将前夜 生涯一監督・野村克也の原点』(KADOKAWA)ほか多数。近刊は『大阪偕星学園キムチ部 素人高校生が漬物で全国制覇した成長の記録』(KADOKAWA)。日本文藝家協会会員。

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