板倉 滉いたくら・こう
1997年1月27日生まれ、神奈川県出身。日本代表CB。川崎Fでプロ入り、2019年に1シーズン在籍したベガルタ仙台からイングランド1部マンチェスター・Cへ移籍。その後、オランダ1部フローニンゲン、ドイツ2部シャルケを経て、現在はドイツ1部のボルシアMGに在籍
北中米W杯アジア最終予選の11月シリーズを終えて、22得点2失点と首位独走で2024年を締めくくった日本代表。急造3バックのリーダーとして2連戦に臨み、中国戦では得点も記録した板倉がアウェーでの激闘を振り返る。
北中米W杯アジア最終予選の6戦が終わって、ここまでフル出場。アウェーのインドネシア戦(11月15日)と中国戦(11月19日)にしっかり勝って、今年の代表活動を締めくくれたのは良かった。
DF面では、3バックの中央を務めていた(谷口)彰悟さんがアキレス腱断裂で長期離脱となってしまったため、11月のアウェー2連戦は僕が中央に入って〝急造〟3バックで臨むことになった。所属先のボルシアMGでは中央を務めることが多いので、割とスムーズに入れた感覚がある。
代わりに右CBを務めた橋岡大樹(イングランド2部・ルートンタウン)や瀬古歩夢(スイス・グラスホッパー)も随所でいいプレーを見せていた。いい刺激になったし、ポジション争いはますます激化するだろうけど、身が引き締まる。そして、何よりも結果がすべてという試合で、6戦合計2失点にとどめられたのは大きい。
そんな11月シリーズについて、まずはインドネシア戦から振り返りたい。当日の気温は32℃、雨が降ってやんで、そしてまた土砂降りに。蒸し暑く、ピッチ状況も決していいとはいえなかった。ただ、インドネシアサポーターのサッカー熱はすさまじく、日本代表もほぼ全員知られていたようだった。
試合会場がサッカー専用のスタジアムではなく、陸上のトラックコースを挟んでいたおかげで、中東のような〝圧〟は感じなかったけれど、インドネシアのちょっとしたプレーでもスタジアムが盛り上がるので、相手はノリやすい状況だったはず。
僕としては開始早々、相手FWのオラトマングンに1対1で入れ替わられてピンチを招いたので、そこはとても反省している。GK(鈴木)彩艶がスーパーセーブで救ってくれたことに感謝しかない。
結果こそ攻撃陣の活躍もあって、4-0で大勝できたけど、1月のアジアカップで対戦したときのインドネシア(僕は出場していないが)からは進化した、まったく別のチームという印象を受けた。自陣をコンパクトにして前線の選手を裏に走らせ、どんどん嫌なロングボールを放り込む。今まさに強くなっている、決して油断できない相手だった。
中国によるアウェーの洗礼は相当だった。芝の状態が良くないこと、ラフプレーは想定内だったけど、まさかの〝幅狭ピッチ〟。基本の横幅よりも両サイド1.5mずつ内側にピッチラインが引かれていたのだ。
前日練習のタイミングで知ったけれど、そのときはそれほど違和感を覚えることはなかった。でも、いざ試合に入ると、サイドのほうでボールを持ったときに狭さを感じた。お世辞にもいい環境とはいえなかった。
その分、僕らはセットプレーで勝負強さを示せた。前半39分にMF(久保)建英のコーナーキックから、FW(小川)航基がヘディングで先制。続いて、前半ロスタイムにMF(伊東)純也君のコーナーキックからニアサイドにいたDF(町田)浩樹が頭でそらし、ファーサイドにいた僕がダイビングヘッドで追加点を決めることができた。
すべてデザインどおり。前日、浩樹には「ボールが来たときは自分で決めなくていいから、首を振ってファー目がけて打って」と冗談交じりにお願いしていた。練習時、僕はニアにいる相手をブロックしてからファーに回り込んでいたので、タイミングが間に合っていなかった。
だから本番ではブロックを省略してファーに駆け込んだ。そうしたら、いい具合にボールが転がってきたので、体の芯を使ってど真ん中に当たるように全身で飛び込んで得点できた。
振り返れば最終予選の初戦、ホームの中国戦(9月5日)で生まれた、MF(遠藤)航君の先制点を皮切りに、僕のゴールも含めて、日本はセットプレーからのヘディングで6戦合計4得点をマークしている。もちろん、ここから先はこの形が警戒されるだろうけど、僕らは僕らで強力な武器として、精度をよりいっそう高めていくつもりだ。
オプションで言えば、真ん中での〝崩し〟もさらに完成度を高めたいところ。アウェーでの中国戦80分、前がかりになってきた相手に対して、僕から航君、MF(鎌田)大地君、MF(田中)碧と、ワンタッチでつないでフィニッシュまで持っていったいい場面があった。大地君は間に入るのもうまいし、ボールを引き出すポジショニングが絶妙。真ん中でこういった攻撃パターンを実践すれば、相手がそれを意識することで、逆に僕らにとっては強みであるサイドが空いてチャンスを作れる。
だからこそ、僕にとっての課題は、真ん中でしっかりコントロールして、相手を引きつけられるような球の運び方をすることだ。
一方、守備面においてアウェー2連戦で痛感させられたのは、攻め続けている分、どうしても大きなスペースで1対1を守らないといけない状況が多かったので、そこでもっと相手に行かないとダメだということ。後半へ進むにつれて、疲労も蓄積していく中、どう踏ん張って守り切るか、しっかり修正したい。
来年の3月20日、ホームのバーレーン戦で勝てば、26年北中米W杯出場が決まる。ホームで大一番を迎えられるのは理想的。油断せず試合に臨み、応援してくださる皆さんとW杯出場の喜びを分かち合いたい。
1997年1月27日生まれ、神奈川県出身。日本代表CB。川崎Fでプロ入り、2019年に1シーズン在籍したベガルタ仙台からイングランド1部マンチェスター・Cへ移籍。その後、オランダ1部フローニンゲン、ドイツ2部シャルケを経て、現在はドイツ1部のボルシアMGに在籍