里崎智也さとざき・ともや
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工(現鳴門渦潮)、帝京大を経て1998年のドラフト2位でロッテに入団。正捕手として2005年のリーグ優勝と日本一、2010年の日本一に導いた。日本代表としても、2006年WBCの優勝に貢献し、2008年の北京五輪に出場。2014年に現役を引退したあとは解説者のほか、YouTubeチャンネルなど幅広く活躍している。
公式YouTubeチャンネル『Satozaki Channel』
里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール! 日本を代表するレジェンドプレイヤーの2人が、野球からの学びをライフハックに翻訳、「生き抜く知恵」を惜しげもなく大公開。連載の第32回では、「幸せな結婚生活」に関する考え方に迫ります!
----前回はおふたりの結婚に至る経緯から、昨今の婚姻率の低下に思うことをお尋ねしました。最近では「結婚することにメリットを感じられない」という意見もあります。おふたりは「結婚の楽しさやメリット」をどのように考えていますか?
里崎 僕の基本となっているのは「愛情」よりも、「そのパートナーのことを尊敬できるかどうか?」「自分にないものを持っているかどうか?」なんです。自分にないものを持っていて尊敬できる人がいい。その結果、自分にプラスアルファがもたらされたり、グレードが上がったりするわけだから。
五十嵐 真意が伝わらないと、世間や奥さんに怒られそうですね(笑)。サトさんをフォローするわけじゃないけど、愛情があるのは当然のこととして、そこにプラスアルファで「尊敬」が加わるのがベストですよね。「愛情が大事」って言わないのは、恥ずかしいからなんですか?
里崎 いや、恥ずかしいというよりは、本当にそう考えているから。だって、時間とともに愛情は冷めていく可能性があるけど、尊敬や敬意というのは時間が経っても冷めにくいものだと思ってるから。
五十嵐 確かに、それは理解できます。愛情の度合は上がったり、下がったり、強くなったり、弱くなったり......。
里崎 そうでしょ? それを基準や目安にしていると、状況が変わったときにイヤになったり、別れたくなったりするかもしれない。だけど、相手へのリスペクトは絶対的なものだから。ちなみに僕は、妻と結婚するときに披露宴の場で「妻は僕と結婚して幸せになれるかどうかはわからない。でも、僕は100%幸せになる自信がある」って言ったんだよね。それぐらい尊敬していたから。
五十嵐 カッコいいですね。でも、その尊敬の度合は下がることはないんですか? 「あれ、思っていたのと違う」とか、「やっぱり、イヤだな」みたいな感じで。
里崎 それは、どちらかというと「愛情」に関わる部分じゃないかな? 「情」は変化することもあるとは思うけど、「リスペクト」は変わらない。それが僕の考えです。
五十嵐 ちなみに、どういうところを尊敬しているんですか?
里崎 さっきも言ったように「自分にないものを持っている」ということだね。僕があまりできないこと、具体的には子どものことなどのフォローアップがすごい。あるいは、リサーチ力がとんでもなくエグイことも大きな魅力かな。例えば、旅行先での美味しい店とか、子どもの学校や教育とか、名医のいる病院とか......その他の多くのことでリサーチ力がものすごい点を、特にリスペクトしてる。
五十嵐 サトさんだって、本気でやったらリサーチ力はすごそうじゃないですか。
里崎 僕の場合は、そこまで徹底するのが面倒くさいから、そんなにヤル気も起きないんだよね。必要に迫られたらやるけど、基本はやりたくない(笑)。
五十嵐 でも、それは「面倒くさいことやってくれて、助かるから」という印象もあるけど......。
里崎 他人からどう見えるかは関係ないよ(笑)。僕は彼女のことを尊敬しているし、うちの場合はその関係で今まで成り立っているわけだし。もともと、彼女はすごく気が利くタイプで、大企業からも「ぜひ秘書として来てほしい」って言われているような人なんだよね。そういう点が素晴らしいというか、こちらから何かを言わなくても"かゆいところに手が届く"感じだね
五十嵐 それが、里崎家の幸せであり、家庭円満の秘訣だとしたら、確かに他人がどうこう言える話じゃないですね。
里崎 うちの場合は、僕が「財務省」、妻が「総務省」みたいなものだと思う。「オレがガンガン稼いでくるから、それを使って生活をうまく回してほしい」という感じかな? 僕も家庭のことを任せきりにするわけじゃないけど、完璧にやってくれているから何も心配することはない。たぶん妻も、僕のことを財務省として絶対的な信頼をしてくれていると思うから、お互いにリスペクトし合えているんじゃないかな。
五十嵐 里崎家には財務大臣と総務大臣がいて、そのふたりのバランスがちゃんと取れているわけですね。
里崎 そうそう。それで、最終的な決定は僕に任せてもらってる。つまり、僕が「財務大臣兼総理大臣」で、嫁は「総務大臣兼官房長官」っていう感じかもしれないね。里崎家の話ばかりになっちゃったけど、亮太の場合はどうなの?
五十嵐 五十嵐家は「愛情」で成り立ってますよ。
里崎 それは、奥さんを意識した言葉なんじゃないの(笑)?
五十嵐 もちろん、そうですよ(笑)。うちの奥さんはプリンセス。「僕が一生懸命働くから、家族みんなで幸せに暮らしましょう」というのが理想だし、そうあるように意識しています。サトさんと一緒なのは、僕自身も「尊敬できるかどうか?」を大切にしていること。愛情があるから結婚した、というのがスタートではあるんですけど、それと並行して「自分にないものがある」という点に惹かれたのは間違いないですから。
里崎 そうなると、亮太自身はプリンセスを支えるような役割ってこと?
五十嵐 僕は家庭内で総理大臣だとか考えたこともないからわからないけど、五十嵐家のパワーバランスで言うならば、僕のほうが弱いことにはなりますね(笑)。ただ、妻が一方的に何かを押しつけてくるわけじゃないし、彼女の判断や考え方は正しいことが多い。最初に聞いたときは納得できなくても、後になって「あのときの判断は正しかったんだな」と気づくことが多いんです。そのあたりの信頼はとても大きいですね。
僕はサトさんのように、しっかりと先を見据えて行動するタイプじゃないから、「いつも客観的に判断してくれる人」が必要なんですが、それが妻です。どちらかというと僕は、操られている。コントロールされていると言えるかもですね(笑)。
里崎 それで家庭がうまく回っているなら、それが「五十嵐家の正解」なんだろうね。亮太が言っていることも、やっぱり「敬意」が大事だよね。パラメーターが変動する「情」よりも、「敬意」「尊敬」というところを基準にすると、自分にとっての理想的な家庭生活を送ることができると思うな。
五十嵐 ただ、僕は「敬意」という基準もパラメーターが変動することはあると思いますね。やっぱり、「どうしても許せないこと」があれば、敬意だって一瞬にしてなくなってしまうこともあると思うから。幸いにして僕の場合は、そんな経験がないからいいけど。でも、サトさんの言うように「ずっと愛し続けること」に重きを置きすぎるんじゃなくて、「お互いを思いやりながら敬意を持つこと」を意識したほうが永続するし、幸せな家庭が築けると思います。
――どうもありがとうございました。それぞれの実体験に基づく「理想の結婚生活」のヒントが見えた気がします。次回も引き続き、このテーマを深掘りしたいと思います。
里崎・五十嵐 了解です。次回もどうぞよろしくお願いします!
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工(現鳴門渦潮)、帝京大を経て1998年のドラフト2位でロッテに入団。正捕手として2005年のリーグ優勝と日本一、2010年の日本一に導いた。日本代表としても、2006年WBCの優勝に貢献し、2008年の北京五輪に出場。2014年に現役を引退したあとは解説者のほか、YouTubeチャンネルなど幅広く活躍している。
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1979年5月28日生まれ、北海道出身。1997年ドラフト2位でヤクルトに入団し、2004年には当時の日本人最速タイ記録となる158キロもマークするなど、リリーフとして活躍。その後、ニューヨーク・メッツなどMLBでもプレーし、帰国後はソフトバンクに入団。最後は古巣・ヤクルトで日米通算900試合登板を達成し、2020年シーズンをもって引退した。現在はスポーツコメンテーターや解説として活躍している。
1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターとなり、主に野球を中心に活動を続ける。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。主な著書に、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間 完全版』(双葉文庫)、『基本は、真っ直ぐ──石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)、『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『中野ブロードウェイ物語』(亜紀書房)、『名将前夜 生涯一監督・野村克也の原点』(KADOKAWA)ほか多数。近刊は『大阪偕星学園キムチ部 素人高校生が漬物で全国制覇した成長の記録』(KADOKAWA)。日本文藝家協会会員。