山本萩子やまもと・しゅうこ
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。
腰を痛めました。重たいものを持とうとしたら「グキッ」という鈍い音がして、腰に激痛が走りました。いわゆる「ぎっくり腰」です。
普段から気をつけていたのですが、油断しました。しばらく歩くこともままならず、調べたところ激痛を抑えるためには薬しかないと知りました。野球選手と比べるのも恐縮ですが、ケガと向き合うというのはいかに大変なのかと思いました。
2017年に椎間板ヘルニアを発症して以来、常にケガと向き合っているのが川端慎吾選手です。
打率3割を3年連続で記録するなど打撃センスはピカイチ、近年では代打を中心に活躍する川端選手は、チームにとって大事な存在です。いや、今後はさらに存在感が増す可能性があります。というのも、打撃はもちろんですが、チームを牽引する重要な役割を求められるからです。
川端選手に求められる役割とは、ズバリ"ポスト青木"です。青木宣親選手の引退は大きなニュースになりましたが、ベテランが抜けるというのは、いつの時代でもあることですし、必然ではあるのですが、ファンはその度に大きな喪失感に苛まれます。
最近だと、ソフトバンクの和田毅投手の引退が決まった時には、一緒に自主トレをしていた他チームの選手たちも大きなショックを受けたと聞きました。ベテランの存在とは他球団にとっても大きな財産なのです。
青木選手の引退も大きな衝撃をもって受け止められました。どの選手にインタビューをしても、精神的支柱であったこと、いかに青木宣親という存在に頼っていたのか、吐露するコメントが多く聞かれました。
今年、ヤクルトはFA宣言した選手を積極的に獲りにいっています。ただ、FAでは獲得できないポジションもあります。それがベテラン=精神的支柱です。これだけはチーム内で育成するしかない、"特殊なポジション"と言っていいでしょう。
青木選手がいなくなったヤクルトには、石川雅規投手というレジェンドもいますが、野手の柱を育てることが急務なのです。
"ポスト青木"と目される川端選手に求められるのは、全体のバランサーとしての役割かもしれません。そういう役目は、チームがうまくいっている時には目立たないもの。特に若くて勢いのある選手にとっては、チームも自分も調子がいい時は、なかなか目に入りづらいものかもしれません。
しかし、チームの成績が下降した時に、その真価が発揮される。プロ野球において数字などには出てこない、別の才能なのだと思います。
川端選手は来年、ヤクルトの野手の最年長としてシーズンを迎えます。2015年の川端選手は首位打者を獲得しましたが、マイペースな性格で多くは語らないけど、人当たりがいいためみんなに愛され、常に多くの人に囲まれているイメージがありました。柔らかい雰囲気をまとっていて、どちらかというと言動よりもプレーで語る選手だったと記憶しています。
しかし近年は積極的に若手と食事に行ったり、リーダーシップを取ろうとしたりしている姿が見られます。ここ数年は代打での出場が多いですが、ベンチからチーム全体を俯瞰できるようになったのかもしれません。
MLBでは、数年前のパドレスのダルビッシュ有投手がそんな感じでした。野手は若手の有望選手が揃い、イケイケだったものの、勝てなかった。そんな時にそんな時に頼りになるのがダルビッシュ投手でした。
青木選手の背中を見てきた川端選手は来年、どんな姿を私たちに見せてくれるのでしょう。元西武の松坂大輔さんが言っていた言葉が頭をよぎります。
「いろんな経験をして、感じたから、いろんなことがあったから今の僕があるんだ」
どんな超一流選手でも必ず辿る道。それを川端選手もわかっているからこそ、チームを引っ張っていくことに意義を見出してくれるような気がする。いや、心からそう願っています。
"ポスト青木"という言い方をしてしまいましたが、川端選手にしかできない姿を若手に示し、"ポスト川端"を育ててほしい。そう思うのでした。
それではまた来週。
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。