W杯アジア最終予選では6試合を終えて5勝1分け(しかも得失点差はプラス20)で首位独走の森保ジャパン
サッカー日本代表、森保ジャパンが絶好調だ。今年9月に開幕した2026年北中米W杯アジア最終予選でここまで6試合を消化して5勝1分け、2位オーストラリアに勝ち点9の差をつけてグループ首位を独走。4試合を残し、日本代表史上最速でのW杯出場決定に王手をかけている。
北中米W杯からアジアの出場枠は従来の4.5から8.5に増加し、予選開始前から「突破は問題ない」と思われていた。
一方で、前回カタールW杯の最終予選でも戦った強豪のサウジアラビア、オーストラリアのほか、帰化選手が加わって急速に力をつけているインドネシアなどと同グループになったことから、「油断は禁物」との見方もあった。
フタを開けてみれば、初戦の中国戦(ホーム)に7-0で快勝すると、その後も〝無双状態〟で勝ち点を奪取。唯一引き分けた第4節のオーストラリア戦(ホーム)も、内容的には終始圧倒していた。
そんな戦いぶりの日本代表について、「史上最強」と称する声も聞こえてくるが、実際にプレーしている選手たちはどう感じているのか。
まずは、ここまで最終予選全6試合に先発し、3得点を挙げるなど主力として攻撃をリードしてきた南野拓実(モナコ)に聞いた。
前回のW杯最終予選を経験し、本大会では背番号10をつけた南野拓実(モナコ)
「実際に戦っている僕らが言うのは難しいですが、所属チームでもしっかり結果を残している選手たちが集まっていることが強さにつながっているのは間違いないんじゃないですか。それが層の厚さということでもあるし、スタメンの11人だけじゃなく、代わって入った選手が得点に絡む場面も多い。
ここまで結果が出ていますが、誰ひとりここで満足している選手はいないと思うし、前回の最終予選を経験している選手が多いのもプラス要素のひとつ。まあ、前回は最初の3戦で2敗して、ずっとピリピリする状況だったので、今回と状況はまったく違いますけどね(笑)」
トップ下を得意にしている南野だが、代表では左サイドで起用されて持ち味を発揮できなかった時期もあった。ただ、今はシステムが(より攻撃的な)3-4-2-1になったこともあり、2シャドーの一角として〝らしさ〟を取り戻している。また、3バックの布陣にも手応えを感じている様子。
「サイドに適性のある選手がいる中で、それぞれの選手の特長が生きるようになり、僕自身、味方との距離感とかやりやすさを感じている。
もちろん、これまでになかった攻撃的な形なので相手が強くなったときにどうするかという問題はありますが、ここまでは(3バックへの変更が)大きなメリットになっているのは確かだと思います」
前回の最終予選では土壇場で4試合連続ゴールを決めるなどチームの救世主となった伊東純也(スタッド・ランス)は、9月の中国戦で年明けのアジア杯以来の代表復帰を果たすと、主に途中出場ながら全6試合に出場。1得点5アシストとブランクを感じさせない働きを見せている。
その伊東は日本代表の強さについて、「(最終予選6試合で失点2と)まず守備がしっかりしている」ことを挙げた上で、「シンプルにクオリティのある選手を、うまく起用しているのでは」とした。
大苦戦した前回のW杯最終予選では、チームを救った伊東純也(スタッド・ランス)
「みんなクラブでのいい流れをそのまま代表に持ってきているし、(W杯出場を)早く決められるに越したことはないので、いい感じだと思う。例えば、クロスボールひとつとってもピンポイントで合わせれば、(味方が)しっかり決めてくれるので出し手としてはありがたい。
もちろん、前回の予選と比較したら(チーム状況や雰囲気は)天と地の差があるのは確かだけど、誰が出てもクオリティが落ちないっていうか。レベルが高い中で競争があるぶん、切磋琢磨できているかなっていうのはありますね」
伊東は3-4-2-1の右ウイングバックを主に務めている。強敵ぞろいのW杯本大会を見据えたとき、今のシステムでは攻撃的すぎるとの意見もあるが、こう反論する。
「オプションとして4バックもあると思う。ただ、カタールW杯でも、結局、俺が(3バックの)ウイングバックでしたからね。今は負けていないし、このまま行ってもいいんじゃないですか」
4-0で完勝した第5節のインドネシア戦(アウェー)で先制点となるオウンゴールを誘発し、3-1で勝利した第6節の中国戦(アウェー)で先制点を含む2得点と、11月シリーズの2試合でいずれも1トップで先発して存在感を示したのは小川航基(NEC)。最終予選は初経験ながら、ここまで6試合でチームトップの4得点を挙げている。
NECの小川航基。W杯最終予選でここまでメンバー中トップの4得点を挙げている
「僕の一番の良さはゴール前でボールをねじ込むところですが、そのためにはいいラストパスが不可欠で、今の代表にはそうしたパスを出せる選手が多くいる。そのおかげで、僕はゴール前の仕事に専念でき、結果を出せています。
所属クラブ以上に、ゴール前でいいポジションを取れば、そこにいいボールが来る。代表に入り、(周りの)選手の技術の高さを痛感しています」
また、過去の最終予選を振り返れば、日本が苦労してきた歴史もあるが、小川はピッチに立ってみて、こんなことを感じているという。
「最終予選というと、どうしても接戦になるイメージがありました。なので、これほどいい流れで来られるとは思っていませんでした。でも、今の代表選手はみんなレベルが高く、アウェーの厳しい環境でも普通にプレーしている。
例えばJリーグ時代、アウェーの浦和戦で埼玉スタジアムに行くと、相手チームの大声援の前でチームの誰かひとりがミスをすると、それに引きずられるようにチームとしてうまくいかないという経験を何度もしました。チームは生き物で、ひとつミスが出ると全体に影響するもの。
ただ、代表選手はそうしたことをも覆す技術や芯の強さがあるのか、アジアの過酷なアウェーでもまったく変わらないのはすごいなって思いました」
現時点では代表未満の選手にも聞いてみた。小川と同じく、オランダ中位のNECに所属する21歳の佐野航大は、昨季途中にボランチのレギュラーに定着すると、今季はリーグ第16節終了時点で14試合に出場(13試合が先発)。オランダでもその力を評価されつつある。だが、代表入りへの抱負を聞くと、「自分はまだまだ」と謙遜しきりだ。
小川と同じくNECでプレーする佐野航大。代表未招集の選手にはどう映っている?
「ここで試合に出ていることは自信になっている。ただ、ボランチとはいえ、もっと目に見える数字を残さないと。代表入りについて意識はしますよ。でも、今は外から見てもいい選手がそろっているのは明らか。
もちろん、隙があれば狙っていきたいですが、航基君からは(代表は)NECよりも練習からレベルが高いと聞きますし、代表入りのためには、まずクラブレベルでステップアップしないと難しいのかなとも思っています」
このところドイツでの好調ぶりが伝えられている3学年上の兄・海舟(マインツ)の存在も、航大には大きな刺激になっているという。
「兄の試合はいつも見ていますが、ブンデスリーガでもびっくりするくらい普通にやっていて、自分よりはるか先にいる感じ。でも、まだ一緒のチームで戦ったことはないので、いつか一緒にやりたい気持ちはある。それが代表だったら最高なんですけどね」
アジアでは敵なしの森保ジャパンだが、欧州には今後の代表入りを狙っている選手もまだまだいる。
選手たちも実感しているように、所属チームやそこでのプレーぶりを見れば、現代表チームの強さはある意味、当然。
ただ、14年ブラジルW杯では、当時、史上最強といわれていたザックジャパンが1勝もできずに敗退した過去もある。そういう意味では、やはりW杯本大会で結果を出して初めて史上最強と言えるのかもしれない。