スポーツキャスター・中川絵美里が才木浩人選手を直撃!
相手が大谷翔平であっても、人生初の日の丸を背負った国際大会であっても、臆することなく、自身の武器であるストレートで真っ向勝負。今や虎の勝ち頭、そして侍ジャパンのエース候補としても大注目の本格派右腕・才木浩人。
彼が直球で語ってくれた新シーズンの目標、藤川球児新監督への思い、26年WBCに向けての野望とは――。スポーツキャスター・中川絵美里が聞いた。
■再び日本代表の先発として投げたい
中川 昨シーズンは開幕戦からローテーションを守り7月のオールスターゲームにも選出。11月のWBSCプレミア12でも大車輪の活躍でした。あらためて振り返っていかがですか?
才木 個人的にはいいシーズンだったと思います。1年間、シーズンを通してしっかり投げることができたのが初めてでしたし、ある程度、自分の目標も達成できましたので。
中川 その達成できた目標というのは、具体的にはどういったことでしょうか?
才木 まずは1軍で年間通じてローテーションを守って投げること、それに規定イニングを投げるとか、25試合を投げられた、などです。やっぱり1軍の投手として最低限のラインをクリアしないことには話になりませんからね。それが達成できて、取りあえず良かったと思います。
中川 ご自身の中での評価は、充実した一年だったと。ちなみに昨シーズンの投球成績は勝利数13でキャリアハイ(リーグ2位タイ)、137奪三振と防御率1.83は共にリーグ3位という素晴らしいものでした。
才木浩人選手
才木 自己評価ということでいえば、数字が示した結果ほどではないかなと。真っすぐ(ストレート)にしてもフォークにしても、いまひとつ手応えをつかむことができなかったので、まだ甘いですね。
中川 さらに飛躍の場となったのがプレミア12でした。ご自身にとって初の国際大会、海外の選手と対戦してみていかがでしたか?
才木 シンプルに日本の野球との違いを感じましたね。まさに2次リーグ第2戦のベネズエラ戦(11月22日、9-6で勝利)で、それを実感しました。
中川 この試合で才木投手は先発。侍ジャパンは初回に3点を奪いますが、2回に7番の(アンヘル・)レイエス外野手に2ランホームランを浴びました。最終的に5回2失点にまとめましたが、どういったところに違いを感じましたか?
才木 全員が全員、本塁打を狙っているわけではないとは思いますが、1番から9番まで「空振りしてもいい」ぐらいのフルスイングをしてきたんですよね。大胆というか、やっぱりその点が違うなと。
中川 大会前にはご自身の真っすぐがどれだけ通用するか試したいとおっしゃっていました。まさに有言実行で、真っすぐ中心で押していきました。
才木 空振り(5つの奪三振はすべて空振り三振)とかファウルはある程度取れていたので、そこは良かったと思います。
中川 才木投手の場合、回転数(投げた球の1分間の回転数。ストレートの場合、高いほど、揚力が働いて伸びのあるボールになる)も話題になっていました。
最高2783回転、平均2663回転は世界最高峰のメジャーリーグでも上位に入るそうです。実際、キャンプ取材に行ったとき、髙橋宏斗投手(中日)や大勢投手(巨人)は、「才木投手はキャッチボールをしただけでも、球筋がエグいとわかります」と、絶賛でした。
才木 いやいや、大勢はふざけて言ってるだけです(笑)。でも、確かに自分は回転数が高めのタイプではありますけど、そこばかりフォーカスされてしまうのは本質の部分と違うかなと。
ただ回転数の数値が高ければいいというものではなく、打たれないためにはボールの回転軸や回転効率(ボールの回転量を変化量に効率よく反映させること)も大事だと思いますので。
中川 「バッターが狙っていても打てない直球」というのを、追求していきたい、と。
才木 そうですね。日本国内でしたら、僕と対戦するとなれば、真っすぐの球に振り負けないように意識するバッターは多いでしょうからね。そういった相手に対して、どれだけ空振りやファウルを取っていけるか。狙っていても打てない真っすぐを磨いていきたいです。
中川 決勝(11月24日)の相手は台湾でした。日本は0-4で敗れ、連覇を果たすことはできませんでしたが、才木投手は1次リーグB組で、超アウェーの台北ドームで同代表と対戦(3-1で勝利)、先発して6回途中3安打無失点の好投を見せました。あらためて台湾の印象を聞かせてください。
才木 まず、台北ドームの雰囲気がすごすぎて、もはや驚きを通り越して笑うしかなかったですね。
中川 台湾の攻撃中は、日本のピッチャーが投球動作に入ってもお構いなしに、応援団の大声援と大音量の音楽がスピーカーで流されていました。
才木 負けじと力が入りましたね。
中川 あれだけの熱量と、野球のレベルの高さを肌で感じてみて、いかがでしたか?
プレミア12の1次リーグ台湾戦では、5回2/3を3安打無失点と力投。昨年はリーグ開幕からプレミア12までフル稼働し、「年間を通して安定した成績を出すとなれば、やはりコンディションの調整とか、疲労の取り除き方などもしっかり考えていかないとダメだと感じています」と語った(写真/東京スポーツ/アフロ)
才木 もちろん、決勝で負けた悔しさはあります。でも、あれだけ熱くなれる気持ちとレベルの高さがある台湾はいいチームだと感じました。2026年3月に開催されるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に呼ばれ、もし台湾との対戦で先発の機会をいただけたら、ぜひともリベンジしたいです。
中川 今回、初めて侍ジャパンのユニフォームに袖を通してプレーしました。代表への思いは強くなりましたか?
才木 はい。やっぱりまた呼ばれたいですし、呼ばれるように日々頑張りたいです。
中川 初めての代表という割には、投手陣からは"才木ジャパン"といわれるほどチームに溶け込んで、ムードメーカー的な存在になっていましたよね。
才木 いや、僕はそんな。根はけっこう"陰キャ"ですしね(笑)。人見知りも激しいんで、合流して最初の2日間とかは存在感ゼロでしたよ。
中川 そんなわけはないでしょう(笑)。でも、プレミア12はひとつの大きな糧になりましたか?
才木 それはありますね。いろんな方とコミュニケーションも取れましたし。なので、次の国際大会であるWBCにはやっぱり出たいです。メジャーリーグでプレーしているピッチャーが多く招集される可能性は十分あるわけですが、そんな投手陣の中に割って入り、再び日本代表の先発として投げたいです。