![山本萩子](/author/images/5fc1555b19995261dab97c30779717342f9e5f84.jpg)
山本萩子やまもと・しゅうこ
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。
私の夢は、スポーツ記者になることでした。
野球が大好きでも、プレーヤーになることは球技センスが皆無な私にとっては最初から選択肢にありませんでした。だから、文章が書くことが好きだった私にとって、「野球と一番近くにいられる仕事=記者」というのがとても魅力的に映りました。
あまり夢がなかった私にとって、記者という仕事は"天職"だと思っていましたが、いろんなご縁があって、気づけばキャスターという仕事についていました。そんな形で野球に関わるとは思ってもいませんでしたが、記者の方と接することも多く、お仕事の大変さ、素晴らしさに感銘を受けることがたくさんあります。
記者とはどんなお仕事なのでしょう。テレビや新聞など、媒体は違えど、一番大事な仕事は「読者の知りたいニュースを届けること」でしょうか。ただ、球場に足を運んだだけで、ニュースが転がり込んでくるわけではありません。選手から直接、情報を引き出すことが大事なミッションです。
先日、『サンケイスポーツ』のヤクルト担当の方とお話しさせていただく機会があったのですが、物腰が丁寧でとても話しやすい方でした。相手の懐に飛び込んで、信頼を得た上でいろんな話を引き出す。そのためには、キャラクターもとても大事なのではないかと思います。
「ネタを引っ張る」と表現するように、情報を取ってこられるかどうかが腕の見せ所。一般的には、各球団に担当記者がひとりずついて、ニュースのタネを日々探す。シーズン中はもちろん、オフもチームに張りついて、朝から選手と同じスケジュールで動く。相当タフな仕事でしょうね。
濃厚な日々の連続で、朝から晩まで担当チームのことを中心に考えているわけですから、説得力が違いますね。そうしてつながりを作ったスポーツ記者が、取材対象の選手に関する書籍を出版することもあります。小さな話題をいたずらに広げるのではなく、たくさん取材したなかで「これ」という記事を提供してくれることに価値が生まれるものなのでしょうね。
取材中の1枚。現場でも記者のみなさんから学ぶことが山ほどあります。
最近では「オールドメディア」と揶揄されることのある新聞やテレビですが、記者さんたちが日々、足を棒にして情報を獲得していることには尊敬しかありません。今風に言えば「コスパがいい仕事」とは言えないかもしれませんが、取材を続けることで得られるものがあるのは明らかで、そうして幾重にも積み上げられた情報がニュースの厚み、情報の信頼性を創り上げてきたのでしょう。
そういった記者の方々は、寡黙な選手からも情報を引き出してニュースにしてくれます。スポーツ新聞も隅々まで読むと、あまり知識がなかった選手のエピソードを読むことができて、とても気になってしまう。そんな経験ができることは、すごく幸せですよね。
このコラムでもお話ししたサイ・ヤング賞は、全米野球記者協会に所属する記者による投票で決まります。その投票は記名式で、投票者は大きな責任を背負います。近年では署名記事も増えましたし、自分の名前で仕事をする責任を負うことの重責は計り知れません。
さて、ここまで記事を書いていて、「今から記者になるとしたらどんな記者になりたい?」という質問をコラムの担当さんから受けたので、誠心誠意お答えします。
・相手に興味を持つ
・ミーハーな質問もどんどんする
・その上で「あの場面でなぜあの球を投げたのか」と個人的な興味をどんどんぶつける
・ファン代表としての気持ちを忘れない
個人的には、ライバルチームを利するような情報は書きづらい、といった思いもありますが、そういう意味で、私の書く文章は思いが強すぎて「ポエムか!」とデスクに怒られるかもしれませんね。
多少の思い入れはあれど、公平に情報を届けなくてはいけない記者という仕事はとても難しいものなんですね。記者もまたプロフェッショナル。心に残った記事のクレジットを見ると、より記者というお仕事を意識できるかもしれません。
それではまた来週。
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。