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山本萩子やまもと・しゅうこ
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。
海の向こうで活躍しているのは、大谷翔平選手を筆頭としたメジャーリーガーだけではありません。アマチュア球界でも、スタンフォード大学に進学した佐々木麟太郎選手の試合結果は日本でも大きなニュースになります。MLBのドラフトではアメリカの大学に通う選手が対象になりますから、佐々木選手は将来のメジャー入りが既定路線とも言えるでしょう。
スタンフォード大学は世界有数の大学ですが、メジャーからDeNAにやってきたトレバー・バウアー投手も、アメリカ屈指の名門校UCLAの出身。大卒選手はメジャーでもプロ野球でも欠かせない存在です。
日本のプロ野球は高卒・大卒(次いで社会人)という順番で新人が入ります。昭和の時代は高卒ルーキーのほうが圧倒的に多かったのですが、平成を経た現在は大学卒業選手がどんどん増えて、高卒選手に迫ろうかという伸びを見せています。
一方のMLBでは、高卒よりも大卒が多いという数字があります。
これは日本でも言えることですが、アスリートとしてプロ仕様の体に完全になりきっていないままプロ入りするよりも、大学を経てプロ入りしたほうが活躍できる可能性が高いという選手側の思惑が大きいようです。また、引退後のセカンドキャリアを考えた時に、大学卒業という資格を手に入れておきたいという狙いもあるのかもしれません。
バウアー投手とUCLA時代に同級生だったのが、ヤンキースのゲリット・コール投手です。コール投手は高校卒業時にドラフトにかかりましたが、それを蹴って大学進学を選びました。ドラフト1巡目での指名を拒否するのは、異例とも言える事態で大きな話題になりましたが、それはコール投手の進学の意思が固かったから。その答えは、大学野球を取り巻く環境にありそうです。
「大学のディビジョン1でプレーすることが僕の夢でした」
これは、コール選手の言葉です。
愛する神宮球場も、学生野球の聖地。ナイターの試合に向けて取材に行くと、昼間も球場の外まで声援が響いています。
日本のアマチュア野球で人気が高いのは「甲子園」、すなわち高校野球ですが、アメリカでは大学スポーツがとても盛んで、カレッジスポーツは何万もの観客を動員します。甲子園を夢見る球児のように、大学の華やかな舞台でプレーすることを夢見る選手がとても多いのでしょう。これも、アメリカのアマチュア選手の大学進学を後押しする理由のひとつです。
大学で学業をしっかり修めることができるのも大きいでしょう。
アメリカの大学では、単位を落としたりすると試合に出ることができません。運動部だからといって優待されることもありません。学業面でも入学時からの継続した努力が求められます。文武両道を実践しているからこそ、応援される資格があると考えているのです。
ちなみに、アメリカでは大学3年以上がドラフトの対象となり、指名されればその時点でプロ入りできます。さらに、中退ではなく大学に籍を残して、プロ入り後のオフシーズンに大学で学んで卒業資格を得ることもできます。プロになるまで4年待たなくていいという点では、日本における社会人に近いかもしれませんね。これも進学へのハードルを下げていると言えるでしょう。
2025年7月には、日米大学野球があります。過去大会には森下暢仁投手(広島)、伊藤大海投手(日本ハム)、牧秀吾選手(DeNA)、森下翔太選手(阪神)など、現在の日本を代表する選手たちが出場しています。さらに、今のメジャーリーグで活躍を続ける選手たちのなかにも、日米大学野球でプレーした経験がある選手たちが多くいます。
大学野球のことを地味だと思っている人がいたとしたら、それはもったいない。未来のスターが間違いなくそこにいるのですから。
大学野球って面白いじゃん。この記事を読んで、少しでも日本とアメリカの大学野球に関心を持ってくれたら何より幸せです。
それではまた来週。
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。