「二軍球場」について語った山本キャスター 「二軍球場」について語った山本キャスター

先日、ヤクルト対巨人のオープン戦の中継をつけた瞬間、テレビの前でしばし動けなくなりました。それは、テレビに映るスタジアムがあまりにも美しかったからです。

その日の試合が行われたのは、巨人軍の新ファーム球場「ジャイアンツタウンスタジアム」でした。全体的に明るい人工芝で、マウンドからホームベースまで"道"ができているこだわりなどは、メジャーのスタジアムを彷彿させます。

外野席は芝で、昔のようにのんびりとシートを敷いて観戦するファンの姿もあり、選⼿とファンの距離が近く、それは素晴らしい光景でした。

ファームの試合がない日は、イベントなどを積極的に行なう「多目的球場」と位置づけられており、さらに2027年には、水族館と飲食施設も完成予定です。隣接した遊園地もありますし、この一帯を「ジャイアンツタウン」としてブランディングし、球場自体の集客能力を高めたいという狙いがあるようです。

一番身近なモデルは、日本ハムの本拠地球場のエスコンフィールドでしょう。その"仕掛け人"でもある前沢賢・球団取締役と対談をしたことがあるのですが、前沢さんがおっしゃっていたのは「滞在時間を長くしたい」ということ。それを見事に現実のものにしています。

かつての二軍球場といえば、厳しい環境も当たり前でした。アメリカでは、メジャーとマイナーでの施設の格差をあえて作ることで、ハングリー精神を掻き立てていると聞いたこともあります。

ただ、現在のプロ野球においては、二軍施設を単なる練習と調整の場としてだけでなく、それ単体でもお客さんを呼べるような魅力を創出することを意識していて、とても今っぽくて興味深い取り組みだと思いました。我がヤクルトの埼玉県戸田市にある簡素な二軍球場も、茨城県守谷市に移転することが決定しています。

いつか足を運んでみたい素敵な球場が、日本にもたくさんありますね!球場行脚、しようかな いつか足を運んでみたい素敵な球場が、日本にもたくさんありますね!球場行脚、しようかな

二軍施設といえども、魅力的な場所にする。その場所が誰にとっても魅力的であれば、野球ファン以外も足を運んでくれます。そして訪れた人が、その球団のファンになるかもしれません。

選手も整った最新施設でいい練習ができますし、多くのお客さんが集まれば選手の意識も変わるでしょう。ファーム施設が大きな利益を出せるようになれば、それがチームの資金となり、チーム力の底上げにつながる。なにやら、いいことづくめです。

個人的な意見ですが、二軍の球場は「選手との距離の近さ」が魅力だと思っています。ヤクルトの二軍が練習をする戸田球場で、泥だらけになって走り回っていた選手を間近で見ると、親のような気持ちになって「頑張れ」と言いたくなるんです。

そしてその選手たちのことは、一軍に上がっても二軍にいても、いつまでも身内のような気分で応援したくなります。ファームの球場がどれだけ立派な施設になっても、その距離感は近いままにしてほしいとも思います。

ちなみに、ボールパークの先駆者エスコンフィールド周辺には、マンションを建てる計画があるとか。ジャイアンツタウン近くにマンションが建つこともあるかもしれません。そうしたら毎日野球を身近に感じることができますし、ファン冥利に尽きますよね。好きな選手の背番号と同じ部屋番号にしたりして(笑)。

神宮球場周辺のマンションに住むのはヤクルトファンにとって最大の夢ですが、今後は守谷市のヤクルト二軍新球場近くのマンションが人気になるかもしれませんね。それではまた。

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山本萩子

山本萩子やまもと・しゅうこ

1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。

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