オグマナオトおぐま・なおと
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。
大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希を擁するドジャースと今永昇太、鈴木誠也を擁するカブスが東京ドームで激突! 阪神、巨人とのプレシーズンゲームも含め、大盛り上がり必至の「MLB東京シリーズ」で特に見逃せない"勝負"とは!?
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ドジャースとカブスによるMLB開幕シリーズの前には、阪神、巨人がそれぞれ、カブス、ドジャースとプレシーズンマッチを行なうことになっている(3月15、16日)。
特に〝世界一球団〟ドジャース相手に活躍できれば、将来的なMLB挑戦を狙う者にとっては絶好のアピールとなる。そこで、活躍が期待できる阪神、巨人の選手を投手と野手に分けて『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏にピックアップしてもらおう。
まず、お股ニキ氏が名前を挙げたのは阪神の160キロ右腕、ハビー・ゲラだ。パドレス時代の2018年にショートとしてMLBデビューし、そこから投手に転向した異色のキャリアを持つ。来日1年目の昨季は59試合に登板するタフネスぶりを見せ、1勝4敗14セーブ31ホールドの成績を残した。
「オープン戦を見ましたが、昨季以上にレベルアップしており、今すぐ開幕しても大丈夫なほど仕上がっていました。阪神の抑えとして42セーブを記録してMLBへステップアップしたロベルト・スアレス(現パドレス)のように、力量は十分にあります。
阪神の指導方針なのか、投球フォームもスアレスに似てきました。スアレスと同じ道をたどり、古巣のパドレスへ〝逆輸入〟される可能性もあります」
今春、侍ジャパンに初選出された石井。ここ3年間は安定した投球が続いている
ほかにも、阪神リリーフ陣からは昨季56試合登板で4勝1敗1セーブ30ホールドの石井大智の名前が挙がる。
「石井は175㎝と小柄でそれほど目立ちはしませんが、柔道の背負い投げのようなフォームから浮き上がる軌道の力強い速球と、鋭いフォークやシンカー、スライダーを投げます。
2年連続で防御率1点台、3年前は0点台と安定感も抜群。低いリリースポイントから浮き上がるストレートと落ち球を投げる投手はMLBで通用する傾向があるので期待できます」
もうひとり、4年連続で60試合前後の登板数を誇る鉄腕、33歳の岩崎 優(いわざき・すぐる)にも注目する。
「MLB適性という意味で、以前から注目していた投手です。石井同様、低いアングルから浮き上がる独特の軌道はまさにMLB向き。メンタルも強いだけに、向こうでもリリーフができる力は十分にあります。
阪神との契約は35歳を迎える来季まで残っているみたいですが、菅野智之(オリオールズ)のようにオールドルーキーとして注目を集めれば夢がありますよね」
巨人のリリーフエース大勢。昨季は43試合登板で0点台を記録するなど別格の存在感を放つ
一方、巨人でまず名前が挙がったのはリリーフ陣だ。
「大勢の球のすごさは別格です。実はMLBセーブ王の経験もあるエドウィン・ディアス(メッツ)の一番いいときくらいの球を投げています。WBCでは大谷翔平も大勢の投球にうなずくシーンもありましたが、ふたりの対決が今回見られたら最高ですね」
巨人と4年契約を結んだばかりのライデル・マルティネスはキューバ出身ということもあり、MLB挑戦の可能性は低いかもしれないが、MLBスカウト陣を驚かす可能性は十分ある。
「少し落ちてきたとはいえ、スアレスと同レベルの力があり、誰が見てもすごい。MLBの打者でも簡単には打てないと思います」
先発陣では3年連続12勝と安定感抜群のエース、戸郷翔征の名前が挙がった。
「MLBでも活躍した上原浩治(元巨人ほか)さんのような感じがあるので、そこをどう評価されるか。もうひとつ突き抜ける何かが欲しいところですが......。ほかにも巨人では23歳コンビの井上温大(はると)、堀田賢慎など、いい状態のときの球の質ならMLB相手にも通用する可能性はあります」
続いて野手はどうか? ドジャース先発は巨人戦がタイラー・グラスノー、阪神戦は今季加入のサイ・ヤング賞左腕、ブレイク・スネルが予定されている。このふたりに加え、昨季のワールドシリーズ制覇に大きく貢献した質の高いリリーフ陣を相手に、評価を高める巨人&阪神の打者は誰なのか?
「スネルを攻略しそうなのは阪神の近本光司ですね。左投手の曲がり幅の小さいスライダーを得意としています。スネルに限らず、メジャーリーガーはスラッターをよく投げるので、近本はうまく対応しそうです」
今季から4番を任される森下。外から巻き込むスイングでMLBの投手も苦にしないだろう
今季から阪神の4番を任される森下翔太にも注目する。
「森下はキャンプでの仕上がりが相当良く、レベルがさらに上がった印象です。外から巻き込むスイングをする打者なので、右投手のスライダーをうまく攻略するでしょう。対戦はしないと思いますが、グラスノーのスラッターも森下なら打てると思います」
将来的なMLB挑戦願望を表明している佐藤輝明(阪神)はどうか?
「パワーは日本人屈指。今季の軽くスイングする形なら、打てる可能性はあります」
MLB挑戦の噂が絶えない岡本。外国人投手も苦にせず、WBCでも結果を残した
一方の巨人では、今オフのMLB挑戦の噂が絶えない岡本和真が通用するのかどうか気になるところだ。
「23年のWBCでも証明したように、パワーでもMLBの打者に引けを取りません。ここ数年はかち上げて打とうとしていましたが、本来は高めの球もしっかりととらえられるタイプ。ブレイクした当初のスイングのほうが形は良く、MLBでも打てると思います。
WBCで良かったように、例年、春先の調子が良く、今季も現段階では絶好調の形になっているので期待したいです」
また、注目すべきはアピールできた選手だけでなく、メジャーリーガー相手に何かを学べる若手がいるかどうかだ。
振り返れば、2年前のWBC強化試合で阪神の才木浩人は大谷翔平に〝片手膝打ち本塁打〟を浴びたが、それをきっかけに知名度を高めて同年8勝をマーク。昨季は13勝3敗、リーグ最多タイの4完投、同最多の3完封と飛躍した。
今回のオープン戦でも同様に、MLBのスタープレーヤーとの対戦を飛躍のきっかけにする選手が出てくれば面白い。MLB開幕シリーズに先駆けて、盛り上がる要素は満載だ。
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。