昨季、4月と9月に2度対戦。リーグMVPを受賞した大谷をルーキー今永が完璧に抑え込んだ 昨季、4月と9月に2度対戦。リーグMVPを受賞した大谷をルーキー今永が完璧に抑え込んだ

大谷翔平山本由伸佐々木朗希を擁するドジャースと今永昇太鈴木誠也を擁するカブスが東京ドームで激突! 阪神、巨人とのプレシーズンゲームも含め、大盛り上がり必至の「MLB東京シリーズ」で特に見逃せない"勝負"とは!?

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■大谷が苦手な今永のストレート

もはや国民的関心事と言えるドジャース対カブスのMLB開幕2連戦(3月18、19日)。1回表はドジャースの攻撃から始まるため、大谷翔平(ドジャース)が1番・指名打者で起用されれば、カブスの開幕投手を務める今永翔太との日本人対決がいきなり実現する。

「大谷はオフに受けた左肩亜脱臼の手術の影響が懸念されましたが、オープン戦序盤から本塁打を放つなどバッティングの形は悪くなく、昨年の状態を継続できています。

一方の今永は、NPB時代は好調だったシーズンの翌年に成績を落としたり、故障したりする〝隔年傾向〟がありましたが、MLB挑戦後は投げ方が良くなっているため、今季もそれほど落ちないはず。

ドジャース打線は昨季のデータを踏まえ、どれだけアジャストできるか。今永は昨季のいい状態をいかにキープできているか。そこが見どころです」

こう語るのは『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏だ。この注目の日本人対決について、さらに深掘りしてもらおう。

昨季は4月と9月に2度対戦して5打数0安打。大谷にとって、今永は天敵とも言えるが、その要因は何か?

「データ的に、大谷が苦手にしているのは右投手のライズカッター(カット気味に伸びる球)と膝下へのスラッター。食い込み気味の球に弱い、と言えます。

今永のストレートはMLBでも屈指の球質を持つシュートライズする球なので、大谷には非常に効果的でした。このストレートと対をなす、外角低めへのスイーパーもうまく機能しました」

大谷翔平(ドジャース) 大谷翔平(ドジャース)

改めて、今永のストレートはなぜMLBで有効なのか?

「もともとNPB時代から質のいいストレートを投げており、国際大会でも通用していました。そのストレートもただ投げ込むのではなく、低めに投げそうな雰囲気を出しながら高めに投げたり、その逆をしたりするなど、投球術が巧みです。配球にもかなり気を配っており、ストレートに関しては天才的な感覚を持っていると言えます」

〝風の街〟と呼ばれるシカゴの気候も今永に味方した。

「カブスの本拠地、リグレー・フィールドは風が強く、昨季はシーズンを通して投手にとっての追い風、打者にとっての向かい風が続きました。結果的に空振りが増え、外野への飛球がフェンス手前で失速するシーンも多かった。開幕戦は東京ドームで風がないので、それがどう影響するかは気になります」

ちなみに、今永のストレートの昨季平均球速は92マイル(約148キロ)。MLBの平均よりも2マイル(約3キロ)遅かった。

「球が速くはない分、浮き上がる時間が長いというか、なかなか落ちてこない。ストレートなのにチェンジアップ的な効果が生まれます」

このストレートを武器に、昨季開幕直後の初対戦では大谷から空振り三振を奪った今永。ただ、このときの大谷に関しては、当時の「異様な状況」も加味したほうがいい、とお股ニキ氏は語る。

「超大型契約からのデビューによる気負い、韓国での開幕という特殊な状況に加え、元通訳の違法賭博問題まで発覚。今季はワールドシリーズを制覇して迎える2年目、かつ日本での開幕なので、昨季よりは自然体で臨めるはずです」

■今永は第1球に何を投げるのか?

大谷の状態も確認しておこう。オープン戦の初打席では、菊池雄星(エンゼルス)相手にいきなりホームランを放つなど、上々の滑り出し。ここまでのキャンプやオープン戦でのスイングから、今季の調子をどうみるか?

「まだサンプル数が少ないものの、だいぶ自分の形ができているようで、昨季のいい状態のまま、完成形に近づいている印象です。二刀流復活の影響や亜脱臼した左肩の状態を抜きにすれば、3割50本を期待できるスイングです。打者としては今がまさに全盛期と言っていいと思います」

今永に限らず、「大谷は日本人投手が苦手」といった分析をされることもあるが、実際のところはどうなのか?

「昨季のダルビッシュ有(パドレス)は大谷が苦手にするインハイへのカッター、膝下へのスラッターを徹底しながらカーブとスプリットを織り交ぜるなど、『大谷には絶対打たれたくない』という先輩としての意地が見える投球でした。

その結果、『大谷は日本人投手を攻めあぐねている』という印象を持つ人が多いのかもしれませんが、オープン戦でホームランを打った菊池に対しては昨季まで打率.304、3本塁打とむしろお得意さま。

今永ほど浮き上がらないストレートと小さいスライダーは大谷にとってくみしやすい。決して日本人だから苦手、といったことはありません」

今永昇太(カブス) 今永昇太(カブス)

最後に、〝開幕投手〟今永vs〝先頭打者〟大谷を改めて考察したい。2025年のMLB全体の幕開けを告げる第1球として、今永は何を投げ、大谷はどう対峙するか?

「こればっかりは正直わかりませんが(笑)、スライダーもありそうな一方で、高めストレートは相手がわかっていてもファウルになる公算が大きい。今永自身も自信のあるボールですし、第1球に選ぶ可能性は十分あると思います」

今永としては、まずは大谷を抑えて幸先のいいスタートを切りたいところ。一方の大谷も昨季はシーズン1号が遅かっただけに、期するものはあるだろう。「開幕初打席先頭打者アーチ」での幕開けを期待するファンも多いはずだ。

「MLB全体の傾向として、1番打者の『初球ストレート狙い』での先頭打者アーチは増えています。その意味で、大谷も今永の『初球ストレート』をしっかりと狙ってくるかもしれません」

いきなり実現しそうな日本人選手同士の力勝負。空振りでもファウルでも本塁打でも、東京ドームが震撼するのは間違いない。

オグマナオト

オグマナオトおぐま・なおと

1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

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