35歳にしてメジャーデビューを果たしたオリオールズの菅野。まずまずの投球で初勝利を挙げたが、さらに飛躍できるか
今季のMLBでは大谷翔平や山本由伸、佐々木朗希を擁する、昨季王者のロサンゼルス・ドジャースに大きな注目が集まっている。
また、そのドジャースと日本で開幕シリーズを戦い、鈴木誠也、今永昇太が所属するシカゴ・カブスの試合を楽しみにしている日本のファンも多いだろう。ただ、今年アメリカで活躍しているのはこの5人だけではない。
その2チーム以外で最大の注目を集めている日本人選手は、ボルチモア・オリオールズ1年目の菅野智之だ。巨人で通算136勝を挙げ、35歳にしてメジャー入りした〝オールドルーキー〟。オリオールズと1年1300万ドル(約19億円)で契約し、直近2年連続でプレーオフに進んだ強豪チームの先発ローテーション入りを果たしている。
敵地でのメジャー初登板となった3月30日(現地時間。以下同)のトロント・ブルージェイズ戦では、4回2失点とまずまずの投球。4月5日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦では6回途中まで1失点でまとめてメジャー初勝利を挙げた。
さまざまな球種を制球良く投げ分ける菅野の投球術は、本場でも十分に通用している印象がある。菅野自身も開幕直後から、「やりたいことはできている。ストライクを先行できたバッターに対しては、向こうのいい結果にはなってない」と手応えを感じていた。
とはいえ、100マイル(約160キロ)の速球や、メジャーの打者を圧倒するような球威があるわけではなく、甘く入った失投は軽く運ばれる危険がある。
本拠地ボルチモアでの初登板となった4月12日のトロント・ブルージェイズ戦では、5回途中までに8安打3失点を許す厳しい内容に。それでも大崩れしない制球力と安定感はあるものの、菅野の登板はミスが許されないスリリングなものであり続けるだろう。
「しっかりと準備して、今日の反省を生かせるようにやっていきます」
厳しい登板後でもそうやって前を向いた菅野は、長く夢見てきたメジャーの舞台でどんな物語を紡いでいくのか。速球派全盛の現代MLBの中で、その円熟味でどれだけ輝けるのか興味深い。
13イニング連続無失点を記録するなど、好投を続ける千賀。昨季はケガなどで不本意な結果に終わったが復活を果たせるか
一方、メジャー3年目を迎えたニューヨーク・メッツの千賀滉大はいい滑り出しを見せている。4月7日のマイアミ・マーリンズ戦で5回無失点と好投し今季初勝利を挙げ、同13日のオークランド・アスレチックス戦では7回無失点で2勝目。初登板の最終イニングから合計13イニング連続無失点を続け、ニューヨークのファンを喜ばせた。
1年目の2023年にいきなり12勝をマークし、防御率2.98で新人王投票2位、サイ・ヤング賞投票でも7位に入った千賀。代名詞の〝ゴーストフォーク(お化けフォーク)〟はアメリカでもおなじみになり、このままメッツのエースになっていくかと思われた。
ところが昨季は、右肩、左ふくらはぎのケガに悩まされ、シーズン中の登板は1試合のみ、プレーオフでも3試合で防御率12.60と苦しんだ。そんな厳しい一年の後だからこそ、今季にかける思いは強いはずだ。
「なかなか試合でも思うようにいかないことが多いですが、自分の中ではいい感じにビルドアップできている。もう80、90%くらい(の状態に)はきているんじゃないかなと思います」
完全ではないコンディションでも無失点を続けられるなら、100%になったらどれだけの投球で魅せてくれるのか。メッツの方針どおり、千賀は最初の3登板では一度も80球以上を投げていない。今後、その制限が外れれば投げられるイニング数も増え、さらに支配的な投球をすることも期待できる。
FAの目玉だったフアン・ソト外野手を加えたメッツは前評判が高く、2年連続プレーオフ進出への期待も膨らむ。東海岸の強豪チームで千賀が完全復活すれば、ニューヨークのベースボールはさらに盛り上がるに違いない。
今季からロサンゼルス・エンゼルスに移籍した菊池雄星は、メジャーでは自身初の開幕投手を任された。だが、最初の3試合では0勝2敗、防御率5.00とまだ結果が出ていない。全体の投球内容が悪いわけではないものの、4本の被本塁打が命取りになっている印象だ。
大谷が所属した時代から低迷を続けるエンゼルスだが、最初の15戦で9勝を挙げ、ア・リーグ西地区首位を走る好スタート。オフに3年6300万ドル(約97億円)で入団した菊池も早い段階で本領を発揮し、躍進を目指すチームを引っ張ってほしいところだ。
サンディエゴ・パドレスの松井裕樹は、中継ぎの一角として16戦終了時点で6戦に登板し、そのうち5戦で無失点。防御率1.50、合計6イニング中12奪三振と内容も優れており、今後も重要な場面で起用されていきそうだ。
パドレスではダルビッシュ有が右肘の炎症で出遅れていることもあり、ブルペンの働きが大切になる。メジャー1年目の昨季は中盤以降にやや息切れした印象もあったが、今季はシーズンを通じた活躍ができるか。
タイガースの前田は崖っぷち。中継ぎでも苦しんでいるが、ここから結果を残して目標とする先発ローテ入りを果たしたい
デトロイト・タイガースの前田健太は、今季は先発ローテーション入りを目標としていたが、オープン戦中に胃の不調を患うという不運もあって、それを果たせなかった。開幕後は中継ぎの一角として登板するも、最初の2戦では合計3イニングで5失点。37歳の右腕を取り巻く環境が厳しいことは間違いない。
ただ、長いシーズンの中では故障者も出る。メジャー10年目のベテランの力が必要になる時期も来るに違いない。
「いい結果を残し続けて、また先発できるような状況になれば。腐らずにアピールし続けたい」
最近は日本球界復帰の可能性をほのめかすことも増えた前田だが、メジャーでもう一度、意地を見せてくれることを楽しみにしている。