
板倉 滉いたくら・こう
1997年1月27日生まれ、神奈川県出身。日本代表CB。川崎Fでプロ入り、2019年に1シーズン在籍したベガルタ仙台からイングランド1部マンチェスター・Cへ移籍。その後、オランダ1部フローニンゲン、ドイツ2部シャルケを経て、現在はドイツ1部のボルシアMGに在籍。
W杯出場を決めたアジア最終予選では休みなく8試合に先発出場し、独ブンデスリーガでも2試合を除き、すべてスタメンフル出場。過密なスケジュールの中、活躍を続ける板倉 滉はいったいどのようにしてケガなくパフォーマンスを維持しているのか、その秘訣に迫る。
日本代表で来年のW杯出場を決められてひと安心したのもつかの間、所属先では上位争いの正念場を迎えている。
3月25日(日本時間)、埼玉スタジアムでのW杯アジア最終予選サウジアラビア戦を終えた後、とんぼ帰りでドイツに戻り、4日後にはボルシアMGのメンバーとしてブンデスリーガ1部・第27節ライプチヒ戦に先発フル出場した(1-0で勝利)。
振り返ってみれば、去年から始まったW杯アジア最終予選ではすべて先発出場、クラブでも、胃の不調で欠場した第19節ボーフム戦と累積警告で出られなかった第25節のマインツ戦以外は、先発フル出場が続いている。
それぞれ、フルに近い出場を続けられる秘訣についてよく聞かれるので、僕なりの取り組み方をここで紹介してみたい。
柱は3本ある。まずは食事だ。現在、専属シェフの池田晃太さんに日々お世話になっている。僕は連戦が続くと、どうしても体重が落ちてしまうタイプで、そのままにしておくと、パワーやスタミナが落ちる。
そのため、試合後にすぐ、栄養のバランスを考えた食事が用意されているとありがたい。その点、池田さんは毎食栄養面や体重の維持などを考慮したメニューを用意してくれる。試合後、食欲があまり湧かない僕でも、スムーズに食べられるメニューを用意してくれるので、本当に感謝しかない。
日々の練習後もプロテインとバナナの摂取は欠かせない。加えて、間食も取るようにしている。そうしないと体重を維持することができないからだ。今はフィジカル強化のため、体重を徐々に増やしている段階なので、間食は絶対に欠かせない。そこで池田さんはグラノーラ入りクッキーや、最近だと団子とかを作ってくれる。
欧州挑戦の始め、僕はオランダのフローニンゲンで専属シェフを雇っていたが、ドイツのシャルケに移籍する際、引っ越し先のデュッセルドルフには日本人街があって食材も充実していると知り、自炊生活に戻した。だが、それだとやはり体の調子はイマイチで、パフォーマンスの低下を痛感した。
そんな中、タイミングとご縁があり、池田さんと出会うことができた。やはり食の力は大きい。日々、池田さんの食事が源になり、パフォーマンスの安定につながっている。
2本目の柱は睡眠。基本的に毎日7-8時間は寝るようにしている。それと、もうひとつ僕にとって大事なのは、昼寝だ。午前練習が終わって帰宅後、昼食を取り、その後なるべく昼寝をするようにしている。
ただ、時間を決めてきっちり起きるといったストイックな形ではなく、いったん起きてみて、まだ眠いようなら二度寝するぐらいのもの。決して徹底して管理しているわけではないが、するのとしないのとでは翌日のパフォーマンスに大きな違いがある。
ちなみに夜の就寝についても、あまりストイックな感じではない(笑)。ベッドに寝そべって、iPadで好きな映画やドラマを見ながら、いつの間にか寝落ちするのが定番になっている。
体力を回復させるには昼寝が良い選択だという話は周りの選手からもよく聞く。僕だけじゃなく、選手にとって眠りは大事な要素だ。
今でこそ体のケアに気をつけるようになったが、数年前までは無頓着だった。育成年代から大きなケガは経験していなかったし、ストレッチもさほどせずとも、プレーはある程度できていたからだ。
だが、現在は最低でも週1は専門のスタッフによるストレッチ、サウナとアイスバスによる温冷交代浴といった疲労回復につながるメンテナンスを欠かさず行なっている。
サッカー選手というのは、常にケガと隣り合わせだ。僕も22年W杯カタール大会直前に右膝内側側副靱帯の部分断裂、そして23年に左足首の手術を経験して、それを痛感させられた。予防できることは予防する。これに尽きる。
そして最後の柱は〝無理をしない〟こと。代表とクラブのかけ持ちで過密日程の中、休養が取れるタイミングでしっかり休まないとパンクしてしまうからだ。かつての自分だったら、足に痛みを感じるとか、体に違和感を覚えたとしても、「それがプロの世界だ」と耐えて試合に出ていたし、それなりのプレーはできると思い込んでいた。
僕を含めて日本人は我慢する傾向にある。今思うと、僕も左足首の手術の前まではかなり無理をしていた。でも、結果はどうだったか。お世辞にも良かったとは言えない。
ベストパフォーマンスを出せないのであれば、一度リセットしてしっかり治し、休むべきだと学んだ。
食事、睡眠、無理をしない。僕が今までの経験から学んだ、安定したパフォーマンスを出すための3本柱である。
1997年1月27日生まれ、神奈川県出身。日本代表CB。川崎Fでプロ入り、2019年に1シーズン在籍したベガルタ仙台からイングランド1部マンチェスター・Cへ移籍。その後、オランダ1部フローニンゲン、ドイツ2部シャルケを経て、現在はドイツ1部のボルシアMGに在籍。