今季、本拠地では1勝8敗と辛酸をなめるソフトバンク・小久保監督。人材流出、ケガ人続出が響いたか 今季、本拠地では1勝8敗と辛酸をなめるソフトバンク・小久保監督。人材流出、ケガ人続出が響いたか

開幕から1ヵ月。日米の野球界で巻き起こったさまざまな"波乱"を徹底解説する!【プロ野球・MLB「春の異変」②】

■ビジターは全球団勝ち越し

「春の異変」の中でも特に不可思議なのが、パ・リーグ勢の外弁慶ぶりだ。7カード終了時点では全球団がホームゲームで負け越し、ビジターゲームでは勝ち越している。お股ニキ氏も「見たことがない」と語るほどの異常事態だ。その原因はなんなのか?

ひとつ目は、今季も続く「投高打低」で逆転が難しく、サッカーのPK戦のように先攻が有利だから、という考えだ。

「当然、先攻のビジター側のほうが先制点を挙げる可能性が高いため、先行逃げ切りで勝つケースが増えているのではないでしょうか」

ふたつ目は、日本的なおもてなしの姿勢。最近はビジターチームに対しての演出を凝る球団も多い。その弊害が出ていないか、という視点だ。

「ビジターのファンにも足を運んでもらい、お金を落としてもらいたいのはわかります。それでも、もっと自チームの演出を優先し、ビジター側はさらっと紹介する程度でいいのではないでしょうか。

1回表にビジター側へ過度の演出をしている間、待たされる自チームの先発投手のコンディションにも気を配るべきです。ほかにも、ビジターチームの練習環境を手厚くするのもやりすぎ。ホームアドバンテージが生み出せていない球団が多い気がします」

3つ目は、ホームなのに声援が少ないこと。今季は例年に比べ「各球場で空席が目立つ」という意見は多い。その要因として、今季から導入された「試合中の写真や動画のSNS投稿の禁止」が影響しているのではないか、とお股ニキ氏は語る。

「近年、集客の一部を担っていたのは推し活女子たち。お気に入りの選手を撮影して投稿したくて球場に来ていたのに、それができないとなれば、球場から足が遠のいても不思議ではない。明らかに時代の流れに逆行しています」

ちなみに、本拠地で最も勝てていないのがソフトバンクだ。現在、1勝8敗と辛酸をなめている。

「昨季まで福岡で絶対的な強さを誇っていただけに意外ですが、ソフトバンクはホームやビジターうんぬん以前にケガ人が多すぎる。近藤健介、柳田悠岐、栗原陵矢の主力組に加え、注目株の正木智也まで負傷。

そもそも甲斐拓也(巨人)が抜けた穴が大きい上に、離脱の連鎖が止まりません。その上、プランに執着し、不測の事態への対応力に欠けるため、あらかじめ定めた計画以外の事象が発生するとうまく対処できません」

結果として、優勝候補の大本命のはずが、12年ぶりの単独最下位に沈むソフトバンク。この事態こそ、この春一番の異変なのかもしれない。

*成績は日本時間4月22日時点

オグマナオト

オグマナオトおぐま・なおと

1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

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