開幕から3試合に登板し、自責点14、防御率11.12と打ち込まれた巨人・戸郷。2軍で調整後の復活を期待したい 開幕から3試合に登板し、自責点14、防御率11.12と打ち込まれた巨人・戸郷。2軍で調整後の復活を期待したい

開幕から1ヵ月。日米の野球界で巻き起こったさまざまな"波乱"を徹底解説する!【プロ野球・MLB「春の異変」③】

■エース戸郷がまさかの2軍落ち

日本のプロ野球では、開幕直後、各球団のエース級が打ち込まれた。髙橋宏斗(中日)は開幕戦で6回途中5失点、伊藤大海(日本ハム)も今季初登板のソフトバンク戦で5回5失点を喫した。

「髙橋と伊藤は初戦の登板日が明示されていて、相手からすると対策が立てやすかったのは確か。実際、ふたりとも癖を見抜かれていたのか、変化球を狙い打ちされていました。

ただし伊藤の場合は、球が良すぎて奪三振能力も高いため『制圧してやろう』と色気が出てしまって、少し雑になっていました。それでもスプリットとツーシームはここまでほぼ打たれておらず、空振り率も高いです」(野球評論家・お股ニキ氏)

その後、ふたりは立て直しに成功したが、立て直せずに2軍落ちしたのが戸郷翔征(巨人)だ。4月11日の広島戦では3回3分の1で10失点を喫するなど、開幕3試合で防御率11点台。その問題点は髙橋、伊藤とは異なるという。

「戸郷は原辰徳監督時代に1試合140球以上を何度も投げたことがありますし、この5年間のセ・リーグ公式戦で最も球数を投げています。強度をギリギリまで落とす中でキレのある球を投げる"省エネ"スタイルにも限界がきて、フォームも崩れています」

巨人のエースたる宿命か、プレミア12やMLBとの親善試合でも登板が求められた。

「大炎上後も2軍戦で登板していて驚きました。本人が志願したようですが、今必要なのは休養。2週間くらいはノースロー期間を設けてもいいのかもしれません」

一方、好調を維持するエースもいる。お股ニキ氏は、今井達也(西武)、宮城大弥(オリックス)、リバン・モイネロ(ソフトバンク)、東克樹(DeNA)らの名を挙げる。

「今井、宮城、モイネロはさすがの安定感。東はオフに取り入れた新フォームがハマらずにオープン戦は苦しみましたが、開幕前にスパッと切り替えて元に戻しました」

また、エース級以外でも、九里亜蓮(くり・あれん/オリックス)、北山亘基(こうき/日本ハム)、アンドレ・ジャクソン、アンソニー・ケイ(共にDeNA)らを高評価する中、特にこの春の出来を称賛するのは、史上4人目となる「開幕から3試合すべて先発で無失点勝利」の快挙を達成した山﨑伊織(巨人)だ。

「山﨑はもともと才能のある投手ですが、今季は球の強度が増し、変化球もスラット、ツーシーム、スプリット、すべて質がいい。この状態をどこまで維持できるか」

菅野智之(オリオールズ)が抜け、戸郷も不調の中で救世主となれるか注目だ。

*成績は日本時間4月22日時点

オグマナオト

オグマナオトおぐま・なおと

1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

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