スタバでの使用率No.1ノートは、もちろんMac。それがいわゆる、アップルのブランド力というものだ

日本のお正月の風物詩ともいえる福袋。なかでも、今もっとも入手困難といわれているのがアップルの「Lucky Bag」(3万6000円)だ。

全国7ヶ所の直営店「Apple Store」のみで販売されるこのLucky Bag。毎年、大勢の人が何日間も店頭に並ぶ光景は、これまた年末年始の風物詩となっている。

ふだん値引きをしないアップルだけに、このLucky Bagがおトクなのは言うまでもないが、一方でLucky Bagを入手すること自体も、ひとつのステイタスとして確立している。それほどまでに、アップルは絶対的なブランドイメージを持っているのである。

一企業を超えて「文化」として扱われることも多いアップルという企業。『アップル帝国の正体』(文藝春秋)の著者のひとり、後藤直義氏がこう説明する。

「日本の場合、アップルという企業はアップルを絶対視する多くの『信者』に支えられています。それはユーザーだけでなく、アップルで働く人たちも同様なことが多いんです。

以前にはアメリカの新聞報道で『ジーニアスバー』(※アップルストアのメンテナンスカウンター)で働くスタッフの時給が低いことが問題になりましたが、彼らもアップル信者なので、給料が安くても働いちゃうという構図がある。アップルはある意味、『イケてるブラック企業』的な面があるんですね……」

大前提として、アップル製品の完成度は高い。機能性、操作性が革新的であり、なおかつデザインもクール。一度使用したらハマってしまう人が多いのも当然といえる。

一方で、後藤氏が言う『信者』は、一般的なユーザーを超えた存在だ。アップル製品のみならず、企業の姿勢・方針までも賞賛し、むしろ「使わせてもらっている」人たちだ。

結果、日本のメーカーと比較すると、サポートサービスなどの面で不親切に感じてしまう人も多い。だが、信者が多いせいか、現在のスタイルを変える必要性は感じていないようだ。

アップルの企業体質について、後藤氏が続ける。

「スマホ市場で、これだけiPhoneがひとり勝ちしているのは日本だけです。ついにドコモも陥落して、今や何もしなくても売れるのが日本市場、まさに怖いもの知らずの状態です。ついつい『アップルのやり方がいやなら使わなければいいでしょ?』という身勝手な雰囲気が出てしまうのも仕方ないかもしれません。

米国のアップル本体もスティーブ・ジョブズの死後、後継者のティム・クック体制になってから大きく変質し、急激に官僚化しているといわれています。そうした変質が今後、アップル帝国の将来に大きな影を落とす可能性は否定できないと思います」

今、日本のアップルユーザーは急激に増え続けている。はたして、そのうちのどのくらい“入信”するのか。

(取材/川喜田 研)