「つながりやすさ」を前面にアピールしている各ケータイキャリア。なかでもはauは、「つながるなんて、もう、当たり前。」とのキャッチコピーで、その速さと範囲をウリにしている。
ところが、auは“通話のつながりにくさ”という問題を抱えていると指摘する声もある。通信ジャーナリストの神尾寿氏が説明する。
「そもそも、携帯会社は国からそれぞれに割り当てられた電波の周波数帯を使って通信・通話サービスを提供しています。最近よく耳にする『4GLTE』は3社が提供する新世代の高速通信サービスですが、データ通信専用。最新のスマホでも、音声通話は一世代前の『3G』を使っている現状があります」(神尾氏)
つまり、「データ通信のつながりやすさ」と「通話のつながりやすさ」は、まったくの別物だということ。各キャリアがこぞってアピールしているのは、あくまでもデータ通信のつながりやすさなのである。
では、auが提供するその通話サービスにどんな問題があるというのか?
「国から割り当てられた周波数の枠の中で、それを通信用と通話用にどう配分するかはキャリアのさじ加減です。その配分の仕方によって、通話やデータ通信の性能に差が生まれるんですね。
ドコモは比較的通話サービスを重視しており、その品質を維持しながら、少しずつデータ通信用に電波を配分していく手法をとっているのですが、auは通話用の電波をほとんど増やさずに、手持ちの電波をLTE用として重点的に配分。これは、メディアが通話の品質よりもデータ通信の品質(速度)のほうを頻繁に取り上げることを利用した戦略で、逆に言うと音声通話を軽視したと考えることもできます」(神尾氏)
その結果、「電話がつながりづらい」「相手の声が途切れる」「通話中に突然電話が切れる」といった問題が噴出する可能性もあると神尾氏は指摘する。
だが、基地局増設などのインフラ対策で対応できそうだが?
「昨年、iPhoneの販売競争で自腹を切った多額の値下げコストが重くのしかかり、その原資を捻出することが難しい状況になることが予想されます。ユーザー数の増加にインフラ拡張が間に合わず、特にauの通話環境は日を追うごとに悪化していく恐れがあるということです」(神尾氏)
昨年9月、ドコモからiPhone5s/cが発売された際、auは一世代前のiPhone5で『一括0円』や7、8万円台のキャッシュバックを多用。さらにはMNP獲得のために業界では破格のインセンティブを店側に積んだ。結果、インフラ対策が思うようにいかないというのだ。
この問題についてauに問い合わせると、通話品質の低下を完全に否定した。
「弊社の通話品質が落ちていることはありません。通話とデータ通信の電波の配分は一方に偏ることなくお客さまのニーズに合わせて適切に行なっています」(広報)
ユーザーが増加し、これからさらにデータ通信に対するニーズが大きくなっていくと予想される。限られた枠をうまく配分するauの手腕に期待したい。
(取材/興山英雄)