ソフトバンクモバイル(SBM)が、スマホの音声通話とパケット通信をパックにした定額制料金を4月21日から導入する、と発表した。
3種類用意されるプランのうち、主力となりそうな「Mパック」を例にとると、月額6980円(税別)で一回5分以内、月間合計1000回までの通話が可能で、月当たり7GBまでのパケット通信ができる。
スマホの通話料金はガラケーより割高に設定されているから、月々の支払い額がかさむのが悩みのタネ。仕事で使うため通話品質を犠牲にできないが、なるべく低料金に抑えたいと望んできたようなユーザーにとっては、待望の電話かけ放題が実現?
ところが、SBMからのリリースをよく読んでみると、この定額プランには落とし穴があることがわかる。まず、申し込めるのはSBMの新規契約者もしくは機種変更者のみで、しかも「4G」か「4G LTE」対応のスマホを購入することが条件となる。
つまり、機種変更をしない、あるいは機種変更しても型落ちモデルを購入した既存のSBMユーザーは対象外なのだ。さらに、音声通話を毎回必ず5分以内に収めるのはなかなか難しいが、5分を超過した通話分には、現行の従量制よりさらに割高な通話料が課せられることになっているのである。
そこでSBMに、対象者や購入機種の条件を広げたり、もっと現実的なプラン設定をする予定はないのかと問い合わせてみたのだが、「現時点ではなんとも申し上げられません」(SBM・広報)との答えが返ってきたのみだった。
なぜSBMは残念極まりない料金プランを、わざわざこの時期に打ち出してきたのか? ITジャーナリストの石川温(つつむ)氏に聞いた。
「NTTドコモ(ドコモ)、KDDI(au)、SBMの大手3キャリアは、LTE回線でデータ通信だけでなく、高品質な音声通話もできる技術『VoLTE(ボルテ)』を数年以内に導入する予定です。なかでもドコモは、今年3月にも他社に先駆けてVoLTEを導入し、それを機に音声通話定額制を開始するのではと噂されていました」
同サービスへのユーザー移行を加速させるための呼び水にしようというわけだ。
「しかし、何事も『業界初』が好きなSBMは、ドコモに先を越されるくらいならと、自社のVoLTE導入を待つことなく、フライング気味に定額制だけを先にぶち上げたのでしょう」(石川氏)
だが、そこはSBMのこと、定額制を取り入れても損をしない仕組みをちゃっかり組み込んでいる。
「5分を超過した分の30秒当たり30円の割高な通話料は、かなりの収益を同社にもたらすはずです」(石川氏)
ただし、簡単にカラクリを見透かされるようなプランをSBMが見切り発車させた真の意図は、もっと別のところにあるようだ。
「SBMが通話料金定額制を始めたとなれば、ドコモやauも後れを取ってはなるものかと、似たような条件のプランを近く打ち出してくる。そうしてライバル社の対抗プランが出そろった頃合いを見計らって、孫正義社長がツイッターあたりでさらに魅力的な本命の定額プランを電撃発表すると、『さすが孫さん、消費者のことを考えてくれてる!』とネット上で話題になる。つまり、4月の時点でSBMが導入するプランは、他社を引きつける“おとり”のようなものだと見ています」(石川氏)
だとしたら、4月に慌ててSBMの音声通話定額制に飛びつく必要はない?
「もちろん。過去を振り返っても、各社の競争でサービスの内容がどんどんこなれていき、最終的には3社横並びの妥当な線に落ち着くのは明らかですから」(石川氏)
少なくともVoLTEが本格導入されるまでは、様子見が正解ってことのようだ。