ケータイキャリアの顧客獲得競争が、iPhone5sをきっかけに激化している。
昨秋、ソフトバンク、auに続き、ついにドコモでも取り扱いを始めたiPhone。これにより最新モデルの5s/5cは3キャリアで利用できるようになり、MNP(モバイルナンバーポータビリティ)による客の奪い合いがいっそう激しくなった。
現在、MNP戦争の目玉となっているのは、iPhone5s。このスマホの一番人気機種が「高額キャッシュバック」「一括0円」などの売り文句で、“叩き売り”ともいえる状態だ。
※参考記事「iPhone5s“叩き売り”のウラ事情」 http://wpb.shueisha.co.jp/2014/02/27/25421
一部ユーザーにとってはうれしい“叩き売り”だが、同時に新たな不公平感を生み出していると、ケータイ料金に詳しいフリーライターの後藤一泰氏は指摘する。
「詳しい手口は伏せますが、例えばauやソフトバンクで複数回線契約しているユーザーが一度に3つの回線をドコモにMNP転入すれば、手数料などを差し引いても、20万円近い大金が得られます。こうしたお金も、普通に使っているケータイユーザーがすべて負担していることになるのです」
MNP利用者に払う高額キャッシュバックの原資は、長期契約者の通話料金。これが“叩き売り”の正体なのだ。
前出の後藤氏が、こうした不公平感を解消する料金体系を提案する。
キャリアは回線契約だけ行なうべき
「ユーザー間の料金格差や不公平を解消する意味でも、総務省は端末のSIMフリー化をあらためて強く推進し、キャリアは本来の役割である回線契約のみを行なうべきです。そうすればキャリア各社は、端末価格と回線料金を結びつけて販売することはできなくなる。つまり、MNP利用者にのみ端末をタダ同然でバラまくような販売方法はできなくなるのです。
するとキャリアは回線サービスで競争することになり、ユーザーのニーズに合った細かな料金体系が生まれるでしょう。スマホも現在のように高額なものばかりではなく、海外のように1万円程度の安価なものも出てくるはず。ユーザーが自分に合った端末と料金プランを選べることになります」(後藤氏)
端末販売と回線契約がセットになった現在主流の契約方法では、“ケータイ成金”と長期ユーザーの不公平感は埋まりそうもない。
こうしたiPhone5sの叩き売りは、いつまで続くのか?
「ドコモが一昨年5月末まで行なった『MNPでの月々サポート5万400円増額』での契約がちょうど2年を迎え、4月から5月にもかなりの解約やMNP転出が見込まれています。場合によっては、その時期まで“投げ売り競争”が続くかもしれませんね」(後藤氏)
MNPによるキャッシュバック&端末転売で儲(もう)ける“ケータイ成金”には抵抗のある人も多いはず。だが、個人利用ならMNPしない者がバカを見る、それが日本のケータイなのだ。