今、スマホの料金プランに“静かな価格破壊”が起きている。ケータイやスマホの料金プランに詳しいフリーライターの後藤一泰氏が語る。
「大手キャリアから通信回線を借り、自社ブランドで小売りするMVNO(仮想移動体通信事業者)の台頭です。一昨年あたりからインターネットプロバイダーなどの事業者が次々とMVNOに参入、一気に活況を呈してきました。大手キャリアのスマホ向けサービスの提供価格は、月々5000円台後半以上が主流。それに対し、MVNOは通信速度や容量を制限することで、キャリアよりもはるかに低額な料金を実現しています」
だが、安いのには理由がある。MVNOはデータ通信のみで、音声通話に対応していなかったのだ。
ところがこの春、そうしたMVNOの弱点を打ち破る新たな商品が登場した。
「データ通信に加え、音声通話にも対応した、『IIJmio(アイアイジェイミオ)高速モバイルD/音声機能付きSIM』です。音声通話にも対応するスマホ用SIMは、これまでSo-netや日本通信が手がけていましたが、So-netは販路が通販だけで、月間制限容量はわずか500MB。日本通信は音声通話対応SIMのオプションという形での高速データ通信で、月間制限容量は3GBとたっぷりですが、料金は月額3000円台。どちらも市場には浸透しませんでした。
しかしIIJmioの新商品は、月間制限容量が1GBで、利用料金は月額1900円です。例えばドコモのXiスマホ(Android)を月間制限容量3GBまでのXiパケ・ホーダイライトで使うと月々の利用料金は5743円から。月の通信量が1GBまでに収まるライトユーザーなら、月々の料金はほぼ3分の1になるので、インパクトは大きい。通話料はどちらも20円/30秒と同一なので、通話が多い人でも低料金の恩恵は変わりません」(後藤氏)
つまり、非常に実用的なフリーSIMが初めて登場したのだ。
ただし、メンドくさがりやの人はやめたほうがいい?
「近日中にMNP(モバイルナンバーポータビリティ)転入にも対応する予定です。IIJmioはドコモの回線を使いますが、auやソフトバンクのユーザーはもちろん、ドコモユーザーでも、同じ番号での転入が可能になるのです。ただし、キャリアのメアドは引き継げません」(後藤氏)
月のデータ通信量が1GB未満のライトユーザーなら、月額利用料を4000円近くも節約できる計算。さらにMNPが可能となると、利用しない手はないだろう。
ただ、契約や初期設定が、キャリアに比べ、やや複雑という難点もある。
「IIJの通話対応SIMはSIMカードのみの販売なので、本体は別途用意しなければなりません。基本的にはドコモのスマホならOKです。同社のウェブサイトには『動作確認済み端末』も掲載されているので、確認しましょう。
契約はビックカメラやイオンなどの店頭、そして同社のサイトで購入できますが、音声対応SIMは本人確認が必要なので、店頭でSIMそのものを購入し、すぐに使えるというわけではありません。『ウェルカムパック』というパッケージを購入し、ネットで本人確認手続きを行なった後、SIMカードの到着を待つという流れになります。SIM到着後は、スマホに挿入し、アクセスポイントなどの設定が必要です」(後藤氏)
今までショップ任せだった人にはあまりオススメできない。だが、ドコモのスマホを利用していて2年縛り明けの人、かつライトユーザーなら、年間5万円の節約も可能。チャレンジしてみる価値ありだ。
■週刊プレイボーイ14号「春に2年縛りが明けるドコモのライトユーザーは検討の価値アリ 通話対応激安SIM超入門」より