大手キャリアから通信回線を借り、自社ブランドで小売りするMVNO(仮想移動体通信事業者)の台頭により、スマホの利用料金に革命が起きている。

キャリアの月額基本料の半額~3分の1でスマホを利用できるMVNOのSIMカード。だが、音声通話に対応していない、通信速度が遅い、月額制限容量が少ないなど不便な点も多かった。しかし、この春、新たに登場した「IIJmio(アイアイジェイミオ)高速モバイルD/音声機能付きSIM」は、これらの弱点をほぼ解消しており、今後も同様の激安SIMカードが登場すると思われる。

では、どんなユーザーにMVNOは向いているのか? ケータイやスマホの料金プランに詳しいフリーライターの後藤一泰氏が語る。

「ドコモのスマホユーザーで、“2年縛り”が終わる人です。特に契約から24ヵ月間、月々の料金を割り引く『月々サポート』付きのスマホを利用していた人は、月々の料金がぐんとハネ上がることになる。放っておけば、またここから“2年縛り”も始まります。解約金の発生しない“2年縛り明け”のタイミングでIIJmioにMNP転入すればいいのです。

またauやソフトバンクの利用者も、MNP転入することができます。この場合、それまで使っていたスマホでは利用できないので、ドコモのXiスマホの白ロム(SIMカードを抜き、回線契約のない端末本体。未使用品、中古品の双方が流通する)を専門店やブックオフなどの白ロム取扱店から入手する必要があります。白ロム購入に費用はかかりますが、それでも月々の支出が減るので、1年以内にモトは取れるでしょう」

SIMカードを利用するには、さまざまなハードルもある

だが、MVNOはあくまでもSIMカードのみの販売。スマホ本体は自分で用意しなければならないなど、利用に関しては多くのハードルもある。ケータイ研究家で青森公立大学准教授の木暮祐一氏が、利用上の注意点を語る。

「キャリアショップの店頭での手続きとは違い、手間がかかります。また、MNP転入しても開通してからSIMが手元に届くまでの間は電話が使えなくなるという不便さもあります。あとは通話、通信などでトラブルがあったときに、その解決が基本的に自己責任になることです。何かあるたびにキャリアショップに駆け込んで面倒を見てもらっている人にはオススメできません」

さらに、月額制限容量がキャリアよりは少ないので、動画をたくさん観たり、テザリングを頻繁に利用するユーザーには向かない。また、ビデオ配信など、キャリア提供のサービスは利用できないなどを十分に理解した上で契約すべきだろう。

しかし、こうした制約があるとはいえ、MVNOのプランの多様化は利用者にとって喜ばしいことのようだ。

「現在、キャリアの契約は“2年縛り”による解約金の存在が、他社への自由な乗り換えの支障となっています。また最新機種への機種変更も、新規契約やMNPに比べ割高です。しかしこうしたMVNOを利用する人が増えれば、端末そのものの市場も拡大するはずです。いずれは、海外のように低価格帯から高級機まで、幅広い端末が流通するようになるかもしれません」(木暮氏)

うまく使えば、年間5万円近くも節約が可能。MVNOという選択肢も検討する価値はありそうだ。

(取材/本誌「通話対応激安SIM」取材班)