一番人気機種でも高額キャッシュバック。MNPをしなければ損になる時代は、もう終わりになりそうだ

3月中旬、「この週末で、ケータイキャリアによる大幅キャッシュバック(CB)商法が終わる」という噂がネット上を駆け巡り、店舗に客が殺到する事態となった。

CBとは、MNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティ)でキャリアを乗り換えることを条件に、端末をタダ、つまり「本体一括0円」にした上で、現金や商品券をつけて客を集める売り方。昨秋、NTTドコモがiPhoneの販売を開始したことでキャリア間の競争がいっそう激化していた。

このときは結局デマだったが、4月に入り、確かにCB商法はやや沈静化している。少し前、KDDI(au)の田中孝司社長は、朝日新聞のインタビューで、「販売時の高額なCBは行きすぎという声もあるが」という質問に対し、「販売代理店などへの指導が隅々まで届いていないかもしれないが、縮小する方向で動いている」と答えており、販売代理店による顧客獲得競争を“指導”すると匂わせていた。

しかし、auショップを複数展開するケータイ販売会社の幹部、A氏は次のように話す。

「CB商法は、キャリアが一部の代理店や販売店に高額なCBの原資を支払って拡販させ、その実績をほかのショップに見せて『お宅も頑張って!』とやっているのが現状です。CBはキャリア主導で行なわれているのです」

田中社長の言葉とは、ややニュアンスが異なっている。ケータイ研究家で青森公立大学准教授の木暮祐一氏もこう話す。

「ケータイやスマホは、どこで買っても、月々の利用料金はキャリアが定めたものになります。そのためキャリアに尻を叩かれた販売店が販売数を伸ばそうと思ったら、端末の価格面で頑張るしかありません。それが値引き、ひいては販売奨励金をアテにした多額のCBにつながったのです」

キャリアも販売店もCBはヤメたいというのが本音

つまり、CB商法を加熱させたのは、あくまでキャリア主導だというのが販売代理店側の主張なのだ。

どちらも責任を回避するような言い回しだが、それはやはりCB商法が問題視されているからと見るのが妥当だろう。

「キャリアも販売店もCBをやめたいのが本音でしょう。先の3月中旬の『CB終了』はデマだったとする向きもありますが、私はキャリア同士の紳士協定があったと聞いています。CBを“エサ”にした、契約数を競うだけのバカバカしい販売方法はやめ、利益は料金値下げやネットワーク整備など、既存顧客へのサービスに振り向けるべきだと思います」(木暮氏)

ちなみに一部報道では、こうしたCBの高額化について、ケータイ業界の監督官庁である総務省が問題視し、規制の必要性などを検討。今年7月頃までに中間のとりまとめを行なうとされている。

一部ユーザーにとってはありがたかったMNPのCB商法。だが、その原資はもとをたどれば長期ユーザーの負担によるもの。こうした、ゆがんだ販売方法が消え行く日も近い。

■週刊プレイボーイ16号「MNPキャッシュバックを減らしてもケータイ料金格差はなくならないワケ」より