端末代と通信費を合わせても月額たったの3000円以下。イオンやビックカメラといった流通大手が、こうしたLCC(ローコストキャリア=格安通信会社)スマホ事業に相次いで参入して、話題を呼んでいる。

安さの仕組みは、「独自に仕入れたリーズナブルなSIMフリー端末の分割払い代金」+「安価なサービスを提供する通信事業者(MVNO)版SIMの安い月額料金」。この組み合わせをいち早く導入し、4月4日から発売しているのが小売業界の雄・イオンだ。

端末は、Googleスマホである韓国・LG製の「Nexus4」。そしてMVNOは日本通信のSIM。データ通信は使い放題(最大通信速度、毎秒0.2メガビット)で、月々の料金は2980円(税別)となっている。

ほかに契約時の初期費用として3000円、そして20円/30秒の音声通話料と月々3円のユニバーサルサービス料が必要だが、それでも大手キャリアの平均的な月額利用料=7000円台前後(端末代と通信費の合計)と比べればバーゲンプライスともいえる。

畑違いの業種からの参入という珍しさもあって、このイオンスマホは発売前から各メディアで多く報道され、その結果、全国のイオンには契約希望者が殺到。用意した8000台の端末は、間もなく売り切れる見込みだという。

また、家電量販店のビックカメラ(以下、ビック)も、4月18日からLCCスマホの提供を開始した。

こちらはコヴィアという日本メーカーの端末「フリーフォン」にIIJのSIMを組み合わせ、イオンよりさらに安い月額2830円(税別)を実現。端末は1000台限定ながら、データ通信はやはり使い放題な上、毎月1GB分までは3G高速通信(最大通信速度、毎秒14.4メガビット。プランに含まれるクーポンを利用)ができる。加えて、イオンにはない無料の公衆無線LANサービスまでついている。

LCCスマホが安いからといって飛びつくと危険?

こうしたライバルの攻勢に刺激を受けたのか、ヨドバシカメラもビックと同程度の価格で、5月にもLCCスマホ市場参入を計画しているという。

ドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクという3大キャリアがほぼ独占していたスマホ事業だが、MVNO版SIMの拡大により選択肢が拡大した。しかし、個人でSIMフリーの端末を入手した上、さらにMVNOと契約するのは、初心者にはかなり高いハードルといえる。その煩(わずら)わしさを引き受けてくれたのが、こうした流通大手だったというわけだ。

だが、LCCスマホが3大キャリアと同程度の満足を得られるとは言いがたい。最大のネックは、その通信速度の遅さだ。現在の3大キャリアのLTEは、最大通信速度、毎秒150メガビット。単純計算で、イオンのスマホは1/750の速度ということになる。

ほかにも、端末が選べない&指定の端末は一世代前の型落ち品であるほか、サポート面でも不安が残る。メイン機として、データ通信をバリバリ使う人が3大キャリアから乗り換えるには、物足りないスペックといえる。

だが、ユーザーにとって、初心者向け、サブ機として使用などの選択肢が広がったのは歓迎すべきこと。まだまだ始まったばかりのLCCスマホ事業。今後、大手キャリアを脅かす存在になるのか、その進化に期待したい。

■週刊プレイボーイ19・20合併号「流通大手が続々参入! LCCスマホの落とし穴!」より