これまでのケータイ料金体系の常識を打ち破り、6月から“完全定額制”の音声通話料金プラン「カケホーダイ」を導入するドコモ。基本料金込みの2700円(2年契約、税抜き)で、音声通話がどのキャリア相手にも時間無制限のかけ放題。今までの30秒20円に慣れていたユーザーに与えたインパクトは大きかったはずだ。

そうなると気になるのは、他の大手キャリア2社、au(KDDI)、ソフトバンクモバイル(以下、SBM)の動向だ。

auの田中孝司社長は、ドコモの動きをうすうす察知していたと見える。カケホーダイの発表前にメディアのインタビューを受け、LTE網を使った高品質音声通話システム「VLTE(ボルテ)」を年内に導入するのを機に、スマホの通話料金を引き下げると明言していたのだが……。

「それでも、このタイミングでドコモが完全定額制を打ち出してくるとは、彼らの想定外だったはず。計画を急遽(きゅうきょ)前倒しし、カケホーダイ並みの対抗策を打ち出さざるを得ないでしょうね」(携帯電話ライターの佐野正弘氏)

ドコモに先んじて、音声通話定額プラン「スマ放題」を仕掛けたはずのSBM。自社戦略のお株を奪われた格好で、こちらもドコモの独走を許すはずがない。

そもそもSBMが1月下旬に発表し、4月21日から導入予定だったスマ放題は、「実質かけ放題」とうたいながら、1回当たりの通話時間が5分以内で月50回まで(Sパックの場合)に制限されている“エア定額制”。しかも発表当初は、同プランの1回当たり時間制限がわずか3分で、さらに超過分には割高な30円/30秒の通話料金が課せられることになっていたため大不評を買い、慌てて条件を改めていたという情けない経緯がある。

完全に思惑がはずれてしまったSBM

にもかかわらず、ドコモのカケホーダイが「完全定額制」と分かって、今度は導入を延期……と、完全に赤っ恥をかかされたわけだ。

「彼らとしてはスマ放題の条件を業界標準にして、利益を出したかったのでしょうが、カケホーダイの登場で思惑が外れてしまった。au同様、完全定額制のプランで追随せざるを得ないでしょうが、米スプリント社の買収や経営立て直しに莫大な資本を投下している台所事情を考えると、けっこうつらいところです。後発のハンデを乗り越えようと暴れ回ってきたSBMが、とうとう業界の主導権を握れなくなり、手詰まりになってきた感を受けますね」(ITジャーナリストの石川温[つつむ]氏)

だが、背に腹は代えられない。置かれた立場や状況の違いこそあれ、auもSBMも、近いうちに完全定額制を導入することは間違いなさそう。では、その時期は?

「ズバリ、GW明けの夏モデル発表会見で、両者とも新プランの詳細と導入時期を明らかにするでしょう」(佐野氏)

「その後しばらくは、定額料金の値下げ合戦が繰り広げられるかも」(石川氏)

夏モデル発表会見を見送ったSBMはauの対応を様子見か? 火ぶたが切られた三つ巴(どもえ)の完全定額制バトルに要注目だ。