3大キャリアが相次いで打ち出した通話定額の「新料金プラン」。その中身は3社とも横並びで、毎月の支払い額もほぼ同じ。そこで今、3キャリアよりも明らかに安いのに、ついつい見落としがちな“第4の選択肢”イー・モバイルに注目が集まっている。
青森公立大学准教授でモバイル研究家の木暮祐一氏が語る。
「スマホユーザーの目はiPhoneを扱う3キャリアに行きがちです。しかしAndroidユーザーであれば、イー・モバイルが取り扱うGoogle Nexus5も有力な選択肢になってくるのです」
Nexus5とは、それだけ魅力的な端末なのか?
「Nexus5は5インチフルHD液晶を搭載した韓国LG製のスマホです。Googleブランドのスマホらしく、日本のキャリア端末にありがちな、アンインストールできないアプリが入っているようなこともありません。いい意味で『素のAndroid』なのです」
さらに、使い勝手の良さもその魅力だと木暮氏は続ける。
「Googleブランドだけに、最新のOSアップデートにも対応しています。Googleの各種サービスとの親和性も非常に高い。さらに、SIMフリーなので、周波数帯さえ合えば、イー・モバイル以外のSIMも利用可能です。そのため海外旅行の際は現地キャリアの格安SIMを使い、通信費を大幅に安く済ませることもできます」
ならば、気になる端末代や月々の料金は、どのくらいになるのか? ちなみに3大キャリアでは、電話かけ放題の基本料金は2916円(2年縛りあり)、パケット料金も5GB(各種キャンペーンを除く)なら各社5400円、これにインターネット接続料金を合わせた8640円が支払い額となる。
「私は、端末はMNP転入で一括ゼロ円(実質とは違い完全にタダのこと)で購入しました。契約は2年縛りで通話料金は別途かかりますが、月々の料金は5GBのパケット定額料金を含んで3991円。3大キャリアの新料金プラン(パケット5GB)と比べ、4000円以上も安くなります。また頻繁(ひんぱん)に通話する人は『だれとでも定額 for EM-S』に加入するといいでしょう。月々1440円で10分以内の通話が月300回までOKです」(木暮氏)
「だれとでも定額」をつけても月5755円なら安い。10分以内とはいえ一日10回の通話ができるなら十分というユーザーもいるはず。でも、いくら料金が安くても、電波の届く範囲が狭かったら安かろう悪かろうだが……。
「その点も心配ないでしょう。イー・モバイルはソフトバンクのグループ会社で、Nexus5のプラン『イー・モバイル4G-S』は、双方のネットワークを使えます。エリア的に不満を感じることはないでしょう。LTEでの回線品質も、混雑しがちな3大キャリアに比べ快適です」(木暮氏)
イー・モバイルに“落とし穴”があるとすれば…?
いいことずくめに思えるイー・モバイル。ただし、思わぬ落とし穴もあるというのは、ケータイの料金プランに詳しいフリーライターの後藤一泰氏だ。
「まず基本的なところでは、Nexus5はMNP転入なら一括0円という端末価格の安さが魅力ですが、その対象となるのはドコモとauだけです。同じグループのソフトバンクからのMNP転入は対象外。オトク度が下がります」
ふたつ目の落とし穴は、3大キャリアよりもデカい解約金の額だ。
「イー・モバイルには他社からの乗り換え時に適用される『4G-Sのりかえサポート』というものがあります。これは端末価格から2万1600円割り引くキャンペーンです。しかし、6ヵ月以内に解約すると契約解除料として2万1600円かかってしまいます。さらに、短期解約、機種変更には2年縛りの解約金1万260円も別途かかるため、合計で3万1860円もの費用がかかるのです。Nexus5を使ってみて気に入らないからやっぱり元に戻そうとすると大変な出費になります。Nexus5と長く付き合えるか、デモ機などで使い勝手をしっかり確認しましょう」(後藤氏)
そのほか、住んでいる地域によっては、キャリアショップの少なさなどもネックになると後藤氏は指摘する。しかし、それだけ“不便”でも、3大キャリアよりも突出して安い利用料金は魅力だ。もし買うとしたら、どんな作戦がオススメなのか。
「イー・モバイルは公式オンラインストアでも、MNP転入ならNexus5を一括0円にするなど期間限定キャンペーンを仕掛けてくることがあります。購入を考えるときには必ずチェックしましょう。また、キャリアショップのみ、商品券などのキャッシュバックを上乗せしていることもあります。こまめにショップをのぞいてみるのもいいでしょう」(後藤氏)
3大キャリアの新料金プランと比べて、毎月3000円近くも安いイー・モバイル。2年間使えば、その差は約7万円に! これだけ節約できるなら、多少不便でも乗り換えはアリかもしれない。
取材・撮影/本誌「イー・モバイルは本当にいいのか?」取材班
■週刊プレイボーイ「イー・モバイル、ここはイイけどここは不便!」より