ウイルスに感染すると、多くのアイコンがこんな“焼香パンダ”に変身。パソコンもデータもすべておだぶつだ ウイルスに感染すると、多くのアイコンがこんな“焼香パンダ”に変身。パソコンもデータもすべておだぶつだ

中国で唯一(?)世界中から愛されているはずのパンダが、なぜか中国人民から大ヒンシュクを買っているという。一体、何が起きているのか?

■中国政府はなぜか最新OS導入を禁止

「朝、パソコンを開いたら、デスクトップのアイコンがすべてパンダに……ヤバい!と思ったときはもう手遅れで……作成中の書類も、取引先との商談記録も全部消えました……。もうパンダの顔も見たくない!」(上海在住のエリート会社員A氏)

「長年かかって集めた蒼井空老師(ラオシ)(蒼井そら)の動画……1000人分はあった日本女天使偶像(日本人アイドル)の画像……全部パーです……もう何もやる気が起きない……両親を失ったような喪失感です……。パンダだけは許せない!」(北京在住の大学生B君)

彼らが怒りの矛先を向けているのは、「熊猫焼香(お祈りパンダ)」と呼ばれるコンピューターウイルス。感染したパソコンは、アイコンの一部もしくは全部が“焼香パンダ”に変わり、完全にデータを食い荒らされて再起不能状態になるらしい。

パンダウイルスは2006年1月に発見され、中国で猛威を振るったが、07年にウイルス製作者が逮捕されて以降は、感染者を出しながらも大きな話題になることはなかった。しかし、今年4月から急激に凶悪度を高め、多くのウイルス防壁を打ち破るべく進化した、通称“スーパーパンダウイルス”が、再び中国のパソコンユーザーを震え上がらせているのだという。中国のIT事情に詳しいジャーナリストの程健軍(チェンジェンジュン)氏はこう語る。

「今年4月、マイクロソフト(以下、MS)は旧OS『ウィンドウズXP』のサポートを終了しました。中国では一部企業がサービスを継続中とはいえ、世界的な公式サポート終了後のOSが無防備で危険というのは常識でしょう。

しかし、中国は6億5000万台ものパソコンが稼働する“電脳大国”でありながら、その約8割が今もXP機。役所、企業、ネットカフェ、個人宅……どこを見てもXPが主流です。しかも、中国人民はソフトや著作物を無料で違法入手し、コピーして共有するのが大好き。共有サイトなどにウイルスを混入すれば、すぐに数百万台が感染してしまいます」

それなのに、今年5月には中国の中央国家機関である政府購買センターが、公的機関で使用するパソコンの最新OS「ウィンドウズ8」への更新や、「8」搭載機の新規購入を禁止した。一体なぜ、そんなことを?

中国が「8」を拒否する呆れた理由

 「351京0001兆5545億4800万個以上のウイルスを検出」とのこと(*表示が正しいかどうかも定かではありません) 「351京0001兆5545億4800万個以上のウイルスを検出」とのこと(*表示が正しいかどうかも定かではありません)

「中国政府は、MSの各種ソフトの正規料金の高さに怒っています(苦笑)。官民を問わず、中国ではOSやビジネスソフトを正規購入するケースは少ない。セキュリティレベルの低いXPの場合、ほぼすべてのビジネスソフトが違法コピーで無料入手可能でしたからね。

ところが、『8』ではクラウド化によってデータが欧米側へ筒抜けになる危険性がある上、ソフトのセキュリティも強化され、まともに購入するしかなくなってしまった。中国のパソコンメーカーよりも、欧米のIT企業をソフトの著作権料で儲けさせることは、中国政府にとっては許し難いことなのです」(程氏)

■「ブリーダー」たちが日本人を狙い撃ち!?

こうして今もXPが主流の中国で、MSの公式サポートが終了した4月頃から猛威を振るっているスーパーパンダウイルス。初代パンダウイルスの製作者はすでに逮捕されたはずだが、では誰の仕業なのか?

「パンダウイルスには数千もの亜種が存在し、すべてがバックドアタイプという強力なウイルス。感染するとマシンを乗っ取られ、データを根こそぎ奪い取られた後、証拠隠滅のためにあらゆるデータが破壊されます。

ウイルスを日々進化させているのは、『パンダブリーダー』と呼ばれる数百人ものウイルスマニアたち。見つかれば個人なら5000元(約8万4550円)以下、企業なら1万5000元(約25万3650円)以下の罰金ですが、入手したデータでの儲けを考えれば、とても歯止めにはなりません」(程氏)

エロ動画探索で日本がパンダ被害に!

そして今年7月、恐れていたことが起こった。従来は中国版ウィンドウズのみに感染する“ガラパゴスウイルス”だったスーパーパンダが、ついに中国に駐在している外資系企業社員の英語版ウィンドウズ機―しかもXPではなく、最新の「8」搭載機に感染してしまったのだ! これでもう、スーパーパンダウイルスの中国国内への“封じ込め”は不可能になったといっていい。

「ブリーダーたちに真っ先に狙われそうなのは、ほかでもない日本人のパソコンですよ。中国男性にとって、最も欲しいコンテンツといえば日本のエロ動画ですからね」(程氏)

もちろん、1台が感染すれば被害は無限に広がる。感染機内でウイルスが増殖し、登録されている全アドレスに「開けたら即感染」のメールを自動送信。セキュリティソフトを強制終了させ、強引に感染するタイプもあるというから恐ろしい。

「被害を確実に防ぐ方法はありませんが、少なくとも『0000』『1234』などの単純なパスワードを避ける、『xxx』などのベタなフォルダ名でエロ画像を保存しない、などの対策が必要ですね。サーバー内で同じパスワードやフォルダ名を使用しているユーザーへ、自動的に感染するタイプの亜種もありますから」(程氏)

パソコンは再起不能、データはすべてパー。個人情報も何もかも盗まれ、知り合いにも迷惑をかけまくる。そんな恐怖の“パンダテロ”が、いつ自分のパソコンを襲ってもおかしくないのだ。

(取材・文/近兼拓史)