群馬県にある「サンデンフォレスト」の敷地内にオープンした自販機ミュージアム。展示されているコレクションは16台! 懐かしの一台に会える? 群馬県にある「サンデンフォレスト」の敷地内にオープンした自販機ミュージアム。展示されているコレクションは16台! 懐かしの一台に会える?

街を歩けば当たり前に存在する自動販売機。物珍しいものではないはずだが、群馬県には専門の「自販機ミュージアム」が存在しているという。展示されているコレクションは16台!

■ロボットに友好的……国民性が普及のカギ!?

一昨年できた世界初(?)の自販機ミュージアム。一体どんな所なのか? 早速行ってみると……おぉ! 古い自販機がたくさん並んでますね!

「自販機の歴史を紹介するために昔懐かしい自販機から新しい自販機まで時代ごとに並べています。まずは、この聖水が売られていた自販機。歴史上で最も古い自販機で、2000年も前にエジプトで使われていたんですよ。日本の自販機ですと、1900年代初期にあった切手の自販機が現存しているものでは一番古いですね」

と、今回の案内役、黒崎貴たかしさん。日本自動販売機工業会の専務理事としてミュージアムの設立に尽力された方だ。

へ~! 自販機の歴史に初めて触れましたよ!!

「日本における自販機の歴史でいうと、60年代に入ってジュースの自販機や切符の券売機が登場し、徐々に生活の中に自販機が介入してくるんです。日本人ってアニメやマンガの影響で割とロボットに友好的でしょ? 自販機も一種のロボットなんですよ。だから抵抗感なく国民にスッと受け入れられたんじゃないでしょうか」

なるほど! そういう意味では、日本は自販機が普及しやすい環境だったんですね。

「そうですね。それに日本は治安が良かった。屋内外関係なく自販機を設置できるので、どんどん広がっていったんですね。あとは、なんといっても温かい飲料の販売が可能になったということも重要です。自販機が普及し始めた60年代はジュースしか売るものがなかったんですね。でもそれでは自販機の売り上げが冬はほぼない。そこで夏には冷たいもの、冬には温かいものが買える『HOT“or”COLD』の自販機が誕生したんです。“自販機大国”といわれるまでになったのは、この日本の技術力があってこそだと思います」

では最後に、今後の自販機について教えてください!

「これからは商品を販売するだけじゃいけない。例えば、『今日は〇〇でセール!』というように地元に密着した情報を知らせたり、商品自体のクオリティを上げたりというように、お客さまの細かいニーズに対応するといった“プラスα”を兼ね備えたものでなければ、と思っています」

どこまで進化し続ければ気が済むんだ……!? でも、そんなドラえもん的未来に期待しちゃいます!

ちなみにこの自販機ミュージアムは誰でも無料で見学可能!(事前予約制)。そこに展示されている一部を紹介しよう。

自販機の歴史はここから始まった!

■2000年も前に自販機はあった! ●聖水自販機

 聖水自販機 聖水自販機

世界最古の自販機をリアルに再現したレプリカ。エジプトの寺院に置かれていたこの自販機の中には“聖水”が入っていたという。お金を入れると内部の受け皿が動いて弁が外れ、水が流れ出る仕掛けだった!

■噴き出す仕掛けが子供に大ウケ ●噴水自販機

 噴水自販機 噴水自販機

まだジュースが珍しい飲み物だった60年代。粉末ジュースが広まり始めたのに伴い登場した。上部の透明なケースの中でジュースが噴き出す仕掛けに子供たちは大興奮! 一杯10円という安さも人気の秘密だった。

見たことあるかも? 懐かしの自販機

■○○専用自販機の先駆け的存在 ●ガム自販機

 ガム自販機 ガム自販機

お菓子メーカー「ハリス」から発売されたハリスガムの自販機(レプリカ)。日本で初めてのチューイングガム専用の自販機を作り、普及させたという。3種類のガムがそれぞれ20円で売られていた。

■飲料の多様化のきっかけに!? ●ビン自販機

 ビン自販機 ビン自販機

50年代のアメリカのコカ・コーラの自販機。これで売られていたのは瓶のコカ・コーラのみ。

 ビン自販機 ビン自販機

70年代、瓶入りジュースの自販機が日本にも登場。「瓶を斜めに収納するという発想で7種類のジュースを販売可能にしたんですよ」(黒崎さん)

自販機の進化はここから

■HOTが買える自販機の誕生 ●HOT or COLD自販機

 HOT or COLD自販機 HOT or COLD自販機

自販機でジュースしか売ってなかった70年代にポッカが缶コーヒーの販売をスタート。それに伴い、温かい飲料が販売できる自販機も登場。“HOT”が買える自販機は日本独自のものなのだ!!

■ここからコーヒーが普及した! ●カップ式コーヒー自販機

 カップ式コーヒー カップ式コーヒー

60年代のカップ式コーヒー自販機。「この頃はまだブラック、砂糖入り、クリームと砂糖入り、ココアの4種類のみでした」(黒崎さん)

 カップ式コーヒー カップ式コーヒー

10年たって、砂糖の量が調節可能に。さらに10年後にはインスタントとドリップが選べる自販機も登場。自販機の進化、恐るべし!

最新、未来の自販機は凄すぎ!

■取り締まりのため最新技術搭載 ●たばこ自販機

 たばこ自販機 たばこ自販機

たばこの自販機は60年代に登場。2008年には、未成年者の喫煙を規制する防止策として成人識別カードの「taspo」が導入されるように。今では運転免許証での識別が可能な自販機も登場している。

■東日本大震災でも大活躍! ●エネレンジャー

 エネレンジャー エネレンジャー

災害時などに電気の供給が止まった際、付属のレバーを回して自家発電できる仕組みになっている。一度の発電で4、5本の飲み物を出すことができる。自販機の上部にある電光掲示板ではニュース速報まで見られる。

■もうすぐ会える未来型自販機! ●透明型液晶ディスプレイ自販機

 透明型液晶ディスプレイ自販機 透明型液晶ディスプレイ自販機

まだ市場に出回っていない次世代の自販機。自販機のフロント一面がディスプレイに(!)なっている。画面ではアニメーションが流れたり、災害時には避難場所を案内したりと必要な情報を知ることができる未来型自販機だ!

(取材・文/short cut[岡本温子、山本絵理] 撮影/五十嵐和博)

■週刊プレイボーイ40号「11P大特集 知れば知るほどハマる!自販機をめぐる冒険」より(本誌では、ユニーク自販機コレクションや自販機設置の裏側まで紹介!)