思い描いたオリジナルアイテムが自在に作れる3Dプリンター。とはいえ、3Dプリンターでモノづくりを楽しむためには、出力するためのデータを作る“モデリング”のスキルが必要だという。
モデリングはどうやって身につければいいのか、さらに便利な出力サービスや5万円台~の手頃なパーソナル3Dプリンターをご紹介!
■初心者にうれしい無償ソフトに出力サービス
まずは、必須というモデリングって誰でもカンタンにできるものなの? ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表で、一般社団法人3Dデータを活用する会(3D-GAN)理事の水野操氏に聞いた。
「みなさん、3Dプリンターのほうに目が行きがちなんですが、出力する3Dデータがなければ、ただの置物でしかありません。かつてウィンドウズ95発売時にPCを持ってないのにソフトを買ってしまった…という笑い話がありましたよね。昨年あたりから急に騒がれるようになった3Dプリンターにも、実はそれと同じことが起こっています」
モデリングなんてやったことないし難しそうですが、どこから手をつければ?
「以前は専門家向けしかなく高価だったモデリングソフトも、今は無償のものも登場し一般の人にも入りやすくなりました。大きくCAD系と3DCG系の2種類があり、CAD系のオススメは無料の『AUTODESK 123D Design』。ユーザーインターフェイスがわかりやすく、CADの基本的なモデリングがひととおりできます。
もう少し凝ったものが作りたければ3万円台で買える『MoI(モアイ)3D』。フィギュアなどやわらかい形状のものに向く3DCG系の無料ソフトなら『Blender(ブレンダー)』が良いでしょう」
「AUTODESK 123D Design」「Blender」は前編で紹介した週刊『マイ3Dプリンター』でも教材として使われている。また、水野氏が理事を務める3D-GANでも「MoI」で鉄道模型を作るセミナーを開催しているそうなので、そういった講座を利用してみるのもよさそう。
3Dプリンターの技術はは特許が切れている
そして、3Dデータが用意できたらいよいよ出力だが、初心者はいきなりプリンターを買うより、まずは出力サービスを利用してみるのがオススメだという。
「国内で価格が安く材料の種類が豊富なのが『DMM』。趣味の人にはお財布にやさしいでしょう。少し価格は上がりますが、私が業務でよく利用する『東京リスマチック』の立体造形工房は、プロのユーザーが満足する品質を誇り、入稿データの処理も柔軟に対応してくれます。ほかにはアメリカの『Shapeways(シェイプウェイズ)』も人気がありますね」
例えば、DMMではサイトからデータをアップロードすると料金の見積もりができる。素材はフィギュアやミニチュアなら石膏フルカラーやアクリル樹脂、アクセサリーならシルバーやプラチナなど、作るアイテムに合わせセレクト可能だ。
■パーソナル3Dプリンターが手軽に試せる!
さらに、手頃になってきたというパーソナル3Dプリンターもチェックしよう。東京・中野の中野ブロードウェイにある「あッ3Dプリンター屋だッ!! 東京メイカー×ストーンスープ×ミライス」には、5万円台~40万円弱のパーソナル3Dプリンターがズラリ。誰でも1時間980円~で試すことができる。
それにしても、ずいぶんと価格に開きがあるがその違いは? 店長を務める東京メイカーの中村翼氏に聞いた。
「実はどの機種も作りは基本的に一緒で、大きな違いはありません。3Dプリンターはオープンソース、つまり特許が切れたひとつの技術を元に各メーカーが作っています。価格が高いから良いとは一概に言えません。
プリント可能なサイズ、出力カラーが2色か1色か、インクのバリエーション、制御ソフトの使いやすさなど、実際にお店で触って、見て、ご自身で判断してほしい。そのための使い方のアドバイスをお店ではしています」
実際に複数のプリンターの出力サンプルを見せてもらったが、表面のなめらかさに若干の違いは感じるものの大差はないといった印象。初心者なら安いものでよさそう。
ハード・ソフトとももっと手軽に
こちらのお店では、無料でモデリング講座も開催。インターンシップ生が講師をつとめ、わからないことを教えあいながら、3Dデータの作り方や3Dプリントの知識を身につけられるという。お店にはお客さんたちが作ったユニークなアイテムがいっぱい。そこからヒントを得て、新たなアイデアがひらめくことも多いとか。
「アメリカで60ドルのモデルが発表され、日本でも2Dプリンターの各メーカーが3Dプリンター市場への参戦を決めています。詳細は未発表ですが、もっと安いものが出てくる可能性は十分あるでしょう。
モデリングも、ダウンロードした複数のデータをくっつけるなどのアレンジが無料ソフトでも可能になり、またインテルがウェブカメラに3Dスキャナー機能搭載を発表するなど、どんどん便利になっていきます。ハード・ソフトともに徐々にハードルが下がり、いずれ年賀状を3Dデータでやりとりするなんていう日が来ると思います!」
ますます身近になってくる3Dプリンターでのモノづくり。チャレンジするなら今が狙い目かも!
(取材・文/田山奈津子)