世界で初めてマグロの完全養殖に成功したことで知られる“養殖の名門”近畿大学が、またやってくれた!

今度は絶滅が心配されているウナギ…に限りなく近い味と見た目のナマズだ。早速、取材に行ってみると、確かにこれは期待できる?

■開発期間は6年! 安価で大量生産も可

日本の夏を代表する食べ物のひとつ、ウナギのかば焼き。しかし近年、その資源枯渇が大きな問題となっている。

乱獲によって稚魚のシラスウナギの漁獲量が激減し、価格が高騰。しかも、古くから日本人が口にしてきたニホンウナギをはじめ、食用に適した主要種が相次いで国際自然保護連合のレッドリストで絶滅危惧種に指定されてしまった。

我々は、もうあの香ばしいかば焼きが食べられなくなるのか……? ところが、そこへ救世主が登場した。

ナマズである。マグロの完全養殖を実現した近畿大学が、今度は「ウナギ風味のナマズ」を開発したのだ。その中心人物である、同大農学部水産学科の有路(ありじ)昌彦准教授が言う。

「開発は6年ほど前、将来を不安視するウナギ養殖業者から『ウナギに代わる魚種はありませんか』と相談されたことがきっかけでした。代替魚選びの条件としてまず重要なのは、業者が今使っている施設をそのまま流用できること。とすると、淡水魚でなければならない。ふたつ目の条件は完全養殖が可能か、もしくは資源が豊富であること。

そして、最後の条件は身がウナギに近い味で、かば焼きにしておいしいこと。まずはこうした要素を満たしそうな魚を日本各地から取り寄せ、かば焼きにして食べることから始めました(笑)」

その最中、琵琶湖の水のきれいな場所で捕れたマナマズ(ニホンナマズ)のかば焼きを口にする機会があった。

「これが非常に脂が乗っている上に臭みもなく、むしろウナギよりおいしかった。だったら、マナマズに絞ろうとなったのが約4年前のことです」(有路氏)

「ウナギ風味」と胸を張って言える

続いて比較対照のため、今度は全国から天然、養殖を問わずマナマズを取り寄せ、かば焼きにしてみた。

「ところが、そのほとんどが身に脂分がなくパサパサしていて泥臭かった。一方、アユやエビばかり食べている琵琶湖産は極上の味。で、気がついたんです。マナマズという魚は、えさや水によって味をコントロールできるんじゃないか、と」

また、集めたマナマズの中には、ごくわずかだが身質こそ他と変わらないものの臭みのない個体があった。鹿児島県の業者が生産したものだった。

「技術や施設が確かで、しかもいい水で育てているに違いないと。現場を訪れてみたら、やはりその通り。となると、あとはえさの条件を変えるだけで味や身質をコントロールできる。そこで、この業者さんに協力を願い、本格的な研究開発を始めたのです」

日本の海水魚養殖技術は世界の最先端を行く。与えるえさは完成の域に達している上、種類も豊富だ。その中から適切なものを選んで与えれば、ウナギに近づけられるはず。もともと有路氏自身、海水魚養殖のエキスパートで、しかも近大にはマグロをはじめ、様々な魚の養殖に関する知見が蓄積されている。

そのノウハウも借りながら試行錯誤を重ね、約300種類のえさの中から適したものや、その組み合わせ、与える時期などを割り出した。そして、ようやく今年2月、「ウナギ風味」と胸を張って言えるマナマズができたのだ。

「ウナギに比べて稚魚の価格が圧倒的に安価で、資源も豊富。さらに、別の場所である程度の大きさにした『中間魚』を仕入れて成魚まで育てる方式だと、1年間で6回転の生産が可能。養殖業者にとって、マナマズはウナギの2、3倍の収益率を期待できるのです」(有路氏)

これは早く実食してみたいものですーー!

※ウナギ風ナマズに関する問い合わせ先:近畿大学 有路研究室 TEL:0742-43-6021