先日、地面に落として画面が割れた記者のiPhone5c 先日、地面に落として画面が割れた記者のiPhone5c

iPhoneの画面を修理する場合、キャリアの保証サービス(ex.ソフトバンクの『あんしん保証パック』、アップルの『アップルケアプラス』に加入していないと、修理代は全額負担となる。前編でも紹介したが、その場合の修理代は以下の通りだ。

iPhone6          34,344円 iPhone5s、5c、5    31,104円 ※7月下旬時点の料金

高いよ~、というわけでネット検索するとスマホのリペア業者がずらり! 数多(あまた)ある業者の中から記者が選んだのは『iPhone修理工房』だった。全国に50店舗を構える実績と、修理後の3ヵ月保証が付帯されている安心感。何より修理代の安さが決め手となった。その料金は以下の通りである。

iPhone6          7,800~12,800円 iPhone5s、5c、5    5,500円~7,800円

上記のアップルや正規店の修理代と比較すると、その差は歴然! 早速、iPhone修理工房・新宿店に行き、同店の修理士・藪(やぶ)俊樹さんに液晶が割れたiPhone5cを手渡すと…、

「これなら待ち時間ナシで、10分程度で修理が完了しますよ。お代は7500円です」

安い上に、早っ!!

「iPhoneの修理はアップルとアップルの正規代理店でも受け付けてくれますが、困った点が3つ。高額な修理代を払う必要があること、修理完了まで数日から1週間、時期によっては1ヵ月以上待たされること、修理時にデータ(アプリ、メール、電話帳、画像、映像など)がすべて消去されてしまうこと。“安くて早い”が強みのウチの店では、データを一切消さずに修理できる点もお客様に喜ばれています」

ただ、問題がないわけではない。

「ウチのような非正規店で修理すると『改造』扱いとなり、その後、アップルやキャリアの修理サポートが受けられなくなります」

一度でも非正規店で修理した“前科”があると、その後、再び画面を割ってしまった際にアップルや正規店の窓口に持っていっても受け付けてくれなくなるのだという。とはいえ…

「記者さんのように、端末契約時に保証サービスに加入していなければ、キャリアの修理サポートはどっちみち受けられません。また、全キャリアとも保証サービスへの途中加入は認めていませんので同じことかと」(藪さん)

…というわけで、画面が割れたiPhoneの修理開始! その一部始終を見学させてもらった。

悪徳な修理業者には要注意!

 iPhoneの割れた液晶パーツ(左)を取り外し、新品の液晶パーツ(右)に交換 iPhoneの割れた液晶パーツ(左)を取り外し、新品の液晶パーツ(右)に交換

藪さん「iPhoneの割れた液晶パーツを取り外し、新品の液晶パーツに交換する。基本的には、それで修理は完了です」

―交換する新品の液晶パーツというのは、アップルから仕入れたもの?

藪さん「いいえ。アップルは製品の部品を直接、修理業者に卸(おろ)すようなことは絶対にしません。この液晶パーツは、独自のルートでアップルと提携する中国のiPhone組み立て工場から仕入れた純正品とほぼ同じもの。ウチは50店を構える全国チェーン。規模のメリットを生かし、良質な部品を比較的安く仕入れることができるんです」

そう話しながら、ドライバーで外装部分のネジを取り、液晶部分をパカッと開ける。

藪さん「大丈夫ですね」

―何がですか?

藪さん「iPhoneのネジって、場所によって種類が違うんです。基盤部分だけで、ざっと20種類。そこで、過去に別の業者が修理したiPhoneの場合、蓋を開けるとネジが間違った場所に締められてあったり、ネジ山が潰れていたり、数本足りなかったり、その他のあるべき部品がなかったりするケースが少なくない。この業界もまだまだ未成熟。優良な業者と劣悪な業者が混在しているのが実情で…」

iPhone修理業界のウラ話を喋りつつ、藪さんの手作業はテキパキ進む。新しい液晶パーツを取り付け、自撮り用のインカメラと、通話時に液晶画面を消す近接センサーを装着。iPhone落下時に紛失していたらしいインカメラホルダー(カメラを固定するホルダー)はサービスで付け足してもらった。

データをこっそり抜き取る業者も

「ホルダーのような安価な部品は基本、プラス料金をいただかずに店の在庫で補充します」と藪さん。その後、強力なスプレー噴射で狭い隙間のホコリを吹き飛ばして、乾いた布で汚れをふき取る。

最後に液晶部分を閉じてネジ締めし、タッチ操作に不具合がないかどうかを最終チェック。これで修理は完了だ! 作業時間は約10分。なるほど、確かに仕事が早い!

―iPhoneの修理依頼って、結構あるものなんですか?

藪さん「『iPhone修理工房・池袋本店』だけで1日平均70件近く、1ヵ月当たりでは約2千件。そのうち8~9割がiPhoneの画面割れです」

―iPhone使ってる人、画面割りすぎ(苦笑)。やっぱり、キャリアの保証を付けてない人が大半?

藪さん「保証を付けている人でも、『修理の際にデータを消されるのが嫌』『待ち時間が長い』という理由で来店されるお客様が多いですね」

だが、そこで修理する際に注意すべきなのが、“安かろう、悪かろう”の業者を選ばないことというワケ。最後に、藪さんが業者選びのポイントを教えてくれた。

「修理業者の間で差が出るところは、部品の仕入れ。例えば、液晶パーツでも1千円代から5千円代の品があって、安い液晶は修理しても画面が暗かったり、タッチの感度が悪かったり…中には転売目的で部品や電話帳などのデータをこっそり抜き取る業者もいます。HPなどで『安さ』を全面に押し出している業者や、修理後の補償がない業者、非正規店で修理することのデメリット(キャリアの修理サポートが受けられなくなる点など)を説明しない業者には注意したほうがいいかもしれません」

(取材・文/興山英雄)