国内最大規模の会員数を誇る「dヒッツ」 国内最大規模の会員数を誇る「dヒッツ」

「くるぞ」「くるぞ」と言われながら、なかなか定着しなかった国内の音楽配信サービス。だが、ここにきてにわかに活気づいてきた。

今年に入り「AWA Music」「LINE MUSIC」「Apple Music」が立て続けにスタート。すでにアメリカの音楽業界ではダウンロードからストリーミングが主流となっているが日本も追随しそうだ。

音楽配信サービスとは一定額を支払い、ストリーミングで再生し、音楽を聴き放題できるサービス。一曲ごとにダウンロードしなくても大量に音楽が聴けるわけで、音楽好きにとっては理想的なスタイルといえる。

では一体、どの音楽配信サービスを利用するのがいいのか。それがもっとも気になるところだろう。

その前に説明しておくと、日本の配信サービスには大きく分けてふたつある。ひとつは好きな曲を選び、自分でプレイリストを作って楽しむ「オンデマンド型」。前述の「AWA Music」「LINE MUSIC」「Apple Music 」はここにあてはまる。

もうひとつは、サービス側が用意したプレイリストに沿って音楽を聴く「ラジオ型」。それが、ドコモの提供する「dヒッツ」だ。厳密には純粋なラジオ型ではないが(*後述)、ガラケー時代からサービスを開始しており、現在、会員数は300万人超。国内最大規模の音楽配信サービスとなっている。

そこで「AWA Music」「LINE MUSIC」「Apple Music 」「dヒッツ」をそれぞれ実際に利用し、特徴を挙げながら比べてみたい。

まず、こうした音楽配信サービスにおいて一番の個性となっているのがプレイリストだ。オンデマンド型とはいえ、毎回自分で選ぶわけではない。ここがいかに充実しているかが肝(きも)となる。

記者が全部ダウンロードしてレビュー!

「Apple Music」は各ジャンルの音楽に精通したスタッフが作成。またRolling Stone誌やNME誌など海外メディアによるマニアックなプレイリストもある。

「LINE MUSIC」もスタッフやメディアが作成しているが、中には加藤ミリヤやMaroon5など人気ミュージシャンたちによるプレイリストもある。

面白いのは「AWA Music」だ。ユーザー自身がプレイリストを作り、それを公開できる機能がある。好みの音楽と出会えば、それを人に伝えたくなるもの。プレイリストの作成も容易だし、これは楽しい。

もちろんスタッフや著名人によるプレイリストもある。著名人は大沢伸一などのミュージシャン以外に、週プレのグラビアでもお馴染みの石川恋や“尻職人”こと倉持由香なども参加している。

いずれもプレイリストには力を入れているが、また違う特色を出しているのが「dヒッツ」。こちらもジャンルに精通したスタッフ、人気ミュージシャンらがプレイリストを作成しているが、とりわけ収録されている邦楽曲のラインナップが圧倒的なのだ。

安室奈美恵、福山雅治、Perfumeなど他では見ないアーティストの曲が並ぶ。これは「dヒッツ」がラジオ型で、レコード会社的にはプロモーション扱いとなることから可能となったもの。「J-POP」チャート人気上位300アーティストのうちdヒッツが網羅しているのは85%、他サービスが大方55%というから突出しているといっていいだろう。いくらプレイリストが面白くても好きなアーティストの曲がないことを見つけた時のガッカリ感はハンパない。

プレイリストに次いで、気になるのはレコメンド機能だ。好みの音楽のジャンルやアーティストを分析して、ユーザー個人に最適化してくれる。実はこの機能が思った以上に便利で、新しい音楽との出会いを演出してくれる。これがあるのは「Apple Music」と「AWA Music」、そして「dヒッツ」。

「Apple Music」は、登録時に好みのジャンルを入力し、曲にハートマークを、「AWA Music」は好きな曲とプレイリストにFavoriteマークを付けていく。ともに入力を通じ精度を高め、それぞれ「For you」「DISCOVERY」といった項目に曲が表示される。

「dヒッツ」ではマークを入力する手間はなく、ユーザ個人の利用履歴から嗜好(しこう)情報が分析される。曲が表示される項目は「あなたにおすすめ」「邦楽おすすめ」「洋楽おすすめ」「もしかして好きかも?」と4種。「何もそこまで丁寧に」と突っ込みたくすらなるが(笑)、気分に合わせて聴けるのは嬉しい。

SNS時代、音楽も“シェア”しよう

また、音楽好きであれば、ぜひとも欲しいのはシェア機能だ。せっかく音楽配信サービスでたくさんの音楽を聴けるのだから、気に入った曲をFacebook、Twitter、LINEなどのSNSを使って友達に教えたくなる。

この機能がもっとも優れているのはなんといっても「LINE MUSIC」だ。LINEで繋(つな)がっている友達やグループに音楽をスタンプのように送れて、相手はトーク上で再生できる。

テーマ&ジャンル上にある「LINEで曲を送ろう」というメニューには「祝★誕生日」や「ごめんねをLINE」などがあり、メッセージで送りたくなるような曲がわかりやすく分類されている。なかなか言えない気持ちを曲に託すなんてのもありだ。

「AWA Music」では、SNSでプレイリストや楽曲情報を投稿できる。また「dヒッツ」では、今月上旬からfacebookと連携。お気に入りの楽曲を投稿すれば、相手はニュースフィード上で音楽を試聴できるようになる。残念ながら「Apple Music」にシェア機能はない。日本では著作権などの事情から、試聴も30秒に限られるなど制約はまだ多いが、今後に期待したい。

この他にも注目したい機能のひとつに「dヒッツ」の「myヒッツ」がある。これはオンデマンドで、好きな曲を好きな時に聞ける機能のこと。月最大10曲まで登録ができて、年間最大120曲、自分の好きな曲でプレイリストをつくることができる。

いわばこれは「AWA Music」「Apple Music」「LINE MUSIC」などオンデマンド型の機能を縮小したもの。人気Jポップの曲数が豊富なラジオ型でありながら、オンデマンド型の良さを上手に取り入れているとも言える。

さらにお気に入りのアーティストと SNSを通じ、コミュニケーションが図れる 「Apple Music」の「Connect」など気になる機能はまだまだあるが、現状での満足度はイマイチ。今後のサービス拡充に期待したいところだ。

最後に料金についてはもちろん気になるところ(すべて税込)。  「AWA Music」はオンデマンド再生ができない(既存のプレイリストを聞くだけ)ライトプランが月額360円。オンデマンド再生、プレイリストの作成、公開が可能なプレミアムプランが月額960円。

「LINE MUSIC」は月に20時間使用できるベーシックプランが月額500円、無制限のプレミアムプランが月額1000円。学割もある。

「Apple Music」は月額980円。ファミリープランもある。

「dヒッツ」は、myヒッツの枠数や試聴プログラムの数によって2コース。300円と500円だ。1000円前後する他のサービスと比べ、安さでは際立っている。

こうしてサービスや料金などを合わせ総合的にみてみると、「Apple Music」はどちらかといえば音楽マニア向け、「dヒッツ」はライトユーザー向け。「LINE MUSIC」と「AWA Music」はその中間といった感じだろうか。

使い方次第で、音楽生活がますます豊かになる音楽配信サービス。デバイスも充実してきているし、いまの時代、知らないままにして使わない手はない。それぞれのサービスで無料のトライアル期間を設けているし、どれが自分に合っているか。まず、確かめてみてはどうだろうか。

(取材・文/大野智己)