9月1日、ハリウッド映画並みの予算をかけて、数々の有名賞を受賞するほどのクオリティのドラマを制作する世界最大級の定額動画配信サービスが日本でスタートした。
“動画の黒船”と呼ばれるネットフリックスの上陸によって、日本の地上波テレビは主役の座を奪われてしまうのか?
■ハリウッド映画並みの予算をかけてオリジナル番組を制作する
9月1日午後9時過ぎ、予定より約3時間早く、アメリカの動画配信サービス「NETFLIX(ネットフリックス)」は、日本での営業を開始した。
その理由は、この日の夜に行なわれていたネットフリックスのローンチイベントで、最高経営責任者のリード・ヘイスティング氏が急遽(きゅうきょ)、日本の担当者に電話をし、前倒しを指示したからだ。こうしたサプライズ演出にパーティの参加者たちは盛り上がり、この様子はニュースとなった。
“動画配信の黒船”と呼ばれ、サービス開始直前からいろいろな話題を提供しているネットフリックスとは、どんな会社なのか。ITに詳しいジャーナリストの西田宗千佳(にしだむねちか)氏が解説する。
「一定の料金を支払えば、ネット配信される映画やドラマなどが見放題になる。ネットフリックスは、2007年にそうしたサービスを最初に行なった会社です。アメリカでは6、7割くらいの家庭が有料のケーブルテレビに加入して、映画やドラマなどの番組を見ています。無料の地上波テレビ放送もありますが、見ている人は3割程度。なぜなら無料の地上波テレビよりも有料のケーブルテレビのほうが番組数が多く品質が高いからです。そのためケーブルテレビに月1万円程度を支払っています。
それに対し、ネットフリックスは月額1000円程度。この料金で映画やドラマ、さらにはオリジナルコンテンツも見られる。それも、自分の好きな時間にテレビでもパソコンでもスマホでも…。
そうなるとケーブルテレビを見るよりもネットフリックスに入ったほうがいい。ということで契約者が増え、アメリカでは現在4200万人以上(全世界だと6500万人以上)が加入するほどのサービスになりました。そんな世界最大級の動画配信会社が今月、日本に上陸したのです」
ネットフリックスの特徴のひとつに、豊富な資本力を生かした質の高いオリジナルコンテンツの制作がある。これまでに『HOUSE of CARDS/ハウス・オブ・カード 野望の階段』などエミー賞やゴールデングローブ賞などを受賞した作品も多い。また、ハリウッド映画並みの約100億円の予算をかけて制作されたドラマもある。
こうした流れから、現在、日本でも桐谷美玲主演のオリジナルドラマ『アンダーウェアー』やフジテレビで放送された人気番組『テラスハウス』の新シリーズなどがネットフリックスで先行配信されている。さらに、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹が書いた芥川賞受賞作品『火花』の映像化がネットフリックスの独占配信で進んでいるという。
●『週刊プレイボーイ』38号では、さらに他の映像配信サービスの動きも紹介、それに対するテレビの未来を検証しているのでお読みください!
(取材・文/村上隆保 撮影/村上庄吾)